1/5の朝日新聞「オピニオン」ページに、2023年度前期のNHK朝ドラ『らんまん』の脚本を執筆した長田(おさだ)育恵のインタビュー記事があり、その中で印象に残った下りがあったので、ここで紹介したい。
『らんまん』は、幕末に生を受け、日本の植物学の黎明期を生きた高知県出身の植物学者、牧野富太郎の人生をモデルにしたドラマだった。一般に朝ドラはヒロインの一代記を描くことが多く、男が主人公になることは非常に少ない上、『らんまん』は主人公が学者だったこともあって
「『若い女性が明るく頑張るドラマが見たい』という期待には応えていないので、『重い』『暗い』という不満の声もありました。正直言って、巨大で分厚い壁に囲まれているような圧迫感と怖さの中にいました。何も言われようと、書こうと思ったことを書ききるしかない。そう覚悟して走りました」
そして、「作中人物の気概は、長田さん自身と重なるのでは?」というインタビュアの質問に対して、長田は「私は『女性作家』という狭いところに閉じ込められたくなくて、作品を通して社会と関わり、自由でいたい」と述べ、
「小さなことでも、納得できないことはやり過ごさない。立ち止まり、対峙する。そういうささやかな局地戦を粘り強く続けることでしか、自分がよりよいと思う方向へ、ものごとを動かすことはできないのではないでしょうか」
また、長田はこうも言っている。
「力を持つ人に都合がよかったり、多くの人が心地よかったりする価値観は、美しい言葉で飾られ、大義名分が付き、『潮流』になってゆく。それが時に、誤った方向に流れたり、異なる意見やものの見方を抑圧したりすることは歴史が証明しています。現実に私もいま、黙っていることで、その潮流を作る一員になっているかもしれない。その危険性はいつも意識するようにしています」
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