2022年冬期は1本の再放送を含む15本のアニメを見た(途中切りはなし)。この1では3月末時点で放送が終了した作品について、私自身の感想と評価を述べたい。なお掲載は五十音順で、評価はA~E。
『明日(あけび)ちゃんのセーラー服』
かつて母親が着ていたセーラー服に憧れ、頑張って母親の母校(中学校)に合格した明日小道だが、制服はブレザーに替わっていた。それでも理事長の英断で、小道は母の手製のセーラー服で学校に行くことが許される。中学校が舞台のいわゆる学園もの。
制作陣のほとんどが女性という珍しい体制で制作されたこのアニメは、フェティッシュな空気感に満ち満ちていて超エロいのだが、深夜アニメによくある、野郎が喜ぶようなエロさではない。また学園ものでありながら、いじめやらスクールカーストやら恋愛を巡るドロドロ劇などは一切出てこない。クラスメイトはみんな個性的だが、互いが個性を認め合い、みんな仲良し。大人たちもとても理解があり、頭ごなしに押さえつけてくるようなことは決してしない。多分、これを見た女子は(いや、女子に限らずか)「私もこんな学校生活を送りたかった」と思うんだろうな。
細やかな表現に制作陣の力量を感じる本当に良作なのだが、あまりにも牧歌的で平和な世界に還暦真際のオジサンはどうにもついていけず、評価はC+~B。
『86―エイティシックス―』22,23話
2021年秋アニメとして放送された第2期の、延期されていた最後の二話がやっと放送された。21話は第1期で生き残った86の5人が結局、戦場にしか居場所を見い出すことができず、レギオンの最強兵器との戦いに決死隊として参戦し、多大な犠牲を出しながらも目的を果たす、という話で、だから正直、この回で終わらせてもよかったのではないかと思う(とはいえ原作があるので、そうもいかないわけだが)。そう考えると、22,23話はどちらかというと余談であり、物語としては最後の伏線を回収するくらいの意味しかなかったが、特に23話は非常に丁寧に作られていて、内容はベタなのにちょっと泣けた。
評価は「2021年秋アニメの感想と評価 2」に書いたのと変わらず、C+~B-。
『鬼滅の刃 遊郭編』
既に「『鬼滅の刃 遊郭編』を見終えて」に書いた通りで、つけ加えることは何もない。評価はアニメーションの凄さと物語のひどさを差し引きして、D~C-。
『Code Geass-反逆のルルーシュ-』再放送(前半)
制作されたのは15年前だし、過去に見ていてストーリーも知っている作品だが、新作群と見比べても全然遜色ない、というか、こっちの方が面白い! 『境界戦機』とは舞台設定が似ているものの、物語のスピード感やスケール感が段違いだ。
今更、評価も何もないが、つけるならAしかあり得ない。
『殺し愛』
ある殺しの現場で遭遇した2人の殺し屋、シャトー・ダンクワースとソン・リャンハ。この出会いは偶然の産物だったが、本来なら敵対関係になるはずの2人は、実は女と男の関係を超えた奇妙な縁でつながっていた。しかもソン・リャンハはソン・リャンハではなく、シャトー・ダンクワースもシャトー・ダンクワースではなかった。
『殺し愛』は原作マンガが現在も連載中らしく、だからアニメもさまざまな伏線が残されたままで、スッキリとは終わらなかった。アニメではソン・リャンハの過去までが描かれたので、仮に続きがあるとするなら、今度はシャトー・ダンクワースことシャトー・ノーブルの過去が描かれ、そこで「戦争仕掛け屋」ドニー(ドナルド・バッハマン)らとの関係なども明らかになるのだろう。
結構血なまぐさい話をちょっと乾いた軽いノリで描く、この感じは嫌いじゃないが、物語が本当に動き出すのはここからだと思われるので、ここでアニメ化してしまったのは残念な作品ではある。評価はC+~B-。
『錆喰いビスコ』
