千曲川のうた

日本一の長河千曲川。その季節の表情を詩歌とともに。
人生は俳句と釣りさ。あ、それと愛。

おはぐろとんぼ

2013年07月15日 | 千曲川の動物
もの思へば沢のほたるもわが身よりあくがれ出づる魂かとぞみる 和泉式部

和泉式部の思いは蛍となって闇の中を浮遊し明滅する。さすが和泉式部、かっこいい。



もし私の妄想が私から離れてそこいらを漂うとしたら、ホタルではなくオハグロトンボになるのだろう。これは私一個の感覚ではなく、オハグロを見たことのある人は多くその霊性のようなものを感じたことがあるのではないだろうか。
オハグロはなにか妖しい。川筋の小暗い木の下や草藪にいて、どうも陰性である。前後の翅をひらひらと別に動かすので、トンボらしくない。ヤンマやシオカラのような威勢の良さがなくて根暗な性質のくせに、尻尾はメタリック。どんだけカッコつけるのか、どんだけコンプレックスを抱えているのか。
7月、千曲川のオハグロはアカシアの林の中にいる。もう少し経つと川辺に戻って恋の季節になるらしい。

  おはぐろ蜻蛉川ゆつたりと流れゆく  水原春郎

平々凡々の句に見える。オハグロの妖しさ、霊的な感じについては言及されていない。
そのようなものを言葉にして一句をなせば、おそらく虚仮威しの句となって破綻するのだろう。だから平凡な景物と取り合わせるのが正解なのかも知れない。
だけど、やはり何か妖しいオハグロの句を作ってみたい。読んでみたい。





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