深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

『クラニオセイクラル・リズム』発刊

2011-06-03 09:42:13 | 一治療家の視点

2010年の11月に最終原稿を送ってからしばらく音沙汰がなかったクラニオの本『クラニオセイクラル・リズム』が、遂に刊行の運びとなった。というわけで少しでも長く出続けてくれることを祈って、劇場アニメ『千年女優』のED、「Rotation(lotus 2)」をバックに、今回はその報告と本の紹介などを。

私にとっては2008年10月に『ザ・ハート・オブ・リスニング』を出して以来、5冊目の本ということになるが、(ご存じの通り)前の4冊を出してもらっていた版元が事業廃止してしまい、双六(すごろく)で言うと「振り出しに戻る」みたいな状態になってしまったので、実質的に今回の『クラニオセイクラル・リズム』が1冊目だ(といっても、もう翻訳からは手を引いてしまったので、2冊目が出ることは多分もうない)。


一口にクラニオセイクラル・ワークと言っても、そこにはいくつかの種類というか流派がある。私もその全体を把握しているわけでは全くないが、チャールズ・リドリーの分類によれば、クラニオは
1.バイオメカニカルなもの
2.ファンクショナルなもの
3.バイオダイナミックなもの
の3種類に大別されるという。そして1の代表格がジョン・アプレジャーのクラニオセイクラル・セラピー(CST)、2の代表格がヒュー・ミルンのビジョナリー・クラニオセイクラル・ワーク、そして3の代表格が(リドリーが提唱する形の)バイオダイナミクスだ、と述べている。

私がクラニオの本を訳していた時、考えていたのは、1については既にアプレジャーの著作が何点も訳出されているので、そこは避けて、まだ日本語化されていない2と3の部分をほぼ完全に網羅できるように本を選んで訳そうということだった。そこで訳出する本のリストに入れたのが、フランクリン・シルズの『Craniosacral Biodynamics Vol.1&2』、マイケル・ケーンの『Wisdom in the Body』、ヒュー・ミルンの『The Heart of Listening』の4冊だった。その後、『Craniosacral Biodynamics Vol.2』の日本語版が私より早く故・森川ひろみさんのグループによって出されてしまったものの、チャールズ・リドリーの『Stillness』を訳すことになったりして、結果として当初の計画を上回る形で、クラニオの2、3の分類に当たる部分をほぼ網羅するように本を出すことができた。

それで今回出た『クラニオセイクラル・リズム』だが、これは1の部分について書かれた本である。この本のことはこの話を振られるまで全く知らなかったのだが、(今回は監修という立場ではあったが)この本の出版に関わったことで、予期しない形でクラニオの全種類を制覇(笑)することになったのである。

さて、肝心の本の内容についてだが、著者のダニエル・アグストーニはさまざまな種類のクラニオを学んできたらしく、そうした精華をアプレジャー流のCSTに(一部やや批判的に)取り込もうとしている。そうして生まれたのが、この『クラニオセイクラル・リズム』である。だからコテコテのバイオダイナミック派にはあまり(気分的にも)面白くない本かもしれない。

逆にクラニオを初めて学ぶような人にとっては、バイオダイナミクスに比べてCSTは取っつきやすい。「最高の施術とは、何もしないこと(無為の為)だ」という考え方に基づき、その理論的なバックボーンにいきなり東洋哲学や量子論が出てくるバイオダイナミクスより、施術者が解剖・生理的な見地から相手の体の状態を判断し、その判断に基づいて施術するCSTは、施術者が「自分は相手のためにアクティヴに何かしている」という安心感ある分、クラニオへの入り口としては、より受け入れられやすいのではないだろうか。

また「CSTを学んできてCST的な施術がもう自分の体の一部のように馴染んでいるが、最近よく耳にするようになったバイオダイナミクスの存在も気になっている。でもCSTには愛着があるし、今更それを捨てて一からバイオダイナミクスに鞍替えしたいとは思わない。できれば、これまで通りCSTを続けながらバイオダイナミクスも美味しいところだけ取り入れたい」などという人にはゼヒ読んでいただきたい、オススメの1冊だ。

ちなみに、これまでは印税方式だったので売れた部数によって印税収入があったが、今回はそうではない。監修料はもう頂いてしまったので、あとは本が何冊売れても私の金銭的な利益にはならないのだが、そういうことは別にして、よかったら買って頂きたい。産調出版のHPから直接注文することもできる。


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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いよいよですね (ひろ)
2011-06-03 19:21:19
何が嬉しいってお手頃価格が一番嬉しいです

ずいぶんご苦労なさっておられましたがようやく出版ということになったんですね
次回からは直接翻訳された方が二度手間にならずに済みそうです

とりあえず私はCSTをやっているつもりです
バイオダイナミオクスはそれ相応の素養というか下地をつけないとできないのではないかと思うのです
それでもちゃっかり準備だけは進めています
できるかどうかは私の能力次第ですが・・・

本を読んで何かヒントが見つかればいいのですが・・・
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値段は… (sokyudo)
2011-06-03 23:03:57
>ひろさん
>何が嬉しいってお手頃価格が一番嬉しいです

この間、産調出版の担当者とお会いした時、値段が高くなってしまったと気にしていましたが、エンタプライズの本を知っていると全然そんなことないですよね。

>バイオダイナミオクスはそれ相応の素養というか下地をつけないとできないのではないかと思うのです

いえいえ、私を含めて多くの人は多分、「できてる」と勘違いしながらやってるだけです。
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Unknown (Unknown)
2011-06-05 18:22:39
先週くらいから横浜の紀伊國屋書店に平積みされてました。
初学者にわかりやすいよくまとまった本になってますね。

手探りと思い込みとヤケクソでやるしかなかった昔とは隔世の感(^_^;)
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あ、 (tenleechan)
2011-06-05 18:30:25
↑前の投稿わたし、失礼f(^^;
ハンドルネーム入れ忘れたm(__)m

tenleechan
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いい本だと思います (sokyudo)
2011-06-05 20:56:58
>tenleechan先生

丁寧でわかりやすい、いい本だと思います。
気に入ったら買ってやってください。
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買いました。 (ひろひろひろ)
2011-06-13 17:46:57
付録のポスターが付いてるとは思いませんでした。
これを治療室に貼っといて、カンニングしながらやりなさいってことですよね?

・・・や、他にもカンニング用のファイルがごちゃまんとベッドサイドに置いてあったりもするのですが。
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謝々! (sokyudo)
2011-06-14 11:05:32
>ひろひろひろさん

お買い上げ、ありがとうございます。
エンタプライズの本は、書店だと神保町の三省堂とか新宿の紀伊国屋とか、医学書の専門フロアがあるところでしかお目にかかれませんでしたが、産調出版は普通の本屋にも卸しているようで、より広い読者に買ってもらえそうです。
が、私の金銭的な実入りにはならないので、フクザツな気持ちです…。
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