藝大の学生時代、佐藤眞先生の楽式分析の講座で、フーガの一例としてこの終楽章を扱った。
僕は逆行の主題を黒板に書くよう先生から指名されたが、どこから始まり、どこで終わるのか、しどろもどろだった。
そんな苦い経験のあるベートーヴェン「ハンマークラヴィーア・ソナタ / 終楽章」を暗譜した。
主題は冒頭の跳躍を除けば、モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲のように、トリルで始まり螺旋状の16分音符が続く。
たった3声ながらピアノの音域をフルに活用することで多様な表現を作り上げている点は、リストの「ラ・カンパネラ」にも匹敵する。
しかしその音楽性はまるで崇高な人格、もしくは大聖堂!
曲の約3分の2で二重フーガになるのは印象的だが、むしろ小節数が丁度半分になった瞬間、低い減七の一撃と共にシューマンかフランクかと思わせるシンコペーションの精力的な反復進行が始まるのには、震えが来る。
件の逆行主題だが、主調B durから最も遠いh mollでもあり、僕は現代的な解釈で、録音したものを逆再生すると残響が無くなるように、ペダルを使わず乾いた音で演奏している。
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