11月4日
『山の霊異記 赤いヤッケの男』 安曇潤平
2008年2月刊行
初読。短篇集。26篇。
山に登ると奇妙な出来事に遭遇することがあるらしい。
ぼく自身は幸いにして経験したことはないけれど。
でも単独行でテント泊の時に、夜遅くテント脇に聞こえる山靴の音が気になったこともあった。
テントを持たずに身一つでビヴァーク(不時露営)した時も、遭難する恐怖より怪異現象の方が怖かった。
もう山には登れないけど、この何ともいえない気配が懐かしい。
11月9日
『山の霊異記 黒い遭難碑』 安曇潤平
2013年4月刊行
初読。短篇集。22篇。
「釜トンネル」
上高地に抜けるトンネル。冬の上高地に入るにはこのトンネルを歩いて通らなくてはならない。
僕らが山に登っていた頃からこのトンネルを舞台にした怪談はあった。
1980年の年末にこのトンネルを歩いた時には怪談を思い出す余裕はなかった。当時のことを書いたブログから以下転載。
上高地までいくつものトンネルがあつたが、1kmを超えるやうな長いトンネルもいくつかあつた。
その中でも長かつたのは、上高地の手前の最後の難關、「釜トンネル」だ。
ヘッドライトをつけて歩くのだが、眞つ暗で足元の狹い範圍しか見えないので愼重に歩く。
しかし、ヘッドライトの光量では地面(雪面)の凹凸が判らず、バランスを崩して何度か轉んでしまつた。
「釜トンネル」といへば幽靈が出ることで有名なのだが、轉ばないやうに神經を集中してゐた所爲か幽靈は出てこなかつた。
「ポニーテールの女」
西穂山荘が舞台。これ、幽霊より怖い…
「ひまわり」
八方尾根から唐松岳に登る。情景描写が見事。ぼくの最後の山行は2005年にこのルートを登ったのだが、その時の情景を思い出させてくれた。
読後感は温かい。怪奇現象も受け取りかた次第ってことなのだろう。
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