読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
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桐野夏生著「猿の見る夢」

2017-07-02 | 桐野夏生

 還暦、定年、老後・・・終わらない“男”の姿を、現代社会を通して描いた人間ドラマ。薄井正明は六十歳を手前にした元大手銀行員の出向者。現在は一部上場した企業OLIVEで財務担当取締役、ひとまわり下の愛人美優樹もいて、余裕のある一見優雅な暮らしの中、社内ではささやかな野心もあり、長男夫婦と都内に二世帯住宅を建てる計画をたてている。性的な自信もまだ維持している。薄井はほどほどに恵まれている自覚していて、その恵みを一滴もこぼすことなく老後を迎えられると信じている。そこに長峰という夢で宣託をするという占い女が現れ、会社と家庭の両方の雲行きが怪しくなって・・・。

見ざる聞かざる言ざるの三猿に実はもう一つの猿が居てという『四猿・・・礼なきことは見ない、聞かない、言わない。おのれを律する孔子の教えで「せ猿」姦淫に対する欲望の戒め。」(P378)が面白い。

取りついた相手に取り入り巧妙なマインドコントロールの上にペット持参で家の中に住み着く、最後まで謎の長峰がユニークなキャラでひところワイドショーを賑わせた占い師のようで不気味だった。

2016年8月講談社刊


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