世の成功本にまつわる最大のパラドックスに、「成功本の通りにやっても成功できない」ということがある。これは本だけに限った話ではなく、例えば数多くの起業セミナー、成功セミナーというものが開催されているが、その参加者の約8割がリピーターだという調査結果からも、同様のことが分かる。
そういう本やセミナーで繰り返し言われるのは「行動することの重要性」である。「読者/参加者のほとんどは知識を増やすばかりで、それを行動に移そうとしない。行動しないから成功できないんだ」という理屈だ。確かに「ああ、いい話を知った」というだけで行動しない人は一定割合でいるだろう。しかし8割の人が本当に何の行動もしないものだろうか? 私もそうだが「実際に言われたとおりにやってみたが成果が出なかった。だからそうするのを止めた」という人の方が、何もしなかったという人よりずっと多いのではないか? だがそう言うと成功者は「成功しなかったのは成功するまでやらなかったからだ。成功する秘訣は『成功するまでやる』ということだ」などと、ワケの分からない理屈を持ち出してくる。
そんな中、主藤孝司の『成功の瞬間』は「なぜ成功本/成功セミナーで教えられるとおりにやっても成功しないのか」に対して1つの側面から回答を与えてくれる。それは「ビジネスの成功は、直感、偶然、運などといった『見えない力』によって決定されていくものであるにもかかわらず、その部分がほとんど語られていないから」である。
そういう本やセミナーで繰り返し言われるのは「行動することの重要性」である。「読者/参加者のほとんどは知識を増やすばかりで、それを行動に移そうとしない。行動しないから成功できないんだ」という理屈だ。確かに「ああ、いい話を知った」というだけで行動しない人は一定割合でいるだろう。しかし8割の人が本当に何の行動もしないものだろうか? 私もそうだが「実際に言われたとおりにやってみたが成果が出なかった。だからそうするのを止めた」という人の方が、何もしなかったという人よりずっと多いのではないか? だがそう言うと成功者は「成功しなかったのは成功するまでやらなかったからだ。成功する秘訣は『成功するまでやる』ということだ」などと、ワケの分からない理屈を持ち出してくる。
そんな中、主藤孝司の『成功の瞬間』は「なぜ成功本/成功セミナーで教えられるとおりにやっても成功しないのか」に対して1つの側面から回答を与えてくれる。それは「ビジネスの成功は、直感、偶然、運などといった『見えない力』によって決定されていくものであるにもかかわらず、その部分がほとんど語られていないから」である。
この本では、数多くの経営者にアンケートした結果と実際に取材した内容から、特に事業の立ち上げ(つまり起業)時点で、こうした「見えない力」の後押しを受けたかどうか──それを主藤は「成功の瞬間があった」という言葉で表している──が、その後の成否に決定的な意味を持つことが述べられる。
直感やひらめきが湧いてこない者が、他人が成功しているビジネスをそのまま同じようにやっても、うまくいくことはない。理屈の上では正しいやり方をしても成功できないのは、こういったカラクリがあるからだ。
また、成功者の教えとしてよくあるものの1つに「目標設定することの大切さ」がある。「どこに行くにしても目的地が必要だろう。それなのに目標も設定されていないとしたら、成功することなどないではないか」というもので、これを聞くとなるほどと思うが、主藤は
そういうこと(=目標設定)をまったく行わないで成功を掴んだ人のほうが、圧倒的に多い。なぜなら、目標を持つということは「集中力」ということであるが、事業の立ち上げ期に必要なのは集中力ではなく「創造性」だからである。
と述べる。目標設定は視野を狭めるので「見えない力」が働きづらくなるのだ、と。実際、多くの経営者にインタビューしても初めから明確な目標を立てて事業を成功させた人はほとんどいないそうだ。
ただ、目標設定は意味がないわけではない。事業を立ち上げ、収益の方向性が定まった後は、目標を明確に設定することで大きく飛躍する。つまり、大切なのはそのタイミングと内容なのだ。
ただ、目標設定は意味がないわけではない。事業を立ち上げ、収益の方向性が定まった後は、目標を明確に設定することで大きく飛躍する。つまり、大切なのはそのタイミングと内容なのだ。
ではなぜ成功者は本やセミナーでそういうことを言わないのか? 主藤はこうした「成功の瞬間」が隠されてしまう理由を7つ挙げて分析している。それについては本を見てもらうとして、私は8つ目の理由を挙げたい。それは「自身の成功体験の商品価値を守るため」である。
現代の成功者の中には「こんなダメな私でもここまで成功したんだから、あなたにできないはずはない。そのためには私の言うとおりやりなさい」と、自身の成功体験をネタに荒稼ぎしている人が少なくない。そんな人にとって「成功するためには『見えない力』の後押しが必要だ」となったら、単に言われたとおりにしても成功できないわけだから、自身の成功体験が一気に価値を失いかねない。ならば、そういうことには一切触れず「私は成功するための最高のメソッドを伝授している。それでも成功しないのは、あなたが教えられたとおりに行動してないからだ」と相手に責任を押しつけておいた方がずっといい。
もちろん、ここに書かれていることは「なぜ成功本/成功セミナーで教えられるとおりにやっても成功しないのか」という問いに対する、あくまで1つの側面からの回答ではあるが、「目標設定がなされてない」、「行動が足らない」などという成功者の言葉に踊らされて、そこから抜け出せなくなっている人には、ある種の救いを与えてくれる本だと思う。
それに何より、成功セミナーの参加者の8割がリピーターという点を考え合わせると、こういうセミナービジネスで成功している人にとっては、参加者が成功しないことが自身のビジネスにとって非常に重要なファクターなのだから、その人の言うとおりにやっても成功できないのは当然と言えば当然なのかもしれない。
それに何より、成功セミナーの参加者の8割がリピーターという点を考え合わせると、こういうセミナービジネスで成功している人にとっては、参加者が成功しないことが自身のビジネスにとって非常に重要なファクターなのだから、その人の言うとおりにやっても成功できないのは当然と言えば当然なのかもしれない。
※これは「本が好き」に投稿したレビューを加筆修正したもの。
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