現代を代表する人気作家たちが猫への愛をこめて書き下ろす猫の小説、全7編。作家の家の庭に住みついた野良猫。同じマンションの女の猫が迷い込んできたことで揺れる孤独な女の心。猫にまつわる名作絵本に秘められた悲しみ…ミステリアスな猫たちに翻弄される文庫オリジナルアンソロジー。巻末にオールタイム猫小説傑作選も収録。

先入観を避けるために、著者の名前を確かめずに読み恥じたのですが、このお話は余り好きじゃないな(でも、読者の感想を見ると一番人気だった)と思ったら、自分が苦手な作家さんだったり、今まで知らなかった若い作家さんの現代的な作品に触れて、今まで縁のなかったラノベに興味を持ったり、なんか〇〇っぽいと思ったら、本当にその推理作家さんで笑っちゃたり。スタイルも内容もバラエティーに富んだ、色んな味のクッキー詰め合わせみたいな幸せな一冊。
その中で、これは巧い!と、舌を巻いた作家さんは、初めてその作品を読んだ柚木裕子さんの作品、疎ましく思っていた母親の気持ちを猫を通して知る「泣く猫」です。先日、映画、「孤狼の血」を見て、その骨太な小説の原作者が女性であったことに驚いたばかり。しかも、東北出身の方なのに、「仁義なき戦い」シリーズを思い出さずにはいられない、広島を舞台にした抗争を、あたかもその場にいたかのような生々しさで描く力量に唸ったのですが、この20ページちょっとの短編にも、奥深い世界が感じられました。今後、注目していきたい作家さんです。
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