深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

緊急事態宣言に思う

2020-04-06 12:30:59 | Weblog

新型コロナウィルスの感染が拡大する中で、さまざまなところから政府による非常事態宣言を求める声が上がっている。それは感染拡大を抑え医療崩壊を起こさせないようにするためだ、というが、これは私の目にはとても奇妙なことに映る。既にメディアによって伝えられているとおり、この緊急事態宣言には法的拘束力はあまりない。仮に出されたとしても、それで人々の行動を強制的に抑えることができるわけではなく、今の「不要不急の外出自粛のお願い」とほとんど何も変わらないからだ。

「それでも政府が非常事態を宣言することで、今までより強い心理的効果がある」と言う人もいるが、自粛のお願いにしても非常事態宣言にしても,それに従わない、あるいは何らかの理由でそれに従えない人は一定割合いるわけで、「より強い心理的効果」がどれだけの変化をもたらすか(そしてその変化がどれだけ感染拡大を防ぐ意味を持つか)は未知数だ。

それに、そもそも非常事態宣言はただの手段であって、それによって何かの結果が約束されているわけではない。諸外国の例を見てもわかるが、非常事態宣言(しかも日本より遙かに強力な)が出されたからといって、それで医療崩壊が防げるわけではないのだから。「それは宣言を出すのが遅すぎたからだ」という意見もあるが、エアゾル感染の可能性も取り沙汰される中、本当にそうだったのかどうかは現時点ではわからない(何も起こっていない段階で非常事態を宣言し人々の自由な行動を強制的に制限していれば感染拡大は防げたかもしれないが、そんなことは現実には無理だ)。

今、政府に「非常事態宣言を出せ、出せ!」と声高に要求している人たちも、そんなことすらわからないバカばかりとは思えないので、「医療体制を守るため、医療崩壊を引き起こさないため」という差し迫った理由はもちろんあるにしても、それだけでない何か別の思惑があるのでは?と、つい思ってしまうのだ(実際、知事にしろ議員にしろ医師会のお偉いさんにしろ、みな望んで「権力」を手にした人たちだ)。例えばニュースなどで伝えられるところでは、疑わしい症状があるという人への検査体制も帰国者に対する空港での検疫体制もガタガタの状態だという。本当に医療崩壊を防ごうとするなら、非常事態宣言よりそうした部分を手当てする方が先決だと思うのだが、そうした話はほとんど聞かない。

連合赤軍事件やオウム真理教事件では、しばしば「メンバがなぜ上からの理不尽とも思える命令に逆らうことなく(場合によっては自ら進んで)、ああいう行為を行ってしまったのか?」ということが問われてきた。結論を言えば、人は自由であることを望む一方、自由であることは不安でもあるので、それを埋めるため何かに拠り所を求め、それに支配されたがってもいるからだ。何らかの強いスローガン(を掲げた者)が出て、そこに多少なりとも共感するものがあれば、それに簡単に付き従ってしまう──人とはそういう生き物だ。

「新型コロナによる現実の危機を、フワフワした『革命の理想』だとか『ハルマゲドンからの人類救済』みたいな夢物語と一緒にするな!」という意見もあるだろう。しかし、感染症拡大の危機という現実もまた結局は1つの「物語」であって、一度共有させることができさえすれば、それを別の「物語」へと転化させることはたやすい。新型コロナをキッカケに今、日本が向かいつつある道は、一歩間違えれば国が丸ごと連合赤軍やオウム真理教化してしまう危険性を孕んでいることは頭の片隅に置いておいた方がいい(現にこの国はかつて、そうやって破滅的な戦争に突入していった過去がある)。

…といったことを書いている間に、政府は緊急事態宣言を発令することを決めた、ということが伝えられた。周囲からの声に抗しきれなくなって、ついに決断ということのようだ。国(政府)が一方的に「これからお前たちの行動を制限するぞ」と言うのではなく、国民(もちろん一部の)が国に「私たちの行動をどうか制限して下さい」とお願いする、この奇妙に倒錯した構図は何とも薄ら寒くて気持ちが悪い。

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