わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

Lady Macbeth

2017-08-12 | 映画・ドラマ・本
 後を引く映画を見ました。まさか、ここで終わらないよね?ってか、終わらないで… ってシーンで暗転し、エンドクレジットが流れ始め、未練がましい気持ちで劇場を後にする。そんな映画は、きっぱり物事にケリをつけるハリウッド映画に慣れていると、なんともモニョモニョした気分で、後を引きます。唐突に終わって、それ故に後が気になって印象強く残る、小泉八雲の「茶碗の中」みたいなので、私はこういった映画を茶碗系と呼んでいる。

 「マクベス夫人」というタイトルですが、シェークスピアの例の奥さんとは全くの別人。映画は、ショスタコーヴィッチがオペラ化した、ニコライ・レスコフの小説、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を基にしているそうですが、Wiki先生のオペラのあらすじを見ると、愛のない結婚をした貴婦人が野卑な下男の虜になって、次々と犯罪を犯していく、という大元の設定以外は、かなり別物です。

 舞台は1865年のイギリス。主人公のキャサリンが、ずっと年上のアレクサンダー・レスターと結婚するシーンから始まります。人里離れた荒野に建つ、寒々とした屋敷。夫はキャサリンを裸にして壁に向かって立たせ、その後ろ姿を見ながら自慰する性不能者、その父親である舅のボリスは、キャサリン付きの黒人女中、アンナに命じて厳しく生活を管理し、跡継ぎの息子を産ませるために買ったのに、と嫌味ばっかり言ってるやなジジイ。

 この二人が別々に仕事に出かけて留守の間に、やっと館を出て敷地を歩いていたキャサリンは、使用人たちがアンナに乱暴をしているところを目撃し、女主人らしく命令しますが、首謀者である新しく雇われたセバスチャンが気になってしまいます。その夜、セバスチャンは、キャサリンの部屋に忍び込み、キャサリンを暴行しようとしますが、欲求不満が溜まってるキャサリンの方がやる気満々。そのあとは、セバスチャンを繋ぎ止めるためには何でもするキャサリンが、次々と邪魔者を消していく、火曜サスペンス劇場な展開に。
 
 キャサリン役は、素朴さがチャーミングなフローレンス・プー。Pughなんで、クマのプーさん(Pooh)でも、(poop)でもないけど、ちょっと二度聞きしてしまう名前。素朴さな若い娘が愛欲に溺れ、そして冷酷に邪魔者を排除していく鉄面皮な女性なのですが、なぜか憎めず、むしろ共感してしまう。映画ではかわいらしく地味でしたが、実際は華やかな感じ。

 オペラを基にしているのに、映画では沈黙の場面が多く、効果音が使われるのは劇中2回だけだし、音楽も全く流れません。家の中は寒々とし、屋敷を取り巻く荒野では風は吹きすさび、森の中では湿った暗さが付きまとう中で、常に「なんか嫌な感じ」不穏さと緊張感が続く中で、そこで終わるのねー!になって、後を引く。地味なのに、実にパワフルな映画でした。結局、弱き者、汝の名は男、女の方が太々しいって話でした。ああ、しかし、映画の結末のその後も気になるけど、結局、なんで「マクベス夫人」なのかも気になるわ…

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