小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。母親の亜紀は刹那的な欲望しか満たそうとせず、同棲相手の男に媚びるばかりだ。そんな最悪な環境のなか、優真が虐待を受けているのではないかと手を差し伸べるコンビニ店主が現れる。ネグレクトによって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂。児相と警察によって救い出された優真は、やがてコンビニの店主夫妻が里親になってくれて、暴力と飢えからの解放と衣食住を得たが、「まだ友だちができないの?」、「これからは常識を身に着けないと」と優真を諭す里親の言葉や、クラスメイトとの軋轢から、圧倒的な疎外感と敗北感に襲われる。母親という牢獄から脱け出した少年は、結果女たちへの憎悪を加速させた。・・・高度成長後のバブル崩壊後、国民総中流社会から広がる格差社会と貧困と虐待の負の連鎖。後半は破滅に向かっていく少年の心理描写や様子を読む気持ちがイライラ・ザワザワして居心地悪く読み辛かった。あっけない結末に作者の意地悪ささえ感じたが、こんな砂に埋もれる以外に解決の道はないのだろうかと後味の悪い終わり方だった。
2021年10月朝日新聞出版刊
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