穂高・冬山山行(西穂~奥穂~涸沢岳西尾根)
日程:2011年12月25日~29日 参加者:S原・U山・M野(会員外・チーム84)
[25日 雪~吹雪]
茅野7:00→下諏訪7:30→新穂高温泉9:30→ロープウェイ西穂口10:45/11:10~西穂山荘12:30~丸山下~西穂山荘13:40
諏訪は晴れていたが、新穂高温泉に着くと雪がちらちら舞っており、ロープウェイ西穂口に着くと本格的な降雪となる。それでも3連休のおかげで、西穂山荘まではしっかりしたトレースが残っており、順調に到着。小屋付近でも吹雪状態だったが、行けるところまで行くつもりで丸山を目指す。が、樹林帯から出ると立って歩けないほどの西風と寒気で、それ以上の行動を打ち切り山荘へ戻り、テントを張る。
明日も悪天の予報なので、アルコールをセーブしつつテント内でゆっくりする。火器として持ち上げたM野のジェットボイルの熱効率の良さと、水を容器に入れる時の灯油ポンプ利用の便利さに感動。また今回食糧はU山特製ペミカンとフリーズドライ食品の組み合わせで、軽量化と栄養・食べやすさ・調理簡便さを兼ね備えて満足のゆくものだった。(少々値が張ったが)
夕食:初日とあって生ハム・焼き豚のつまみとペミカン卵スープで充実。
[26日 吹雪]
西穂山荘8:10~丸山~独標下10:00
予報通りの悪天で、ゆっくり起きる。できたら西穂直下、せめて独標までは行きたい、と出発するが、山荘から森林限界までの200m程が吹き溜まりで腰上のラッセルとなる。
樹林帯を抜けるといきなり昨日同様の風と寒気でつらい登りとなる~昨日同様西風(20~30m?)と低温(-20℃以下?)。ただ、風が強いので積雪は少なくアイゼンも良く利く状態。目出帽をすっぽりかぶるがメガネ・ゴーグルが凍結して役に立たない状態なので短時間の行動でも目の周囲・鼻など露出したところが凍傷気味になる。
結局11月末の偵察時に設営した独標下の尾根の緩い部分に設営。
夕食メニュー:ペミカンきのこスープ(和風)
[27日 霧~晴れ]
独標下6:50~独標~西穂9:00~赤石岳10:30~間ノ岳~間天コル14:20~天狗の頭15:00~天狗のコル16:15
天気予報によれば27日は風(20m前後)と低温(-20℃)ではあるものの晴れてくるとの由、更に移動高が来て28日一杯好天との事、先へ進むこととする。
強風・ガスの中、ひと登りで独標。
雪の量は11月の偵察時とほとんど同じのアップダウンの続く稜線を西穂まで辿る。トレースはないがペンキマークも出ており比較的楽に夏道を行けた。
西穂まで達すると上空に青空がのぞき、行く手の奥穂方面が雪煙を巻き上げながら美しく望めるようになる。
<奥穂へ>
懸垂を2回挟んで稜線を行くと岳沢側へのルンゼの鎖場へ達し、更に懸垂。懸垂後岳沢側をトラバースする箇所の雪が不安定でロープ使用。その後アップダウンを繰り返し、岩稜をクライムダウンする際1か所ロープ使用。赤石岳を越え、間ノ岳へ。
間ノ岳の下りはいやらしいが、U山の的確なルートファインディングで夏ルートを拾ってクリヤ。アップダウンが多く北面の鎖場も埋まっているこの辺りが核心部のひとつか。
天狗の頭に着く頃日は傾きかけ、かなりの疲労を感じていた。立派な標識にすがって写真を撮り、コルへ向かう。が、ここでも懸垂を強いられ、時間を要す。その後尾根が微妙に屈曲し、ルート取りに気を付けながらコルへ下降する。コルへの最後の鎖場をうまく見つけることができ、なんとか明るいうちに泊まり場へ着くことができた。
昨日からの強い西風と低温(おそらく両日とも終日-20℃)の為、3人とも顔面が軽い凍傷になってしまった。
夕食メニュー:ペミカンカレー
天狗のコルでもM野のDocomoは通信可能(Auは不可)、各所への連絡と天気予報の入手ができた。
[28日 晴れ]
天狗のコル7:00~コブ尾根の頭~ジャンダルム通過9:30/10:30~ロバの耳~馬の背~奥穂14:00~穂高岳山荘15:00~涸沢岳~西尾根F沢コル18:00~樹林帯2400m20:40
移動性高気圧のおかげで朝から比較的穏やかに晴れる。天狗のコルから飛騨側をからみながら岩稜を登る。上部で飛騨側の凹角をアイゼンを蹴り込んで越え、コルで休憩後、更に上部へ。
コブ尾根の頭に達すると真近にジャンダルムが大きい。ジャンへとのコルへの下りで雪が不安定で懸垂5m。
