深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

プロの現場

2011-05-01 00:04:44 | 一治療家の視点

『週刊モーニング』でプロ野球界が舞台のマンガ『グラゼニ』が月イチ連載されている。今回はその話。

で、BGMに選んでみたのはドラマ『銭ゲバ』の主題歌でもあった『さよなら』。ちなみに、この『さよなら』は、(この後に書くけど)『グラゼニ』の第1回を知ってて聴くと、あまりにも切なくて涙が出そうになってしまったよ。

まぁ、それはいいとして──

プロ野球マンガと言えば、古くは『巨人の星』、そして水島新司の『野球狂の詩』などの一連の作品が有名だ。特に野球人のロマンを高らかに歌い上げた水島マンガは、スポーツ・マンガの一つの金字塔と言えるが、水島マンガが描いてきたプロ野球がポジであるとしたら、『グラゼニ』はそのネガの部分だ。

主人公の名は凡田夏之介。高卒でプロ入り8年目。中堅の左投げ中継ぎ投手。26歳、独身。年俸は1800万。先発を任されるだけの力量はないから、試合中でもほとんどの時間をブルペンで過ごす。ブルペンでも「選手名鑑」片手に相手選手の研究は怠らない。

と言っても、見るのは通算成績や過去の数字ばかりではない。彼が最も熱心に目を通すのはズバリ、相手選手の「年俸」だ。彼はチームメイトとやる「年俸当てクイズ」で一番高い正解率を誇る「年俸オタク」なのだ。

他人(ひと)の年俸は案外気になるもんなんです。いや“案外”どころか“かなり”ですか…? というか、正直に言いますと“ソレ”が全てでしょうか…!
所詮プロはカネです。自分より給料が高い選手は“上”に見て、低い選手は“下”に見てしまう! それがぶっちゃけの“プロ”…!つーもんでして…。

(中略)

大事な“登板1”! 中継ぎ投手はとにかく「登板数」が給料に反映されるのです。そう、僕の給料は1800万。高卒8年目1800万の中継ぎ投手はけっして“一流投手”とは呼ばれません。

(中略)

プロ野球選手はやっぱ現役のうちに稼がなければならない! 30越えたらあと何年できるか分からない商売なのです。
ちなみに引退してコーチや解説者になれる人はほんのひと握りです! 引退の翌年──年収100万円台になった人を僕は何人も知っている!


そして彼の心の声は続けて…

「グラウンドには銭(ぜに)が埋まっている」──良く使われるフレーズです。これはまさに真実です。僕の頭の中ではその言葉が何万回とリフレインされています。僕は頭の中では“グラゼニ”──と呼んでいます(決して口にしないの)

連載第1回で彼(の心の声)が語るこの生々しさに、私は一気に『グラゼニ』のファンになってしまった。

そしてこのマンガも主人公がピッチャーだから、お約束通りバッターとの心理戦もあったりする。『巨人の星』では、この心理戦に1回30分の放送時間のほとんどが費やされてしまい、試合の場面なのに1球しか投げずに終わりなんて回もあったりしたものだが、『グラゼニ』の心理戦は、というと──

リリーフに立った夏之介。ここで相手チームは左投げの夏之介に対して右打ちのバッターを代打に起用してきた。そのバッターを見て、夏之介は思う。

この土井という打者は…確か──ノンプロから26歳でプロ入りして4年目! 年俸は確か…700万だ! 900万が引っ込んで700万が出てきた。
この土井さんも今日昇格(あが)ってきたばかり。給料700万の「右の代打」は僕みたいな「左」を打てなかった場合…おそらく…即、2軍に返されてしまうでしょう! つまりこの場合、彼は…“左打者”よりはるかにプレッシャーがかかるのです!

(中略)

通常ノンプロから26歳でプロ入りしたら、入ったその年は即戦力で働かないとその人に未来はない。
30歳で700万かあ…この人、来年は契約してもらえないかもしれないなァ…。再就職がうまくいかないと来年この人も年収100万円台に落ちるかもしれない(子供2人かかえて…)。
でも、それでも僕はあなたを全力で打ち取らねばならない。そりゃそーだよ。だって「明日は我が身」なんだから!

そして夏之介は土井をファールフライに打ち取るのだ。

翌日、土井選手は本当に2軍に落とされました。このたった1打席の凡退で…。
そしてこの2軍落ちは“僕の価値の低さ”も暗に言っているのです…。
相手チームは「左」対「右」で打者有利なのに…この1800万のピッチャーが打てなかった…。そんな打者が1億・2億の一流投手に当たったら打てるハズはない! そういう判断なのです。

プロ野球、と言うかプロ・スポーツ界を扱いながら、これだけ世知辛い、ロマンもへったくれもないマンガがあっただろうか。しかも、こんなストーリーがスポーツ・マンガらしからぬ妙に躍動感に乏しい絵で描かれるのだから、読んでるとはまるはまる。

そして思ってしまうのだ。

『グラゼニ』が描いているのは紛れもない「プロの現場」だ。そう、これが「プロの現場」なのだ、と。


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2 コメント

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身につまされます (ひろ)
2011-05-01 12:13:05
個人個人が独立している我々でさえ他所様の商売は気になります
どんなにいいこと言ってても繁盛具合で世間の評価は決まりますからね

できるだけ「下」を見て安っぽいプライドを充足させる以外に私にできることはありません

「グラゼニ」は探して読んでみます
返信する
上を見れば (sokyudo)
2011-05-01 18:07:20
>ひろさん

上を見ればきりがない、ですからね。

『グラゼニ』はまだ単行本になってませんが、出たら読んでみてください。出るのは今年の末か来年の初めくらいじゃないでしょうか。
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