深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

第?次ブラウザ戦争の行方

2008-12-16 16:35:34 | Weblog
2008年のソフト関係の話題といえば、ブラウザ戦争が挙げられるだろう。各社のブラウザの動向だけでも、
MS(マイクロソフト)が2月からInternetExplore(IE)の6から7への自動更新を開始。更に現在は8を開発中で、3月にβ版が公開された。
AppleがMacの標準ブラウザSafariのWindows版を、3月に正式リリース。
Mozillaファウンデーションが、6月にFirefoxを2から3にメジャー・バーションアップ。
opera社が12月にα版ながらOpera10を公開。
そして何よりブラウザの世界を震撼させたのが、Googleの進出である ついにGooleが自社開発のブラウザChromeを発表したのである。GoogleはMSの8月のIE8β2の発表直後にChromeのβ版を公開し、12/12に正式版をリリースした。

このようにブラウザの世界が騒がしくなったのは、コンピュータにおけるアプリケーション・ソフトの位置づけが大きく変わりつつあることと無関係ではない。大容量高速回線によるインターネットへの常時接続環境が整備されたことにより、ネットワーク・アプリが大幅に拡充されつつあり、アプリケーションが、これまでの「PCにダウンロードして使う」ものから「ネット接続して使う」ものへと変貌する、今はまさにその過渡期にあるのだ。PCに必要なのはOSと高性能ブラウザだけ、という状況が現実味を帯びつつある(話題になっている5万円台の低価格PCは、まさにこうした流れの中で生まれた製品であると言える)。

ちなみに、第1次ブラウザ戦争は1990年代半ばにNetscape社とMSの間に勃発した。
まだインターネットが必ずしも広く認知されていなかった当時、Netscape社は他社に先駆けてブラウザ開発を行い、そのブラウザNetscapeNavigator(NN)が市場をほぼ独占していた。そこにMSがIEを引っさげて参入したのである。
「インターネットに完全に出遅れた」と言われたMSだったが、有料(確か3000だったと思う)のシェアウェアだったNNに対してIE3.0を無料で提供する、という戦術でNNからシェアを奪い、更にIE4.0ではOSとブラウザを一体化させる、という禁じ手まで使ってNNの息の根を止めたのである。
この戦いに敗れたNetscape社は、ブラウザとメーラを一体化させたNetscapeCommunicatorを開発、更にそれを無償提供する戦術で巻き返しを図ったが果たせず、ついには会社自体が消滅してしまう(注1)

この後、ブラウザはIEが95~98%とも言われる圧倒的なシェアを握る状況が続いた(注2)。この頃にはライバルを駆逐したMSにとってIEはもうOSのオマケでしかなくなってしまったため、機能追加はおろか(セキュリティ・ホールを除く)バグ修正もほとんど行われないまま、長い停滞の時期を迎えることになった。

(注1)この第1次ブラウザ戦争はMSの圧勝に終わったわけだが、元アスキー社長の西和彦は2年ほど前、雑誌のインタビュー記事の中で、MSが受けたダメージについて、
「多額の開発費をかけて作った製品をタダで配ってしまい、またMSがそうしたことで『インターネット関連のソフトはみんなタダ』という流れを作ってしまった。そのためインターネットによるビジネスモデルが構築できなくなってしまい、それがMSのインターネット事業にとって大きなトラウマになっている」
といったことを述べている。

(注2)クリントン政権時代には連邦がMSを独占禁止法違反容疑で告発し、一時はMSをOS部門、アプリ部門、インターネット部門に分割することなども検討された。が、その後を継いだブッシュ政権は大企業優遇に向けて大きく舵を切り、MSの分割は見送られた。

だがIEによる独占状態が続く中、IEを狙ったコンピュータ・ウィルスやスパイウェアが次々に登場して社会問題化するようになった。またMSがIEの開発を止めてしまったことで、RSSなどのインターネット技術の進歩とブラウザの機能との間に大きなズレが生じるようになった。それを補完すべくopera社がタブ・ブラウジングやマウス・ジェスチャなどの先進的な機能を搭載したブラウザOperaを発表したり、オープンソース化されたNetscapeの資産を受け継いだMozillaファウンデーションがブラウザMozillaを発表する、といった動きはあったものの、いずれもIEの牙城を揺さぶるまでには至らなかった。

それが2005年から2006年にかけて、Mozillaファウンデーションがメーラと一体化していたために重いと不評だったMozillaを分離し、軽量化・高速化したブラウザFirefoxとメーラThunderbirdとして発表したのがユーザに非常に好意を持って受け入れられ、2006年末にFirefoxが約10%のシェアを獲得するまでになった(この時点でIEのシェアは80%以上)。

