わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

グランド・マスター 一代宗師

2013-09-05 | 映画・ドラマ・本
 今日は、ユダヤ教の新年に就き、学校はおやすみ。ウォン・カーウェイ監督の「The Grandmaster」がアメリカでも公開されたので、息子たちと見てきました。いくら平日の午後だと言っても、劇場には、私たち3人と、中国語をしゃべる女の子たち二人組の3人だけ。まだ、公開して二週間目なのに。今後の香港映画のアメリカ公開の機会に危機感を感じてしまった。

 映画の方は、予告で期待してたおと違うなぁ、って。カンフー映画かと思ったら、違ったし、トニー・レオンが主役だと思ったら、チャン・ツィイーの復讐譚をトニー・レオンが語る映画だったし。最初にトニー・レオンが出てきて、かっこよく語り、雨の中でカンフーファイト、謎めいた老人の一行からの挑戦を受け、南派の名誉をかけて様々なマスターたちと手合わせし、象徴的な北派のマスターとの対決… この辺りまでは、うおー!当にエピック!と、思ったのですが…

 カンフーシーンは、スローモーションと接近撮影ばかりで、何が起きているのかよく判らないから、なんだか誤魔化されたような気分。カミソリの人(散髪屋さん)は、かっこ良く意味ありげに登場したのに、イップ・マンと短い対決、しかもカミソリ対音叉で「キーン…!」で、互いに満足して「良い友人になった」って、え?それだけ?北だ、南だ、云々って割りには違いや背景がわからないので、勝手に南斗と北斗みたいなもんですか?と、勝手に納得したけど、色々な流派のナンチャラ拳も、どこが違うのか判らないので魅力を感じない。拳法の事を知っている人が見たら感心するのかもしれませんが、せっかく、役者さん達が何年も修行を積んで撮影に挑んだというのに、私のような素人には猫に小判です。後から、それぞれの流派の特徴をネットで見て、予習してから見に行けばよかったと後悔しました。

 トニー・レオンは、端正な佇まいの優男ながら、武道の達人なので、常に穏やかに微笑む表情ばかり。理想の武人とは、むき出しの闘気や殺気を見せない、超越した存在だろうから、この映画のイップ・マンが常に感情を抑えた紳士なのは正しいんだろうけど、「ヒーロー」の時のように、一瞬ギラリと凄みが覗くようなシーンも見たかったな。最後に、既にアヘン中毒者になっていたルオメイに告白されても、対応が淡白過ぎて、なんだか食い足りない気分。ここのルオメイの台詞、英語字幕では「I cared about you.」で、その抑えた表現は美しいんだけど、アメリカ的には控えめ過ぎて、その意味の重さが伝わってこないし、対するイップ・マンも軽く流しちゃったよう。上手い役者さんなんだから、ここで顔ワザ演技力を炸裂させて欲しかった。私、ハリウッド的演出に毒されてるわ…orz

 チャン・ツィイーは綺麗だけど、アップになると白目にあるほくろが気になって仕方なかったです。でも、表情だけではなく、佇まいや所作も素晴らしい。カンフーシーンも流麗で見ごたえありましたが、やっぱり、アヘン中毒になった後に、最後にもう一度、紅を引いてイップ・マンに会った時の演技は出色の出来だと思います。でも、人生に疲れた女の表情でアップになると、「上海ルージュ」ん時のコン・リー姐さんそっくりで気になった。映し方かな?ところで、イップ・マンの奥さん役の人も、美人だし、上品で素適でしたね。王族の出身で、裕福な奥様だったのに苦労して、夫は香港に行ったまま、二度と帰ってこず。彼女の、その後の人生も気になります。

 元々は4時間もあったものを、カットしまくって2時間にしたと後から知って、なるほど、だからダイジェストみたいな感じがしたのかなって思いました。「レッドクリフ」みたいに前後編に分ければよかったのかな?ま、稀代の武人、イップ・マン波乱の一代記のつもりで観に行ったら、ルオメイとのプラトニックラブを絡めた復讐譚だったので、肩透かしを食らった感があるのですが、ウォン・カーウェイらしい映像美と「おっしゃれー」ぽさは堪能したし、完全版が出たら、家でのんびり観たいと思いました。

 ところで、映画の中で何度も記念撮影する場面があったから、エンドロールでは、それらの本物の写真が出るのかなと思ったら、単に記念撮影してるだけだった。これも肩透かし…orz

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7 コメント

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イップマン (えみりん)
2013-09-08 15:20:51
ドニー・イェンがイップ・マンを演じている映画を最近観て、あれはなかなかよかったのですが(サモ・ハンがよかった)。同じイップ・マンを描いた映画でも香港とハリウッドの違いでしょうか(^^)
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Unknown (えみりん)
2013-09-08 15:24:43
おっと失礼、ハリウッド映画ではないのですね。
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えみりんさん (わに)
2013-09-08 17:09:59
私が見たのは、ドニー・イエンの「イップ・マン 序章」だけなのですが、実はシリーズなんですよね?
カンフー・アクションはこっちのほうが断然、楽しめましたが、舞台の時代柄、日本人として、ちょっと胸にグサグサ突き刺さるところが…(^^;)
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Unknown (えみりん)
2013-09-09 11:31:21
私たちが見たのは二作目です。こちらは日本が絡まない(その代わり英国が敵という感じ)ので安心して観ることが出来ます(^^)
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Unknown (Honda)
2013-09-09 12:30:03
"I have feelings for you" がたぶん適切な英訳でしょう。最近そういう事を言われたことがあったりして… へっへっへ。
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えみりんさん (わに)
2013-09-09 12:36:19
そっかー、見る作品を間違えました。
二作目を図書館で探してみます。
「序章」はアクションはいいんだけど、日本軍の悪辣っぷりがいたたまれなかった…orz
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Hondaさん (わに)
2013-09-09 12:38:59
いいなぁ…

日本語字幕は「好きでした」なんだそうです。
せめて、 feelings for youくらいは言って欲しかった。
アンタのことはちょっと気にかけてたのよ、あっ、そー、みたいで、せっかくの盛り上がりシーンが味気なくなってました。
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