「裏の外交」に暗躍する極秘組織・公安調査庁を舞台にした緊迫の一週間の諜報小説。公安調査庁の本庁で国際テロ、中国を担当する部門の分析官・芳野綾(37歳)は、現場調査官である沼田から協力者のスパイから受け取った情報を報告される。それは、人民解放軍が大量の漁船を偽装した上尖閣諸島に向けて4日後に一斉出航、6日後の早朝には上陸して実効支配するという情報だった。しかし関連省庁はいずれもその情報を否定し、沼田に情報提供した協力者への二重スパイの疑惑が掛けられる。その中国人スパイはこれまでも数々の確実な情報を伝えてきており、芳野と沼田はその中国人スパイは共産党幹部にも近く非常に信用できる人物と考えており、誤報な訳がないと多方向から情報を集め裏付けを取ろうと奮闘するのだが・・・そして綾の必死の分析を嘲笑うかのように、巧みに仕掛けられた壮大な陰謀がカウントダウンを始めた。
組織の中でも横の繋がりは薄く、調査官は個別で活動しており情報源も別々。もたらされる情報も今回の件に関係が有るのか無いのかわからない。情報の信ぴょう性も確かめようもない。何が本当の情報で何が誤報なのか、誰が信用出来て誰が信用できないのか、色々と張り巡らされた伏線ともいえる情報が終盤に一気に収束する。中国の権力闘争、人民解放軍の暴走、閣僚・国会議員などへの盗聴などもあり最終部のオチにも意外性があり楽しめた。一応フィクションの体裁を取られているが中国の権力闘争と尖閣諸島をめぐる出来事は現実政治とリンクしているように楽しめた。
2018年3月幻冬舎刊
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