仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「天空の蜂」 東野圭吾

2006-04-02 12:17:52 | 讀書録(ミステリ)
「天空の蜂」 東野圭吾

お薦め度:☆☆☆☆
2006年3月29日讀了


自動操縱裝置を裝備した大型ヘリコプターが奪はれた。
そのヘリコプターは犯人により爆藥が搭載されてをり、原子力發電所上空でホバリングしてゐる。
このままでは燃料が盡きると原子力發電所に墜落することになる。
犯人の要求は日本中の原子力發電所すべての操業を停止すること。
政府の下した決斷は・・・

ヘリコプターにとぢ込められた男の子を救出するシーンはスリル滿點。
まさに手に汗握るシーンだ。
このシーンは映畫化されたら面白いだらうと思ふ。
ただ、全體の構成から考へると、このシーンが浮いてしまつてゐるやうな感じがする。
犯人の人間性を描きたかつたのかもしれないが、單なる讀者サービスになつてゐるやうに思はれた。

この作品のテーマは、原子力發電所に對する國民の無關心である。
電力消費の最大のユーザーである都會の人間にとつて、田舍にある發電所の存在など日常生活のなかでは思ひを致すことすらない。
現状の生活レベルを維持するためには必要な存在であるにもかかわらず、「臭いものにはフタ」的な存在となつてゐる。
その圖式は、現行憲法下の自衞隊の存在に通じるものがある。
「なければ困るくせに、そんなものいらねえと世間からは冷たく見られる仕事だよ」

社會問題を扱つてゐながら、重たくなることがなく、テンポ良く物語が展開する。
私が映像化して欲しいと感じた數少ない作品のひとつである。


2006年3月29日讀了


天空の蜂

講談社

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