〈錆び風〉が吹き荒れ、有毒な錆が蔓延した世界で、錆を広げる〈キノコ守り〉として当局から追われているお尋ね者、赤星ビスコ。忌浜(いみはま)県の路地裏で医院を開業し、錆に侵された人々を治療しているパンダ先生こと猫柳ミロ。ミロの姉で、錆に侵された体で忌浜自警団の団長を務める猫柳パウー。忌浜県知事でありながらウサギ面を被った親衛隊を従え、裏で何かを画策している黒革。彼らが出会う時、錆にまみれた世界の真実が明らかになる…。
あるアニメYouTuberが今期イチ押しのアニメと紹介していたが、私には正直、そこまでの作品には思えなかった。原作は時系列に従って描かれているようだが、アニメでは1話と2話で時系列をシャッフルしたせいで、一体どういう話なのか全く分からなかったせいもある(あまりにも話が分からなくて、私は3話で切るつもりだった)し、登場人物もあまり好きになれなかった(別のアニメYouTuberが指摘していたように、登場人物たちのキャラが弱いのだ)。
それでも溶鉱炉でのビスコと黒革の対決を描いた9話で終わっていれば、まだ少しは記憶にに残るアニメになり得たかもしれないが、『ナウシカ』と『AKIRA』のオマージュかパロディかわからない10~12話は、ただただ退屈で途中からムカムカしてきた。全体として評価はD~C-。
『時光代理人 -LINK CLOCK-』
bilibili動画で大人気だったという中国アニメ。いわゆるタイムリープものの変形で、写真館を営む青年2人が、1人は写真の中に入れる能力、もう1人はそれを外からナビゲートする能力を持ち、本来の仕事とは別に、写真から過去の情報を得たり、誰かに当時伝えられなかったことを伝えたりする仕事を請け負う。
1~2話完結のオムニバス・ストーリーだが、よく言われるように、そういう作りの作品は1本の連続したストーリーの作品を作るよりずっと難しい(例えば1話完結のオムニバス形式のマンガとしては『ブラック・ジャック』が知られているが、あれは練達のマンガ家、手塚治虫をして初めて可能な作品だ)。では『時光代理人』はどうだったかといえば、「一定の時間、写真の中に写っている人に憑依して、過去を生きることができる」という魅力的な設定を生かし切れず、何とも中途半端な物語ばかりになってしまっている。脚本家はやたら“お涙頂戴”的な展開に持っていこうとしていて、それがある意味、人気に繋がっているのかもしれないが、私には明らかに力量不足の、ただの“クサい話”にしか見えなかった。
ただ最終回のどんでん返しはあざといが、それなりに面白かったので、評価はD~C-。
『天才王子の赤字国家再生術』
やたらと多い異世界ものの作品の1つだが、この『天才王子』は、現実世界から異世界に転生した主人公が無双する話、ではなく、異世界が舞台の政治劇である。
病に倒れた父王に代わって国の舵取りをすることになった王子、ウェイン。彼が摂政を務めるナトラ王国は大陸の北辺に位置し、主要な産業もなく国家財政は火の車。そこで彼はその財政を立て直した後に国を売り払い、そのカネで楽隠居しようと画策する。だが大陸は、東半分を支配するアースワルド帝国、西半分の諸国に影響力を持ったレベティア教など、さまざまな勢力が火花を散らすパワーゲームの舞台であり、ウェインは片腕とも言える補佐官、ニニムとともに、知力を駆使して生き残りをかけて戦う。
ネットでは、バトルシーンがショボい、などと批判的な評価が多いようだが、この作品の核心はウェインが各国の高官相手に繰り広げる心理戦、謀略戦の面白さにあるので、バトルシーンのクオリティについては許容範囲かと(ちなみに制作は横浜アニメーションラボ)。ウェインの用いる策略も、決して異能力を用いたチートなものとか絵空事ではなく、ウェインの本音が最終話で見せた奇策と見事に繋がる物語構成も上手いと思う。そういうことからも評価はB~B+。
