八ヶ岳 中岳クーロワール・阿弥陀北壁左稜
<期間> 2007年2月11~12日
<メンバー>: W尾、mar、hori、A岡、U山
テント設営後、一服して中岳クーロワールに向かう。文三郎道のトレースを離れ、中岳沢左俣に入るとほどなくして岩尾根に切れ込むクーロワールが全貌をあらわした。見栄えはなかなか立派である。これまでに何度となくここら辺の地形を目にしているはずだが、これほど顕著なクーロワールが存在することに全く気付かなかった。その気になって眺めなければ風景は見えても地形は見えてこないということなのだろう。
2月11日(日) 曇り
美濃戸(7:40)~行者小屋(10:00)~中岳クーロワール 取り付き11:30 終了14:30
美濃戸でおつたさんに挨拶し、南沢経由で行者小屋へ向かう。南沢を登るのは久々だったが行者小屋までの遠いこと、遠いこと・・・。
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デルタ状の雪面をつめクーロワール入り口に到着したがそのまま登り続け、その先の幅が一段狭まるところで高橋-朝岡、内山-若尾のペアでアンザイレンする。ここは岳人に載っていたルート図の2P目と思われる。
2P目は多少傾斜が強くなった雪面にピッケルとバイルのシャフトを交互に刺しながら登り、棚の手前でピッチを切る(ビレイ点はチョクストンに巻きつけられた残置シュリンゲ)。
<2P目>
3P目は最初の棚を越すといったん傾斜が落ちるが、中間部の残値ピンのあたりからクーロワール幅が狭くなって、左右の側壁にホールドスタンスを求めながらのクライミングとなった。登るに連れてクーロワールはますます狭まり、最後はチムニー登りもどきで痩せた尾根に飛び出す。そこから右手に折れてカンテを登るが、井戸底のようなクールワールから急に露出度が高い登りとなったので緊張する。あとは、雪稜をたどりしっかりとした木にビレイをとって終了。
ルート図では、2P目はダブルアックスで登るようなことが書いてあったが、今回はまとまった降雪の後のせいか単なる雪壁登りとなってしまったのは残念。しかし、3P目は岩の構成が変化に富んで楽しいクライミングが味わえる。アプローチや所要時間の短さもあわせて考えると、いろいろと利用価値が高いルートであるように感じた。
終了点からは尾根を乗り越し、その先に続く尾根を下って右俣の一般道に合流。3時過ぎにはテントに戻った。
高橋さんの顔で行者小屋から差し入れてもらったにごり酒(賞味期限切れで少々酸味アリ)を楽しんですっかりいい気分になっていたら、高橋さんの携帯に救助隊の田中隊長から電話が入った。なんでも赤岳主稜から単独の人が落ちたらしい。“高橋さんもご苦労なこって・・・”なんて人ごとに思っていたら、若尾さんと私も一緒に出動することになってしまった。そういや俺も一応救助隊員だったっけ・・・。
一通りの準備を終え、現場に着くまでにアルコールが抜けることを願いつつ指示待ちをしていたら有難い情報が舞い込んだ。どうやら遭難者は自力で下山して行者小屋にテントを張っているらしい。ほどなくして遭難者を発見。やまびこもいいタイミングで飛来した。必要なものだけまとめてもらってピックアップポイントまで移動。足首が痛いというので肩を貸してあげたが、それ以外は特に外傷らしきものは見当たらない。
主稜のかなり上のほうから落ちたらしいが、この程度のケガで済むなんて運が強いというか、ご先祖様がお守りくださいましたというか、とにかく奇跡以外のなにものでもない。樹林の上にホバーリングしていたやまびこがあっという間に遭難者を収容し、高度を上げながらみるみるうちに小さくなっていく。この間、約1時間というところだったろうか。ヘリ救助の機動性の高さをあらためて知らされる一件でした。
遭難者の残置装備をまとめ、行者小屋に預けたところで救助作業(?)は無事終了。テントに帰ってゆっくり飲みなおし、メシを食って就寝。
2月12日(月) 阿弥陀北壁左稜 天気 晴れ時々曇り
出発(8:00) 左稜 取り付き9:00 終了12:30 茅野警察署経由 帰宅
朝、キジ打ちにでかけようとテントを出たらちょうど堀内さんが登ってきて実にスムーズな合流ができた。
今日は高橋さんリクエストの阿弥陀北壁左稜。なんでも昨年北西稜を登った折にとてもスッキリとした雪稜に見えたとか・・・。指をパキッて養生中の高橋さんの気まぐれから生まれたこの企画。マイナールートコレクター(の端くれ)の私にとって千載一遇のチャンス到来!
北稜の取り付きから左稜を目指して北壁の下部斜面をトラバース。雪崩を警戒して念のためアンザイレンする。この斜面は一枚のバーンとなって南沢へダイレクトに落ち込み、なかなかに美しい。上を見上げれば左から北稜、凹状壁、左稜、右稜、北西稜と並ぶが、左稜、右稜はブッシュに覆われたヤブ尾根で、どう贔屓目に見てもぱっとしない。
<取り付きへ>
高橋-若尾-朝岡、堀内-内山でペアを組み稜の右手側面から登り始める。稜全体に渡って、下から見た通りの傾斜の強いヤブ尾根で、ブッシュがうるさい急斜面のラッセルと時折現れるもろい岩場登りを繰り返す。計4Pで阿弥陀ピークと摩利支天の間の稜線に出て終了。
内容はともあれマイナールート1本ゲット!です。雪が多い年の3月あたりに登れば、戸隠のミニチュア版のような雪稜登高が(もしかすると)楽しめるかもしれない。
<終了点にて>
帰りは昨日の遭難者の装備を下ろすことになっていたが、行者小屋はすでに閉められていて、装備は小屋番と一緒に赤岳鉱泉に移動してしまったらしい。仕方がないので、赤岳鉱泉を経由して回収し、帰りがけに茅野署に引き渡した。遭難者の右足首は骨折していたそうだが、今日はすでにあずさに乗って東京に帰ったとのことでした。
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