映画と自然主義 労働者は奴隷ではない.生産者でない者は、全て泥棒と思え

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

映画『小原正助さん』 (清水宏)

2014年10月23日 01時43分33秒 | 清水宏
小原正助さん
1949年 97分

監督  清水宏
製作  岸松雄
脚本  清水宏
    岸松雄
撮影  鈴木博
照明  石井長四郎
録音  中井喜八郎
美術  下川原友雄
編集  笠間秀敏

配役
大河内傳次郎
風見章子
宮川玲子
清川虹子
飯田蝶子
田中晴生
清川荘司
鳥羽陽之助
日守新一


戦争に負けた結果、GHQにより農地改革が行われ、庄屋で名士と呼ばれた杉本佐平太さんも、土地の多くは小作人に分けられたのであろう、今はごく普通の農家であった.かつてのような繁栄も無く、お手伝いさんもばあやが一人居るだけなのだが、けれども、地元の人達は以前と変わらず、寄付を求めに、酒を飲みに、佐平太さんの家に集まって来るのだった.妻の臍繰りも尽き、ついには借金をして地元の人達の要望に応えていた佐平太さんは、借金取りに追われる羽目に.

残された財産は骨董品の他はロバと本.ロバは子供たちに、本は村の青年たちに寄付された.骨董品は庄屋であった頃、小作人達から搾取した財産であった.佐平太さんは村人に差し上げるべきと考えていたが、かつての小作人であった村人達に差し上げるべき財産は既に寄付で上げてしまい、未だ残っている骨董品の分は借金になっているのだった.村人達が貰うべき財産はもう無く、残った骨董品は村人が買い取って、佐平太さんの借金を返すことにした.

杉本左平太さんは小原正助さんと同じように、朝寝、朝酒、朝湯が大好きだったけど、財産を無くしたのは、かつて小作人であった村人達に分け与えたからです.

選挙の応援を頼まれた庄助さん、応援の話は引き受けたけれど、けれども料亭の支払いは全部自分持ち、買収はされなかった.
村人達が、村長に立候補するよう頼みに来たが、庄助さんは断った.村人達は庄助さんの寄付を当てにし、また、酒を飲ませてもらうことを当てにして、庄助さんの家にやって来ていた.
戦争が終わり新しい法律が出来て、新しい時代になった.庄助さんが村長に立候補していれば、寄付行為の禁止、酒を飲ませる買収行為によって、選挙違反で捕まる事になる.仮に庄助さんが村長になりたいと思っても、村長になることが出来ないことを、料亭の支払いを全部自分で払ったことから、彼はよく分っていたと言える.
古い時代、地元の名士と呼ばれる者が、金と権力を握っていた時代では、村人達が名士と呼ばれる人間に頼るのも、仕方がなかったかもしれないが.
けれども時代が変わり、村人達が一人の人間の善意に頼る時代は終わり、村人達が選挙によって、村人に善意を尽くす人間を選ぶ時代に変わったのである.
その事を、村人の一人一人が理解しなければならないのだが、この映画が撮られてからおおよそ65年が経過しても、つい最近辞任した大臣(その関係者)が、未だに有権者にワインを配っていた.
(貰った人が辞めさせなければ)