STUDIO GREY blog

イラストあります…でも、無料素材ではありません

#12 愛について

2002-05-29 16:16:00 | STUDIO GREY Diary
『愛の前に 死がかくまで無力なものだとは思わなかった』
こう友人に書き遺して世を去った作家がいた。この数日後、彼は女性編集者と心中を遂げる。
どういう経緯で心中に至ったのか詳しく知らないが、周囲からの猛烈な反対があったか、お互いに、もしくはどちらかが家庭をもっていたのだろう。大正期のことである。

二人の『愛』を押し通すために『死』を選び、それを目の前にしてもなお、二人の『愛』は変わらずに存在し続ける。『死』を無力化してしまうほどの力が『愛』にはある。たぶんそういうことなのだろう。
そういう『愛』というものがあることは、わからなくもない。
ただ、彼あるいは彼女の親、兄弟、友人・知人の中に、彼らを愛している人はいなかっただろうか?恋愛感情はもちろんのこと、肉親、友人として愛している人達がいたはずである。自分が愛する人に死なれ、悲しみや怒りや自戒にとりつかれて、ただ立ち尽くし嘆き叫ぶしかないこともある。
『愛』の力も強大ではあるが、『死』の力も負けず劣らず強大である。

『死の前に 愛もまた無力なものである』ということである。

いずれにしてもこの『愛』というやつは、相当やっかいなものなのかもしれない。
『愛』ってなんだ?

2002. 5. 29  小川 篤