わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

シェイプ・オブ・ウォーター

2018-02-10 | 映画・ドラマ・本
 ダークな「スプラッシュ」

という感想を抱いた辺りが年バレ。ギレルモ・デル・トロらしい、ダークで空想力豊かな画面は魅力的ではありますが、Wikiに出ていた、Rotten Tomatoの評、同監督の「映像技術で最高の作品」ってのは、えー?そうなのー?というのが、個人的感想。あとになるほど、技術は進歩するのは当然なので、最新作が最高なのも当然だと思うけど、だから、次作は更に凄い映像を期待します。

 だって、「パンズ・ラビリンス」とか「ヘル・ボーイ」の世界や映像が好きなので、いやいや、他の作品の映像も凄いと思う。但し、いつもなら、デル・トロだから大画面で見なきゃ!なのですが、今作はむしろ、グロくて、劇場で見たのを後悔するシーンも有りました。


 卵が好きな半魚人、亜人と孤独な女性の恋愛、彼らを支える孤独な老人モチーフは、「ヘル・ボーイ」そのもの。秘密研究所の内部も似ているように思いました。原作のしがらみで自分の好きなようにできなかった所を、思い切りやっちゃった、のかも?と、思わずに入られませんでした。そもそも、半魚人を演じるダグ・ジョーンズは、「ヘル・ボーイ」の半魚人、エイブ・サピエン役の人。

 研究所所長の大佐(マイケル・シャノン)は、アメリカ軍人だけど、ナチスっぽい。嫌なやつではあるけれど、彼もまた、上司の将軍に責められてツラい中間管理職です。奥さんとはラブラブだし(夫が一人でがっついてたけど、誘ったのは奥さんのほうだよね)、息子に慕われているところも、ナチスの冷酷な将校が家庭では良き夫、父だったというのを思い出させました。

 ですから、映像技術的には凄いのかもしれないけど、デル・トロの独創性という点では、どっかで見た画面で、「なんで、こんな世界を思いつくのー!?!」なインパクトが余りありませんでした。それは、上記の通りの「ヘル・ボーイ」との相似点と、「パシフィック・リム」が、巨大ロボット戦闘ものデル・トロ風なら、こちらは「ヘル・ボーイ」デル・トロ風味。しかも、いきなり主人公の妄想の中で踊りだしたりして「ラ・ラ・ランドかぁ~っ!?」なった(フレッド・アステアらしいけど)。

 お話は、すでに日本でも紹介されている通り、冷戦時代のボルティモア(首都ワシントン近くの港町で、名門医学部を擁するジョンズ・ホピキンス大が有ります)を舞台に、発話障害の女性清掃員と、南米で捕獲された半魚人の恋愛を主軸に、米ソのスパイ合戦サスペンスとか、人種差別・同性愛者差別の社会問題とかを盛り込んだもの。すごい、今のアメリカで受けそうじゃないですか。 狙ってきたね、オスカー

 2018年3月1日に公開されるものは一部のシーンが処理されたR15+指定バージョンだそうですが、冒頭のヒロインがお風呂で自慰行為するとこなんかも処理されるのかな?元々、水の中でそういう行為をするのが好きだった、という前フリだと私は思いましたが。主人公は、初めからサリー・ホーキンスを念頭に置いたキャラクターだそうですが、彼女自身の半魚人っぽさというか、どこか人外風なトコ(ごめんなさい)が、インスピレーションになったのかな?

 半魚人さんに関しては。かっこいい、とか、超イケメンという評もありますが、私には魅力がわからなかった。彼の造形に関しては、なんか、さかなクンさんの意見を聞いてみたい。ともあれ、私的には、余り魅力の感じられない作品でした。


ちなみに、「スプラッシュ」のラストシーンと、本作のラストシーン


 ところで、ヒロイン、イライザの首の傷跡はエラの痕で、元々は人魚だったってことなのかなぁ?口がきけないのも、脚の代わりに声を失った人魚姫みたいだし。だから半魚人さんと惹かれ合ったたのかも?おとぎ話モチーフといえば、デル・トロ監督は、「美女と野獣」が、野獣も結局はハンサムな王子様になってめでたし、めでたし。『心の美しさと見た目の美醜は関係ない』って話なのに、美人とイケメンで、それを言うか?!という気持ちが、この作品を作るきっかけ、みたいな記事を読んだ覚えがあるのですが、それは凄い共鳴したな。