1970年代を中高生として過ごした人たちにとって、NHK教育(現Eテレ)で毎日夕方に放送されていた「少年ドラマシリーズ」は特別な番組だった。その「少年ドラマシリーズ」の中でも取り分け人気の高かったSFドラマ『未来からの挑戦』が、このほど復元を終え、それを記念する「復元上映会&NHK少年ドラマシリーズ同窓会トークショー」が2/8に川口市のSKIPシティで行われ、雨の中、私も行ってきた。
上映されたのは、『未来からの挑戦』全10話のうちの第1~6話のダイジェストと、第7話の丸ごと1本。発見された時はほとんど色もあせ、劣化の進んだ状態で、それを当時の「少年ドラマシリーズ」技術担当の監修の元で復元する作業を行ったという。ダイジェストで上映された第1~6話部分は、かなり見にくいところが目につくが、第7話はほぼ完全な形で甦った(なお、残りの第8~10話部分も含めて『未来からの挑戦』は現在、NHK公開番組ライブラリーで見ることができるそうだ)。
その当時の技術担当だった人が会場に来ていて、その人が語ったところでは──
「少年ドラマシリーズ」はNHKが全番組のカラー化(注:そう言えば、あの頃はカラー番組には「総天然色」という文字が入ってたっけ)を完了した直後の70年代初頭に放送が始まった。NHKのドラマはドラマ制作部が担当していたが、「少年ドラマシリーズ」は青少年番組部の担当で、このシリーズに出演したことで本格的に俳優への道を進んだ人たちがいたように、自分たちもこのドラマを作ることで朝ドラ、大河へとステップアップするんだ、と考えていた。今見るとセットもチープだし、演出も演技も本当につたないけれど、みんな「ジャリドラ」(注:つまりジャリどものための子供だましのドラマ)じゃない「本物のドラマ」を作るんだ、という意欲に燃えて作っていた。だから自分自身、復元作業をしながら、つい見入ってしまった
──と。
また、同窓会トークショーでは『未来からの挑戦』に出演していた佐藤宏之、手塚学のほか、『なぞの転校生』の高野浩幸、星野利晴、伊豆田依子、『明日への追跡』から沢村正一、斉藤とも子、『その町を消せ!』からは斉藤浩子が参加し、首藤奈知子アナのMCで出演作のことや当時の撮影裏話などを披露した。
なお、『未来からの挑戦』、『その町を消せ!』に出演して圧倒的な人気を博した熊谷俊哉さんは、今年1月、肝臓癌のために死去したそうだ。享年54。『未来』でダブル主演した佐藤宏之さんは、このイベントのことを伝えるために病院を訪れて約40年ぶりに再会し、お互いに「あの頃の面影がまだあるね」と話したとか。佐藤さんが「車椅子でも何でもいいから来てくれよ」と言うと、熊谷さんも「そうだなー」と言っていたそうだが、それは果たされなかった。
私個人のことを少し書くと、周りで『タイム・トラベラー』(注:これが「少年ドラマシリーズ」の第1作)のことを話しているのを聞いたことはあったが、「少年ドラマシリーズ」というのがあるのを知ったのは『コロッケ町のぼく』から。けれど実際に見たのは『なぞの転校生』が初めてだったと思う。
「少年ドラマシリーズ」は『安寿と厨子王』や『おとうと』のような文学が原作のものや『コロッケ町のぼく』のような普通の中学生の日常を描いたものも数多くあったが、私はもっぱら『なぞ転』、『明日』、『未来』、『その町』、そして『幕末未来人』のようなSFサスペンスものばかり選んで見ていた。それはそういう作品が好きだったからでもあるが、家の人がその時間は別の番組を見るので、なかなか見られなかったせいもある。特に相撲中継のある時はテレビは必ず相撲と決まっていたので、放送時間のかぶる「少年ドラマシリーズ」は居間のカラーテレビでは見られず、1人でこっそり離れに行って古い白黒テレビで見ていたので、家の人からは「変なヤツ」と思われていた(注:その後、家ではテレビを買い換えたので、居間にあったカラーテレビが離れに移動し、カラーで見られるようになったのだが)。そんな白黒で見る「少年ドラマシリーズ」でも、放送される日には夏などは汗びっしょりになって走って学校から帰ったものだ。
今回40年ぶりくらいに『未来からの挑戦』を見て思うのは、技術担当の方が言っていたようにセットや特撮がチープで、出演者たちの演技も今の子役と比べたら話にならないくらい下手くそだったということ(注:トークショーでも、みんな一様に「少年ドラマシリーズ」が復元されるのは嬉しいが、当時の自分の演技があまりにもひどいので複雑な気持ちだ、と言っていた)が。でも例えば自由であることの大切さを何のてらいもなくストレートに描いたそのドラマを見ていると、確かに見入ってしまうのだ。
テレビ番組といえば幼児向けか大人向けのものしかなかったあの時代に、自分たちと同じ中高生が主人公で、学校の中で起こるちょっと不思議な出来事に端を発し、それが次元ジプシーや未来人、宇宙人、パラレルワールドから来た者たちとの出会いや対決に繋がっていく「少年ドラマシリーズ」は、本当に自分たちのドラマだった。
加えて、録画機を持っている家庭などほとんどなかったし、再放送もあるのかないのかわからないから、見られるのは放送しているその時間だけ。その日のその時間を、顔も名前も知らない全国の仲間と共有するという「聖なる1回性」が、「少年ドラマシリーズ」を伝説にしたのだと思う。
その後、教育テレビでは「少年ドラマシリーズ」を見て育った世代が入局し、彼らがそのDNAを引き継ぐ「ドラマ愛の詩」シリーズなどを制作した。その枠で放送された『六番目の小夜子』や『幻のペンフレンド』には、懐かしい「少年ドラマシリーズ」のテイストが溢れていた。
その『幻のペンフレンド』は、全12話のほぼ全てをYouYubeで見ることができる。下に第1話分を貼り付けたので、興味のある人はどうぞ。いつ消されるかもわからないので、見るならなるべく早く。
それから「少年ドラマシリーズ」では、これまで3話分くらいしか見つかっていなかった『明日への追跡』が全話見つかり、その復元作業がかなり進んでいるとのことなので、このような上映会&トークショーがまた開かれるかもしれない。というか、またやってほしい。
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