そして苦笑する。ベルリンで東京を思い、東京でベルリンを思っているのだから世話はない。今回の帰国を、雀は日本の知人にあまり知らせていない。(中略)外国暮らしのながい雀は、日本国内の旅行というものをあまりしたことがなく、今回の滞在中、九州か島根に行ってみたいと思っていた。この家の、畳の部屋での昼寝もあと二、三回はしたい(昼寝について、けれど雀の気持ちはやや複雑だった。ドイツでは宵張で、仕事のない日は午前中をたいてい寝て過ごすのだが、日本で昼寝をすると、何故か気が咎めるのだ)。江國香織著「なかなか暮れない夏の夕暮れ」243ページ
「雀」は、この本の主人公の姉で、普段はドイツに住んでいる写真家です。主人公の稔が50歳なので、海外に一人で長く暮らす、五十路の日本人女性という設定です。作者の江國香織さんが、海外生活の経験があるのかどうかは知らないのですが、アメリカでは日本を思い、日本にいればアメリカを思う五十路女の私の心情にぴったり。小説家ってすごいなぁって思う。
「雀」さんは、莫大な遺産を引き継いだ裕福な女性で、老後の心配もないでしょうし、帰りたいと思えばいつでもファーストクラスで日本に飛び、日本国内のどこでも旅行して、高級旅館に泊まることが出来るようなキャラクターですから、私の設定とは全くかけ離れているのですが、この気持は「ある、ある!」と共感してしまいました。作者の江國香織さんは、ご自身が海外に住んだことがお有りなのかしら?もし、想像だけで描かれているのなら、小説家って本当に凄い!って思うとともに、海外に一人で住まう、いいトシの日本人女性には、共通の思いなのかしら、と、思ったり…
温泉入りてー!
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