8月28、29日「大島純・松本和将 ベートーヴェンチェロソナタ全曲演奏会」(プリモ芸術工房)。
楽譜は32年前に買ったままなので、これを機にピアノで両パート弾きながら全曲をざっと把握した。その後、オンラインでリサイタルを視聴した。
《第1番》
オーケストラを二重奏に編曲したような書法で、チェロがピアノの低音パートをなぞる箇所が多いが重くならず、若きベートーヴェンの多彩な感情の変化を堪能した。
《第2番》
ピアノの主旋律をチェロがアルペジオなどで伴奏する事が多いので要注意。危機的状況をより強靭に。第2楽章の中間部は泡立つ軽やかさが爽快。
《第3番》
第1楽章:再現部前の40秒間は常軌を逸する部分。ここを本当に常軌を逸して弾けるか。
第2楽章:冒頭、ピアノは楽譜通りならpで騙すように入り、突然ff…スケルツォは音楽の悪ふざけ。
第3楽章第2部:半音階的な冷たい推移、錯綜する頂点、そして止めを刺した。
《第4番》
チェロのアカデミックな弾き方と一線を画す世界観。
Andanteは温かみのある、人の祈り。粗野なAllegro vivace。Adagioは深い闇、呻(うめ)き、神の出現。
終楽章:農民の舞踊。バグパイプ…寸胴(ずんどう)な音で。さすらいの音楽家が独学で身に着けた「下手うま」を望む。
《第5番》
第1楽章:リヒャルト・シュトラウスやショパンのピアノソナタ第3番を先取り。ロマン派に生まれ変わったような若々しさ!
第2楽章:ミサ、葬送、荘厳。中間部はテンポを上げ、緩む。再現は「能」の凄味、極限的に遅い弓、鬱屈した緊張感。
第3楽章:第2楽章の余韻のままフーガの神殿に入る妙。堅牢、明晰、そして滑らかさ。テンポを変えずに頂点…実力者の証。最後、天使のはためき・歓喜、まではもう一歩。
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