10月のある日、以前から来てくれている患者から「診てもらえないか」と電話が入った。その患者──ここでは仮にNさんと呼んでおこう──が前回来たのは8月だったのだが、来院ペースは年に2,3回くらいの人なので、ちょっと意外だった。とはいえ、ヒマなので予約はいつでも受け入れ可能だ。
で、来てもらったNさんだが、明らかに歩き方がおかしい。本人曰く、「坐骨神経痛になった」と。
ここからはアニメ『ツバサクロニクル』のOST「Hear our Prayer」とともに。
Nさんの言葉では、「3日ほど前から右下肢に坐骨神経痛が出て、脚を引きづるようにしてしか歩けない。今日はそれでもまだ痛みは少ない。痛みのある部分は殿部だったり大腿の外側だったりと、日によって変わる」。
もともとNさんがウチに来るキッカケとなったのは、ひどい腰痛で一時歩くのも困難になったと、いうものだった。朝はチクチクとした痛みがあって、それが夕方には立てないほど強くなり、その1週間後には左下肢が坐骨神経痛を起こし、一時は歩くのに杖を使っていたという。が、ウチに来た時はそこまでひどい状態は脱していたので、私は一番ひどい時のNさんは知らない。
さて、10月のその日もNさんは歩き方がおぼつかない感じだったので、まずは本人の言うように坐骨神経痛なのかを調べる検査を行ってみた。けれどもSLRテスト(注1)は(60°/60°±)で、右の±も殿溝付近に張りが出る程度。キネシオロジーの筋反射テストでも坐骨神経が障害されている形跡は見つからない。
そこで筋力テストで筋肉を調べてみると、右の中殿筋中部線維と内転筋群、そして左の大胸筋鎖骨部にUF(アンダーファシリテーション=促通低下注2)があった。また筋力テストはしなかったが、右の大殿筋、内側・外側の後大腿筋(ハムストリング)にも何らかの異常があるのが見て取れた。
しかし、坐骨神経の障害ではない。
そこで、それら一連の筋肉の異常を作り出しているものをマインドで聞きながら追っていくと、右上顎の2番の歯に行き着いた。実際に、右上顎2番のTL(セラピーローカライゼーション注3)すると先の筋肉の状態が変わるようだったので、その歯の変位を調べて挺出する(引っ張りだす)方向にごく弱い力でマニピュレーションを行ってみた。
すると結果はバッチリで、テストしてなかった右の大殿筋とハムストも含めて、先の筋肉の異常がきれいに取れた。また、その時点でベッドから立って歩いてもらうと、右下肢の痛みはかなり楽になっているという。
ただ、歩いているところを見ていると、まだ右の腰と足関節の辺りがまだ何か心許ない感じ。そこで右の三陰交に置き鍼、腎兪に2寸鍼で刺鍼を行い、オレンジとレモンのエッセンシャルオイルを使ったところ、歩行が正常になり痛みも消えた。
こうしてみると、今回のNさんの右下肢の痛みはいわゆる坐骨神経痛ではなく、右上顎の2番の歯が圧下(押し込まれる)方向に変位したことで、右の中殿筋、大殿筋、内転筋、ハムストなどに異常(主にUF)が起こったことで生じたものと考えられる。言ってみれば、歯の問題が腰下肢の症状として現れた、ということなのだろう。
ついでに言うと、その右上顎の2番の圧下方向の変位は仕事上のストレスが原因ではないかと思われ、Nさんにも尋ねてみたが、それについてはあまりはっきりした答は得られなかった
最近は、腰が痛いと「顎関節から来てるんじゃないか」と、整形外科ではなく歯科を受診する人が増えているというが、顎関節ではなく歯から来ていることもある、ということで今回はおしまい。
(注1)下肢伸展挙上テストのこと。ラセーグ・テストともいう(細かく言えばSLRテストはラセーグ・テストとは若干異なるのだが)。仰臥位になった患者の下肢を膝を伸展させた状態で持ち上げ、坐骨神経にストレスをかける。坐骨神経痛の鑑別の代表的なテストの1つ。
(注2)詳しくは過去記事「筋肉の促通と抑制」を参照されたい。
(注3)手で触れて筋反射テストによるインジケータ(指標)筋の変化を調べる、キネシオロジーの代表的な手法。最近では一部の人の間で「TL法」などとも呼ばれているらしい(笑)。
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