7/6の午後、ワタリウム美術館で『ルドルフ・シュタイナー展 天使の国』を見た後、青山通りを渋谷に向かって歩いた。
国連大学前にはオーガニック食品の販売だろうか、何やらたくさんの店が出ていて人だかりができていた。よさそうなものがあったら買おうかと、いくつかの店を覗いたが、筋反射テストではいずれもNoが出るので、やめる。
で、いつもならそのまま渋谷に向かうのだが、この日はなぜか突然、青山ブックセンター(以下、ABC)に寄っていこう、というか、寄ってかなくちゃ、と思ってしまい、久しぶりにABCに寄ることにした。
考えてみるとABCのある前の通りは何度も通っているのだが、ABCに寄るのはもしかしたら20年ぶりくらいじゃなかろうか。まあ20年という数字が正しいかどうかはわからないが、前回来たのがいつだったかわからないくらい昔であることは間違いない(そういえば、六本木店にもここ10年近く行ってないな)。
本屋に行くことが目的なら、私に用があるのは理学書や医学書の類で、それは街の普通の本屋はもちろんABCが扱うジャンルじゃないし、渋谷には東急本店にジュンク堂丸善という怪物級の品揃えを誇る本屋があるので、行くとしたらそっちだ。だからABCに行くとしたら、それは本屋に行くことじゃなくABCに行くことが目的になる。
ABCに入って店内を歩きまわりながら、何がほしいのかもわからないまま、あてどもなく本屋の中をうろつくことに、不思議に愉悦を感じた。このまま自分が何を探しているのかもわからず、何を探しているのかを探しながら本屋の中をグルグル歩きまわり、そのまま行き倒れるのもアリだよな、と。
まあ変なところでタフなので、そのまま半日やそこら歩きまわったところで行き倒れることはないのだが、本屋にいるはずが気づいたら異界に入り込んでたりしたら面白いのに…などと考えながら棚を見ていたら、そこで見つけてしまったのだ、あの本を。
そういえば俺、確かにそれを探してたんだっけ…。
あの本──デビッド・リンチの写真集を。
そうか、お前が俺を呼んだのか…。
それにしても、デビッド・リンチの写真集がこんなところで見つかるとは…!
手に取ってパラパラとページをめくると、ああ…間違いない。超弩級のヤバさを持ったデビッド・リンチの写真だ。これは紛れもなく俺の探してたデビッド・リンチの写真集だった。
リンチの写真はヤバい。ヤバいと言っても、別に死体とか写ってるわけじゃない。というか、死体の写ってる写真を見たけりゃ、医学書を扱ってる大きな書店に行って写真つきの解剖学書でも見ればいい(笑)。ダイアン・アーバスの写真とかもそうだけど、本当にヤバい写真というのは、一見すると日常の当たり前のものが当たり前に写ってるだけのものなんだよ(もっとも、その写真を撮る中でダイアン・アーバスは自ら命を断ってしまったのだけれど)。
リンチの写真も同じ。
彼は廃工場を撮った一連の写真作品があって、今回私を「呼んだ」写真集もやはり廃工場を撮った作品だ。日本でも宮本隆司とか廃墟を専門に撮ってる写真家は少なくなく、廃墟ブームなどということが言われたりもしたけど、リンチの写真は単純にそうした廃墟の持つ美を写し取っただけのものとは大きく違っているように思う。
映画監督であるリンチの撮る写真は高い美意識に裏打ちされたものだが、その甘い腐臭のような美しさは、見る者の内にある歪み、壊れたがっているという思いと共振していく。その歪み、壊れていくことが愉悦であるような写真こそ、リンチの撮る写真にほかならない。
残念なことにその時は持ち合わせがなく、その本を買うことはできなかった。しかし、その本は遠からず買うことになるだろう。呼ばれなければ買うことは一切ないが、一度呼ばれてしまったら、それを断ることはできないのだから。
最後に、YouTubeを見てたらリンチの作ったコーヒーのCMがあったので、参考までに。
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