心人-KOKOROBITO-

亡き先人と今を生きる人に想いを馳せて
慰霊活動や神社参拝で感じ取った事を書き綴った日記と日々の雑感コラム

白梅の少女達10 【こころからの贈り物】

2010年02月23日 | 慰霊
車が白梅之塔に到着した。道中小雨が降っていたが、ここに到着したとたん、ぱったり雨が止んだ。そして昨日止めた駐車場ではなく、白梅之塔の正面手前で横付けし、わたしたちはたくさんの荷物をお供え台まで往復して運ぶ。まず最初に気づいたことは、明らかに昨日とは異なる空気だった。

『あれ・・・昨日と全く違いますね。』わたしはIさんにそう声をかけると、『昨日立ち寄ったからね、彼女達に明日も来るからって告げたから喜んでらっしゃるのよ。』

なんだか、もう、ぐっと来てしまう。涙をこらえわたしは、どこをどうするか?という話し合いもしないまま、気づいたところから掃除を始めた。泥で汚れたお供え台をスポンジたわしでこすりながら、洗面器に移した水で洗い流す。そして真新しいタオルで丹念に水滴を拭いていく。

お供え台には、誰かから供えられた日本人形2体のケースが置かれている。このショーケースは雨風の風化によって随分と痛みが進行していた。わたしはこのショーケースの蓋を取り、中の枯葉や泥をタオルでふき取っていた。ショーケース横を覗くと人形の着物も随分と汚れており、ここも丁寧に拭く取っていく。そこで、はっとした。日本人形の髪が白髪になっているのだ。




『Iさん・・・、日本人形の髪、雨風に当ってすっかり白髪になってます・・・。』
『そうね、少女達も今生きていらっしゃったら、こんな風になってるんでしょうね。』

人形を見つめながら、Iさんの返事にしんみりとした気持ちに至る。亡くなった少女達は時間が止まったままここにいらっしゃる。しかし、生きていれば、もうかなりのご高齢だ。人形に触れ、わたしはそんなことを感じていた。

一方、Iさんは昨日斎場御嶽で作った聖水を、戦没者名簿の石碑に上からかけていった。満面の笑みでこう言ってきた。『さすが、斎場御嶽ね。亡くなった方々が一気に浮かんできたわよ。』そう言われ、わたしが見ると昨日と明らかにその輝きが違っていた。

Iさんが流した水を、わたしはまた新たなタオルで石碑の名前一人一人丁寧にこころを込めてふき取っていく。するとどうだろう。だんだん体の内側から沸々と熱くなってゆき、そしてみるみるうちに熱くなりほんのり額に汗が感じられるほどにまでなった。なんという事だろう。ふき取った後は輝きに満ち、その熱は石碑から外へと放射されていた。それが直接感じられるほど、一気に変化したのである。

『うわぁ~・・・ありがとうございます、感激してます。』わたしは、ポロポロと自然に涙が溢れてしまい、亡くなられた方々がわたしたちの想いを感じ反応されたことを覚った。







片付けも終わり、わたしたちはお供え物を整え始めた。まずは、お花。この日午前中にも誰かがお参りされたのか、真新しい花が供えられていた。わたしたちは小さなお地蔵様にも花を供え、バランスよく整えていった。



名簿石碑に前に、銀の大きなプラ皿におにぎりとお芋を供える。そして、お供え台にも同じように、銀の大きなプラ皿に、果物やおにぎり、お菓子にお酒そしてお茶を供えていく。お線香とお鈴(りん)も準備。



そして、向かって左脇にある階段をあがると、目の前の納骨堂と、その横に今は横付けされた白梅之塔の最初に作られた石碑、ここに献花を行った。


Iさんと一緒に上がり、この地面に立つ過去の白梅之塔の石碑に献花をした時、過分にこみ上げるものがあり、声を殺して泣いていたところ、Iさんもぐっとこみ上げるものを抑え、静かにこう話し始めた。

『この石碑には、少女達の想いが宿ってるの。この横に立派な石碑が立ってるけど、むしろこちらのこの石碑なの。ここに水やお茶やそしてお花をお供えしてあげて欲しい。』

何度も肉眼で目視し、変化する空気を肌で感じたわたしは、この場所にいらっしゃる御霊の想いを感じ取っていた。Iさんが感受した説明を受ける前に、わたし自身が先に体で感じ反応してしまっている。この石碑への献花のお話は、霊視的視点がなければ、なかなかそこまで詳細に分からなかったことだろう。

後ろ髪を引かれながら、わたしはトボトボと階段を下りてゆく。献花が終わり、いよいよ祈りを捧げる。




持参した蝋燭に火を灯し、Iさんが持参した”白梅”の線香に蝋燭の火をつける。香り立つ甘い香りが当たり一面充満し始めた。
わたしは、石碑の名簿に目をやり、目の前に聳え立つ『白梅之塔』に目をやり、そして、数珠を両手にかけ、静かに目を閉じ般若心経を唱えた。


(つづく)

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