神社の儀式
興味のない人には、たいくつな話・
そのむかし・
神社は、「むら」の中で、生命謳歌と人生節目に、”役割”がありました。
学問的には、戦前の「家父長制度」と深くつながっているようです・・
そのことを、”いい”とか”わるい”とか、価値の判断を言っているのではありません。
”むかし”は”こんなだった”という、事実の認識です。
以下は、「通過儀礼(=もしくは、通過儀式)といわれるものです。
--・何も日本に限ったもにでもありません。キリスト教にもあるし、中国やイスラム圏にもあります。
広義にとらえれば、アフリカ原住民やニューギニアなどにも存在する「大人」への通過儀式です。
ある意味では、「大人」への段過程での確認作業ともいえます。・・生活の知恵です。
画:夜の楼門:大宮氷川神社
◇まず、生誕・
・「家父長制度」では、「家」という意識がかなり強かったようです。「家」は一族につながります。
・「家」の中で、「生命の誕生」が確認されると、”祝”として認識されます。
もし、生命誕生が「男児」であれば、「家」の存続・継承が担保され、発展の可能性が留保されます。
もし、「女児」であれば、将来の婚姻により、「一族」の発展・拡大と団結が留保されます。
・この「生命誕生」は、公的な祝い事として、神社を通して「むら」社会に告知されます。
1:)【着帯の祝い(腹帯)と安産祈願】
---「着帯の祝い」とは、子宝に恵まれたことを神さまに感謝し、
母体の安全と胎児の健全な発育を願い、5ヶ月目の戌の日に白布の腹帯〈岩田帯)を締めるお祝い。
五ヶ月目の戊の日が選ばれるのは、犬のお産が軽いということにあやかるためといわれています。
--「安産祈願」
母体と胎児の健康無事を願うためにをするのです。
祈願は、「着帯の祝いの日」に合わせて行うことが多いようです。
2:)【(誕生)産湯と産着】
---「産湯」とは、生まれるとすぐに氏神様のその土地の水で産湯につかることです。
その産湯で清めることで、氏神様の産子となると信仰されてきました。
---「産着」とは、産湯を使わせた後、赤ちゃんを袖や紐のないおくるみにくるみます。
生後3日目になると、お祝いをして袖のある産着を着せます。
3:)【お七夜と命名】
---赤ちゃんの名前は、生後7日目のお七夜に付けるのが習わしです。
誕生を喜ぶと共に神さまに覚えてもらうように名前を半紙などに書いて神棚に供えます。
4:)【初宮参り】
---赤ちゃんを氏神様の氏子として認めていただく意味があります。
初めて神社にお参りして、神のご加護に感謝し、健やかな成長を祈ります。
男子は生後31日目・女子は生後33日目にお参りするのが多いようですが、
日数にこだわらずに、30日前後の穏やかな日を選んでお参りするのもよいでしょう。
5:)【お食初め】
---生後100日目頃に食膳を用意して、赤ちゃんに食事を食べさせるまねをします。
赤ちゃんが一生幸福に育ち、食べるものに困らないようにという、親の願いが込められています。
膳には赤飯の他、鯛などの尾頭付きの焼き魚が付けられます。--頭が早く固定するようにとの意味。
6:)【初節句】
---節句とは、
・1月7日の「人日」じんじつ、
・3月3日の「上巳」じょうし、
・5月5日の「端午」たんご、
・7月7日の「七夕」しちせき(たなばたではありません)、
・9月9日の「重陽」チョウヨウの5つがあり、それらを総称して「五節句」といいます。
「初節句」とは生後初めて迎える節句のことであり、
男子は「端午の節句」のときに鯉のぼりや武者人形・鎧兜などを、
女子は「上巳の節句」(桃/雛の節句とも)のときに、雛人形を里方や親戚から贈られます。
7:)【七五三】
---男女3歳・「髪置」、男子5歳・「袴着」、女子7歳・「帯解」のお祝いの儀式から由来、
晴着を着て11/15前後に神社にお詣りし、成長したご加護に感謝し、今後のの無事を祈ります。
七五三を終えると、晴れて一人前として扱われるようになりました。
8:)【入学・卒業・就職の奉告】 --- 現代風習・後発
9:)【成人式】 --- 現代風習・後発
---1月の成人の日(20歳)に神社に参詣し、大人の仲間入りを奉告し、社会人の責務が生まれます。
もともとは、「元服の儀」が原型です。
子供(幼年)から大人・成人への認定式で、中世は10歳から20歳ぐらいまで、
江戸時代には15歳頃が一般的となりました。
家父長制度下の武家では、かなり重要な儀式であったようです。
10:)【神前結婚式】
---結婚式は、人生儀礼の中でも最も晴れやかで大切な儀式です。
11:)【厄年・年祝い】
---「厄年」とは、災難や障りが身に降りかかりやすい年のことです。
厄年は、年齢による体調変化と符合していて、案外合理的です。
神のご加護をいただき災厄にあわないようお参りして「厄祓い」をします。
体調管理の観点から、特に注意する、という意味でもあります。
---「年祝い」とは、家族のものがある一定の年齢に達すると、
その長寿を神さまに奉告しお祝いをすることをいいます。
お祝いの方法は、地方によって千差万別ですが
あ:)、数えで61歳(還暦)・○
い:)、70歳(古希 コキ)○
う:)、77歳(喜寿)
え:)、80歳(傘寿 サンジュ)
お:)、81歳(半寿)
か:)、88歳(米寿)○
き:)、90歳(卒寿)
く:)、99歳(白寿)○
け:)、100歳(上寿 ジョウジュ)
こ:)、108歳(茶寿 チャジュ)
さ:)、111歳(皇寿 コウジュ)などがあります。---数が多けりゃいいってもんでもない
12:)【結婚記念日】 --- 現代風習・後発
---夫婦共々に、健康で仲睦まじく過ごせたことを神さまに感謝し、
この先心新たに二人力を合わせ、良い家庭を築いてゆくことを誓いお祝いする機会です。
一般的に、
1::紙婚式(満1年)・
2::木婚式(満5年)
3::錫婚式(満10年)
4::水晶婚式(満15年)・
5::陶器婚式(満20年)
6::銀婚式(満25年) --- ○
7::金婚式(満50年) --- ○
8::金剛石婚式(75年)
9::真珠婚式(30年)
10::紅玉婚式(40年)という記念日もあります。---数が多けりゃいいってもんでもない
13:)面白いことに神社には、「死」に関すること、「弔い」という概念は存在しないようです。
・神社の聖域は、穢れをバリヤーしています。
・この「穢れ」の中に、「死」や「血」が入っています。
・神社は、物としての死体は穢れあるもの、ですが、
死体から遊離離脱した「霊魂」は、永遠のようです。
特に、一族元祖につながる「霊魂」は、家父長の元締めとして強い絆になります。
・行く末の一族の命運を、愛情ある家父長が見守るというメカニズムが”氏神”の根幹・
村社、郷社、県社などは、見守る範囲の拡大版で、おそらく後発なのでしょう。
武蔵の国一之宮