Mのミステリー研究所

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「殺人犯はそこにいる」ノンフィクションの迫力

2018-06-17 08:19:47 | ミステリ小説

     


これは実際の事件を追ったノンフィクションです。

著者は清水 潔 東京生まれのジャーナリスト。 新潮社「FOCUS」編集部を経て日本テレビ報道局記者・解説委員。

群馬と栃木の県境、半径10キロという狭い範囲で起きた5人の少女の行方不明事件。

始まりはちょっとしたきっかけだった。

しかし、調べ始めていくと一つの違和感に襲われる。 その時は足利で起きた事件は解決済みだった。

他の事件は未解決。 そして別個の単独の事件として各々の警察署が捜査にあたっていた。

著者は違うのではないかと思い始める。群馬、栃木の県境たかだか10キロの範囲で17年の間に5人の幼女が連れ去られ殺害されている。

これは『連続幼女誘拐殺人事件』じゃないのかと。

そうなると足利で起きた事件は犯人が捕まり終わっているのはどうなる?

著者はここから始める。

収監されている犯人に会い話を聞く。 世の中にある冤罪事件のほとんどは密室での取り調べという状況と、法律の事は無知であり

気の弱い人間ほど精神的に参ってしまうということがあります。そのためやってもいないことを自白するという結果になります。

もちろん自白だけで裁判を闘うことは出来ませんので検察側も起訴出来るだけの材料は用意します。

その一つがDNA鑑定です。 このころはDNA鑑定も証拠と足りうる科学的根拠があるということで裁判で採用されていたころです。

結果を言うとこの犯人は無実でした。裁判で無実を勝ち取り釈放されました。著者の活動があったからともいえます。

さて、これで『連続幼女誘拐殺人事件』の図式が出来ました。

各事件を著者は丹念に取材します。迷惑がられたり無視されたりしながら一つひとつ目撃情報を検証していきます。

いろいろある目撃情報も警察の捜査の方向で取り上げられたり捨てられたりします。

ミステリ小説でよくある、警察の捜査方針にあった証言だけを採用して他の証言は黙殺する、そういうことは実際の捜査の中でも行われるんです。

著者は地道な取材の中でこれまで取り上げられなかった証言や新しい証言を捜査機関の幹部などに提供します。

しかし、良い感触を得るところまでは行きますがダメになります。

一人の人物による連続した事件であるといくら訴えても警察は動きません。一つは群馬と栃木で起きた事件だからです。

捜査する県警、警察署の管轄が違います。

驚くのは著者のチームが独自の取材の中で真犯人に迫ることです。

断っておきます。 これは実際に起きた事件を追ったノンフィクションです。

著者はあの桶川ストーカー事件も取材し警察の対応に問題提起しています。

ひとつの現実としてこの本に目を通しておくのも良いかもしれません。

                                             

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