ちょっぴり腐女子な、つれづれ愚痴日記

 ぐだぐたな日々を愚痴りつつ、のんびり綴っています。気が向いたときに更新。

フローラルなジェネラル(小ネタ)

2011年10月15日 | 腐女子ネタ

            フローラルなジェネラル

「ん?」

 救急車の行列ができる救命救急センターで、佐藤伸一は首を捻った。殺伐とした薬品臭の中に、ふわりと香った香り。

 気のせいか。俺も疲れ切っているよなぁ。

 と、自分を分析しつつ、ICUへと向かった。

「ん?」

 如月翔子はそこ儚く漂うフローラルな香りに、敏感に反応した。

 何で、こんな香りがオレンジでするのかしら? 私たち看護師は香りを付けるのは、禁止されているし…。ドクターたちはいつも消毒薬か石けんの匂いしかしないし…。紅一点の和泉先生も女を捨てているし…。

 

 常に生死と隣り合わせの戦場では、男とか女とか意識している暇などない。全員が一人の人間で、共に戦う戦友なのだ。好き・嫌いなど言う暇もない。

 そこにあるのは、信頼だけだった。

「佐藤先生。何かいい匂いがしているのに気づいてました?」

「ん?」

「ふわっとした、優しい香りがしていませんでした?」

 医局に戻って来た和泉がコーヒーカップを手に、診察録を書いている上司に尋ねた。

「やっぱり? 俺の勘違いとか思ったけど、違ったんだな」

「…もう。アロマとかを取り入れたって話は聞いていないですよね」

「ああ。師長は何も言っていないし…」

「ですよねぇ」

 うーん。と首を捻る二人。

「後で他の奴らにも聞いてみるわ」

 佐藤はそう言うと、仕事の続きに戻った。


「行灯! てめぇ、何を洗濯したんだ!」

 ものすごい剣幕で、愚痴外来に飛び込んで来たオレンジ新棟の将軍。

「何って?」

 こちらは何のこと?と、きょとんとする田口。

「まあ。速水先生、どうされたのですか?」

 藤原看護師がさりげなくコーヒーを差し出しながら、微笑んだ。

「聞いてくださいよ、藤原さん。こいつがヘンな柔軟剤を使ったせいで、行く先々で“速水先生、いい匂いがしますね”と言われるんですよ」

「それで、速水先生は何と答えられたのですか?」

「自分ではよく分からないので、ええとごまかしましたが…」

「まあいいではないですか。いつも消毒剤の匂いでは、心に余裕なんて生まれませんよ。ヘンな香りではないのですから、いいじゃありませんか」

 まあ、そうですが…。と、速水も藤原には逆らわないで、大人しくしている。

「俺はそんなこと言われないけど…」

「そうなのか?」

「うん」

「ふうん」

 納得したようなしないような声を出すと、速水はコーヒーを手にした。そして、

「よく考えれば、藤原さんの言うとおりだ。臭いって言われるよりいいよな。じゃあ」

と言い残して、来たとき同様、突風のごとく去って行った。

 残った田口は藤原に、

「単純な奴ですよねぇ。あれぐらいで文句を言われるなら、今度はラフレシアの匂いでも付けてやろうかな。ありすにもペッてされて、落ち込むといいのに」

と愚痴るのだった。

 *藤原さん。田口と速水の愚痴を聞く係になっているようです。