読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

桐野夏生著「夜の谷を行く」

2017-11-28 | 桐野夏生

連合赤軍事件にかかわった一人の女の死と再生の物語。連合赤軍の「あさま山荘」事件から四十年余。その直前、山岳地帯で行なわれた「総括」と称する内部メンバー同士での批判により、12名がリンチで死亡した。主人公の西田啓子は「総括」から逃げ出してきた一人だった。親戚からはつまはじきにされ、両親は早くに亡くなり、いまはスポーツジムに通いながら、一人で細々と暮している。かろうじて妹の和子と、その娘・佳絵と交流はあるが、佳絵には過去を告げていない。そんな中、元連合赤軍のメンバー・熊谷千代治から突然連絡がくる。時を同じくして、元連合赤軍最高幹部の永田洋子死刑囚が死亡したとニュースが流れる。過去と決別したはずだった啓子だが、佳絵の結婚を機に逮捕されたことを告げ、関係がぎくしゃくし始める。さらには、結婚式をする予定のサイパンに、過去に起こした罪で逮捕される可能性があり、行けないことが発覚する。過去の恋人・久間伸郎や、連合赤軍について調べているライター・古市洋造から連絡があり、敬子は過去と直面せずにはいられなくなる。やがてダンダン明かされる「山岳ベース」で起こった出来事。当時言われた「総括」とは何だったのか。集った女たちが夢見たものとは・・・。最終章のクライマックスに感動。あの時代に生きた一人として感慨深い思いで読んだ。

2017年3月文藝春秋刊


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画・DVD「ポンペイ」 | トップ | 荻原浩著「ギブ・ミー・ア・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

桐野夏生」カテゴリの最新記事