『ドールズフロントライン』
第3次世界大戦を契機に、戦争は人間同士が戦うものから少女の姿をした「戦術人形」同士が戦うものへと姿を変えた。だが大戦後、突如人類へ反旗を翻した大手軍需企業「鉄血工造」の戦術人形に、民間軍事会社「グリフィン」が立ちはだかる。物語はグリフィン所属のエリート部隊、AR小隊を中心に描かれる。
元々はスマホ向けゲームだったもののアニメ化らしい。グリフィンvs鉄血という構図はシンプルで分かりやすいが、なぜ鉄血工造(の人形たち)が人類に反旗を翻したのか、というストーリーが展開していく上で核心となるはずのところが何一つ描かれないので、毎回、グリフィンと鉄血の少女たちがひたすら銃撃戦で殺し合ってるだけ(しかも人形の大半はバックアップがなされているので、死んでも別の個体にインストールし直せばいい)のようにしか見えず、見ているこっちの心も全然揺り動かされない(それでも11,12話でのAR-15のエピソードはちょっとだけよかった)。評価はD~D+。
『薔薇王の葬列』前半
シェイクスピアの『ヘンリー6世』、『リチャード3世』が原案の、薔薇戦争を題材にしたイングランドの歴史劇。この薔薇戦争が起こったのは日本の室町時代中期頃で、応仁の乱と重なる。応仁の乱がそうであるように、薔薇戦争も途中で敵味方が突然入れ替わってしまったり、と複雑怪奇な経過を辿るが、このアニメは視聴者が混乱状態で放り出されないように配慮して作られている。
主人公は後にリチャード3世となる、リチャード・プランタジネット。シェイクスピアの原作では、リチャードはびっこで背骨の曲がった醜い男として描かれているが、この作品では、両性具有として生まれたために実の母から「呪われた悪魔の子」と呼ばれて忌み嫌われ、自らも「男でも女でもない自分は、地獄に落ちるべき存在」と思っている、アイデンティティが揺れ動く不安定な青年として描かれている(実際、彼にはジャンヌ・ダルクという別人格がいる)。
ところで、私は原作マンガを読んだことがないので原作からしてそうなっているのかどうかは知らないが、このアニメはとにかく止め絵が多い上にモブキャラは顔すら描かず、アニメというよりむしろ紙芝居に近い感じ(制作はJ.C.STAFF)。それでも見続けたのは、もちろん話が面白いからだ。というのも私の場合、アニメーションの表現としては凄いけど話がつまらない作品より、アニメーションはショボくても話が滅法面白い作品の方を高く買うので。とはいえアニメーションがあまりにも省エネゆえ、評価も抑えめのC~C+。
『範馬刃牙(はんまバキ)』
年々マンガ雑誌を読むことが少なくなって、マンガはほとんどアニメで見るようになってしまったが、なぜか〈バキ〉シリーズだけは今でもずっと読んでいて、だから今回放送された分の話も既に知っていた。だけど知っていても面白い、知っていても見てしまう。小難しいことは何も考えず、ただストーリーの流れに身を任せておけば、それでいい。『範馬刃牙』とはそういうアニメだ。
父親にして地上最強生物、範馬勇次郎との闘いの準備として刃牙は、勇次郎の盟友の1人で“アンチェイン(繋がれざる者)”の異名を持つビスケット・オリバと闘うべく、彼のいる米アリゾナ州立刑務所に囚人として入る。だが、そこには既に、オリバを倒して新たな“アンチェイン”になろうとする、ミスター・セカンと呼ばれる男がいた…。
評価はC。これは「可もなく不可もなし」という意味のCではなく、「可も不可も超越していて、もうこれ以外の評価はつけようがない」という意味のCである。
『平家物語』
既にアップした「アニメ『平家物語』あるいは世界の美しさについて」で書くべきことは全て書いた。評価はA。
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