2024年夏アニメについての感想と評価。今期は再放送を含む16本の作品を見ていたが、うち3本を途中切りした。この「1」は、その途中切りした3本についての感想を述べる(なお評価はなし)。ネタバレなしで書くことを基本としているが、『菜なれ花なれ』だけは第4,5話についてのネタバレを含むので注意されたい。
ちなみにアニメの評価については、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。
以下、並びは50音順で、評価はA~E。
『下の階には澪がいる』5話切り
憧れの先輩、桃井真珠を追いかけて、彼女と同じ青葉大へ入学した杉浦陽(よう)は、ある日、下宿先の前で、元人気アイドルの如月澪(みお)を見かける。澪はあるスキャンダルによって芸能界から姿を消していた。話しかけようとした陽に、いきなり火のついたライターを向けてくる澪。実は彼女は陽と同じ下宿先の1階部分をたった一人で借り切って、人目を避けて暮らしていた。
原作は韓国で制作されたWebtoonで、アニメは中国との共同制作らしい。日本語版は登場人物名や大学名が日本風に変えられているが、日本とは異なる舞台設定なのに名前だけ日本風というのは違和感がある。だがそれ以上に、作品そのものの雰囲気というか空気感が、見ていてどうも馴染めない。更に腑に落ちないのが、引退した元アイドルが人目を避けて暮らすのが、学生向けのコンドミニアムのような建物だというところ。これじゃ、人目を避けるどころか、引退した後も注目を浴びたがってる、ただの“かまってちゃん”だ。こういうガバガバな設定も、澪の矛盾した性格を表している、として気にならない人もいると思うが、私はこれだけで心が萎えた。
本当は1話切りも考えたが、さすがに設定が腑に落ちないというだけで切るのもナンだな、と思って、取り敢えずしばらく見続けることにした。見ているうちに最初違和感を感じた部分にも慣れて、第5話でほぼ登場人物とそれぞれのキャラクタが明らかになり、ここから物語が本格的に動き出す感じはあった。ただ、若い人たちの惚れた腫れたっていうのはもういいいかな、と思ってしまい、ここで切ることにした。
『菜なれ花なれ』5話切り
高校のチアリーディング部を描く「部活もの」──と思ったら、そうじゃなかった。
主人公、美空かなたは群馬県高崎市にあるチア強豪校、鷹ノ咲高校で1年生ながら全国大会に出場。しかし、鷹ノ咲は優勝候補と言われながら本番でまさかのミスにより敗退。それがトラウマとなって、かなたは飛べなくなってしまった。そんな時、かなたは超ハイテンションのブラジル人ハーフ、杏那(あんな)・アヴェイロや、パルクールしながら登校する女子高生、小父内涼葉(おぶない すずは)たちと出会い、彼女たちと学校の枠を超えたチア・チーム、PomPoms(ポンポンズ)を結成する。
高崎市はじめ群馬の各地が制作に協力している。制作は、こういった青春群像劇を数多く手がけているP.A.WORKS。
登場人物が女子高生たちのアニメなので、全体的に声のトーンもどうしても高めになってしまうのは分かるのだが、美空かなたを演じる中川梨花と杏那・アヴェイロを演じる武田羅梨沙多胡の声(の演技)がやたらと神経に障って、見ていて(というか聴いてて)イライラして仕方がなかった。冒頭にも書いているように私はアニメはストーリー重視派で、作画がどうの演技がどうのという部分はあまり気にしてこなかったが、この『なれなれ』に関しては、この2人の声優の声(の演技)がイヤで、第1話の時点でモチベーションが落ちていた。それでも私は実家が群馬だし、群馬を応援したという思いもあって、頑張って見続けてきたが、第5話を見て切ることに決めた。第4,5話は杏那・アヴェイロ回。ブラジルから日本に来た彼女は周りから浮いた存在で友達もいなかったが、高崎商店街にあるレアものレコードを集めたレコード店、スタウトレコードに救われ、今はそこでバイトしている。ところが店主であるYJから、経営が思わしくなく商店街の夏祭りを最後に閉店すると告げられ、大ショック。そこにかなたたちPomPomsが乗り出す、という話なのだが、PomPomsがネットでスタウトレコードの窮状を訴え、店を応援するチア動画を挙げると、それを見たYJの昔の知り合い(しかも大物歌手)が海外から続々と高崎にやって来て支援を表明。結果として店は救われた、って何だこのご都合主義的過ぎるストーリーは P.A.WORKSは今期3本のアニメを放送していて大変なのは分かるが、これはさすがにフザケ過ぎだろ! これを見たらもう心が折れてしまった。なので5話切りする。
『僕の妻には感情がない』5話切り
1人暮らしの会社員のタクマが、購入した美人家事ロボット、ミーナに恋してしまう、という、昔からある人形に恋した人の話「ピグマリオンもの」のバリエーションに属する作品。
ロボットに対する淡い片思いを描いた“ほのぼの恋愛アニメ”なのだが、私は生理的にダメだった。アニメ見てこういう気持ち悪さを覚えたのは、いつ以来だろう。最初、それは自分にピグマリオン趣味がないからだと思っていたが、よく考えると人間以外の物/者に特別な感情を抱いてしまう、というのはアニメでもよくあるテーマで、私もそういう作品は何本も見ているし、それで気持ち悪さを感じたことは思わなかった。では『僕妻』は何が違うのか?
ミーナの造形? いや、これじゃない。タクマ役の豊永利行の演技? これは実際、気持ち悪いが、『僕妻』の気持ち悪さはそれだけじゃないと思う…。というわけで明確な理由は分からないが、私にはどうにも生理的に無理なので切ることにした。
ついでに書いておくと、(これは原作からそうなのだろうけど)タクマの部屋に物が少なすぎて不自然。タクマの住んでいる部屋は6畳間と台所、それに(アニメでは描かれないが)ユニットバスという間取りだと思うのだが、その6畳間にはちゃぶ台とテレビとミーナくらいしかない。じゃあ衣類は? 部屋によっては押し入れにタンスもついているところもあるが、タクマの部屋はどうもそうじゃない。本棚やラックは? 本や雑誌は全て電子書籍でスマホの中に入れているとしても、郵便物は届くだろうし、保管しておかなければならない書類の類いもあるだろう。そういうものを一切描かないのは、恐らく作画の手間を省くためと、タクマとミーナという2人の姿を際立たせるためだろうけれども、それによってタクマの部屋が何の生活感もない、何か異様な場所に見えてしまう。原作者/制作側がそう見せるために意図的にやっているのだとすれば、それをあれこれ言うのは野暮でしかないが、そうでないのだとしたら、これはやはりいただけない。
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