仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

【1979年の手帳から】 駿台・伊藤和夫師の言葉

2012-03-05 21:30:21 | 昔の手帳から
伊藤師曰く、
深夜、氣持ちが昂じて來て、自分を天才であるかのやうに思ふのは、
冷靜に自分自身を眺めてゐるもう一人の自分が先に眠つてしまふからである。



私が浪人中に通つてゐた駿台高等豫備校には何人かの名物講師がゐた。
英語の講師、伊藤和夫氏もその一人。
これを見て思ひ出したのだが、駿台の學生は講師の名前に「師」といふ敬稱をつけてゐた。
なんだか僧侶や新興宗教の教祖のやうだが、いまから思へば浪人生にとつて彼らはそのやうな存在だつたのかもしれない。
私などは、勉強そのものよりも、彼らの雜談が樂しみだつたりしたものだ。

伊藤氏のいふやうに自分を天才であるかのやうに思つたことはないが、「もう一人の自分が先に眠つてしまふ」といふのはわかる氣がする。
夜中に書いた手紙を翌朝讀んだら恥かしくて投函出來ない、なんてことがよくあつた。
あれは、きつと理性が眠つてしまつてゐたのだと思ふ。
だから戀文などは深夜に書いてはいけない。
いや、待てよ。
さうだからこそ、ああいふたぐひの手紙は夜中にしか書けないものなのかもしれないな・・・







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