ジャンダルムは時間の都合でトラバース。とはいえロープを出し、慎重に通過。
<ジャンダルムのトラバース>
トラバースの後はロバの耳とのコルへ急降下するのだが、いやらしいクライムダウンとなる。
ロバの耳から飛騨側についた夏道の下りの入口地点北側の支点を使い懸垂20m。更に懸垂20mで再び鎖場に到達、あとは鎖を頼りに馬の背へのリッジに戻る。
<ロバの耳での懸垂>
馬の背は雪とシュカブラで覆われており、ロープを出して通過するが、高度感満点。
この後、雪稜をしばらく辿り待望の奥穂頂上へ達し、3人で固い握手を交わした。
<奥穂にて>
大展望を楽しんだ後、穂高岳山荘へ向かう。ここからかすかなトレースが切れ切れに残っており、夏道を拾いつつ山荘へ。無雪期は人でにぎわう小屋前広場も雪で埋まっている。快適そうな冬季小屋を横目で見つつ、「予報によれば明日は雪、トレースがあるうちに下ってしまおう」、と涸沢岳へ向かう。
<涸れ沢岳にて>
が、3人とも朝からの行動でかなり疲労しており、ピッチは上がらずおまけにトレースがほとんど消えているので、ルート取りと吹き溜まりの雪に足を取られ時間がかかる。
<雲海に沈む夕日と笠ヶ岳>
西尾根の下降は基本はリッジ通しで、F沢コル近くで急傾斜となる。残念ながら下降途中で日が暮れ、最後の急傾斜部でヘッドランプを出し、暗い中ロープを出しクライムダウン1回、懸垂25m2回をする事となったが、U山の的確なルートファインディングのおかげでコルへ到着。
コルでテントを張ることも考えたが、雪庇が発達しており適地が無いことと、蒲田富士の雪稜に明瞭なトレースが見えたので、遅くなっても樹林帯まで頑張ることにした。
小休後ヘッドランプを頼りに雪稜のトレースを下降、3人ともヨレヨレになりながら2400m台地に到着、設営。
行動が長時間にわたり、予定していた無線交信ができなかったため、留守本部に心配をかけていたことが分かり、携帯で連絡を入れる。ここではAuもDocomoも両方電波が入った。
夕食メニュー:ペミカン豚汁+赤飯
[29日 雪]
2400m10:40~白出沢12:45~新穂高温泉15:00~♨~下諏訪~茅野19:00
昨夜遅くなり就寝が遅くなったのでゆっくり起床。予報通り雪だが、テント場は樹林帯で風もなく快適だった。
撤収後、西尾根にしっかりつけられたトレースを下降、年末登山者が何パーティも登って来るのと行き合う。
<涸沢岳西尾根>
樹林帯の西尾根は5月の偵察時より雪は少なく、急な下りは笹の葉が露出して滑りやすかった。
白出沢の林道にはしっかりしたトレースがつけられており、後は坦々と新穂高温泉に向けて歩いた。
***
主な装備:3人用アライテント(外張り付)1、ガスボンベ大×4、ジェットボイル×1、小ガスヘッド×1、ロープ8mm×50、7mm×50
今回、クラシックルートだが冬季西穂~奥穂の稜線をトレースできた。特に奥穂までは他パーティのトレースひとつなく、ルートファインディング・「岩と氷雪ミックス」対応アイゼンワーク・天候判断その他総合力を試されるなど、非常に充実した山行となった。西穂~奥穂間の鎖場は北向き部分はほとんど雪に埋もれているか氷漬け状態だった。
(U山追記) 装備ではA岡君から借りたリンクカムが要所要所で活躍してくれました。捨て縄もパーティー全体で長短合わせて10本以上は使いましたかね。
ルートは、偵察の甲斐もあって無駄の少ないライン取りが出来たと思いますが、吹雪等で視界が悪いときにはルーファイが難しそうなところも何箇所かありました。
私の顔の凍傷は3人の中では最も重症で、何箇所かに出来た大きな水ぶくれが破れたので下山の翌日に皮膚科に行きましたが既に年末年始休診でした。やむなく薬局で薬剤師さんに相談して化膿止めを購入し、毎日塗っていましたが、おかげでけっこうよくなりました。一方、左足の親指・人差し指の感覚が1月3日現在もなかなかもどってきません。血色はよいので凍傷の心配は無いと思いますが、これだけ長い間しびれているのは初めてで、今回の風、寒気が厳しいものだったことを身をもって実感しています。
読んでいても寒さが感じられます。寒いのが苦手な私には無理そうです・・
でも、この写真の景色は、この時しか見られないのでしょうね。
お疲れ様でした。すごいです。