そして2008年11月時点では、(これは調査方法によって大きく異なるので、本当のところ正確なシェアはわからないが)Firefox3がシェア・トップに躍り出たとする、CodeZineの調査結果もある。また国別では、EU、特にドイツでIEのシェアが50%を割り込んだという結果を発表しているところもある(注3)
ただ、順調にシェアを伸ばしてきたFirefoxだが、Mozillaファウンデーションへの最大出資者であるGoogleが自前のブラウザを持ったことで、ここにも今後は大きな変化が起こる可能性がある(注4)

これまではOSを制することがコンピュータ業界の死命を制すると言われてきたが、今後はブラウザがそれに取って代わるかもしれない。ということで、今後は更に各社のブラウザを巡る戦いが劇化しそうな気配。それは今後のコンピュータ業界の動向を測る上で、とてつもない意味を持つ。OSとビジネス・ソフトで圧倒的なシェアを握ることで業界に君臨する、というビジネス・モデルが過去のものとなりつつある中、このブラウザ戦争で敗北するようなことがあれば、MSと言えども瓦解しかねない危険性を孕んでいるからだ。
今後、各社のパワー・バランスがどのように変化していくのかと考えると、実に胸躍るものがある。

さて、あなたが例えばIEのユーザで、IEに本当に満足しているなら別だが、IEしか知らずにIEを使っているのだとしたら、いい機会だからいっそのこと、ここで別のブラウザに乗り換えてみるってのはどうだろう(注5)。複雑系には「蝶の羽ばたきが、地球の反対側に台風を起こすことがある」という考え方がある。それに倣えば、あなたのクリック1つが帝国マイクロソフトを瓦解させることになるかもしれないのだから。それこそ、まさにパーソナル・コンピュータのコンセプト"Power to the People"ということなのだ。

Firefoxのダウンロード・ページ
Chromeのダウンロード・ページ
Safariのダウンロード・ページ
Operaのダウンロード・ページ


(注3)日本ではまだまだIEのシェアが高い状態が続いているようだ。そもそも日本では、自分の使っているブラウザの名前すら知らない人も多い。もし、あなたがそうなら、あなたがWindowsユーザならIE、MacユーザならSafari、LinuxユーザならFirefoxかKonqurorだ(Linuxユーザでそういう人はいないと思うけど)。ところで、ブラウザって何?とは言わないよね。あなたがこのブログを見るのに使ってるソフトがブラウザよ。
(注4)一応、Google側もMozilla側も、両者の友好関係は今後も変わらないと表明してはいるが。また、Chromeをいち早くインストールして使ったのは、IEユーザではなくFirefoxユーザだったという話もある。
(注5)だからといってIEをアンインストールしないでほしい。Windows UpdateはIEでしかできないようになっているし、アプリの中にもIEがあることを前提として作られているものがあるからだ。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
困ってるんです。 (nanahoshi)
2008-12-17 12:51:07
先生、御蔭で少しは解って来ましたが・・・。

Chromeが使いやすいのですが・・・、
IEじゃなきゃ出来ないリンクとかありまして・・
しかも、私のブログ、ロリポブログで書いてるんですが・・・、Chromeに対応していないんです!

御蔭で両方立ち上げる日々で御座います。

Chromeのユーザー、増えないかな?



返信する
そのうちアドオンが (sokyudo)
2008-12-17 14:48:58
>nanahoshi先生

あるんですよね、IEにしか対応してないサイト…。私が知る限りでも、Gyaoやbiglobeストリームなどの動画サイトはIEでしか見られません。
私の場合はFirefoxを使ってるのですが、FirefoxにはレンダリングエンジンをFirefoxのGeckoからIEのTridentに切り替えるアドオンがあるので、それを入れてます(余談ながら、ChromeのレンダリングエンジンはSafariなどと同じWebKit)。

…と、ここでChromeについて調べてみたら、こんな記事が
えっ、『Google Chrome』がアドオン、ユーザスクリプト対応に!
http://www.lifehacker.jp/2008/09/google_chrome_1.html
もしかすると、FirefoxのアドオンがChromeでも使えるようになるかも

更には、こんな裏技も
「Chrome Package」で Firefox を Chrome そっくりさんに
http://www.lifehacker.jp/2008/09/chrome_packagefirefoxchrome.html

一応、ご参考まで…
返信する
なにからなにまで・・・ (nanahoshi)
2008-12-17 20:58:38
なにからなにまで、有難う御座いました。

PC音痴ですが、やってみます!

先生、どこまで
していらっしゃるのですか
返信する
どういたしまして (sokyudo)
2008-12-18 11:14:08
>nanahoshi先生

どういたしまして。

>先生、どこまでしていらっしゃるのですか

そんなに詳しいわけではありません。Firefoxのアドオンも、怖くてなかなか入れられなかったほどです。
ただ、私の場合はNN→NC→Mozilla→Firefoxと、ずっと主流から外れた非IEでやってきたので、IEメインで使ってきた人より、多少事情に詳しい面はあるかもしれません。
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