でも、最近ではそういうことが現実に起きることも有るだろうと思っている。
3月29日の火曜日夜7時頃の事だった。
その日は息子が久しぶりに帰ってくるので、食事を一緒にしようと待っていた。
この時期の札幌はまだまだストーブが手放せない。
室温が22度を示していたので、一度消そうと運転スイッチを切った時、それは起きた。
出窓の左側のレースのカーテンのすそ辺りが、一瞬不自然に風をはらんだように膨らみ、元に戻った。
最初隙間風かな、と思った。あるいは、ストーブを切った直後だったので、ストーブの送風機の影響かな、とも思った。
ストーブは出窓の右下側に位置している。
隙間風説は無い。
窓は北海道仕様の二重窓。
木造家屋のあばら家なら隙間風も入るだろうが、鉄筋コンクリートのマンションの二重窓に隙間風が入ってくるわけがない。
ストーブは出窓の右下にあり、送風機の風はストーブの全面にしか吹き出さない。出窓を伝って左端のカーテンまでピンポイントで流れるはずもない。
何より、カーテンはレース製で穴だらけの布だ。風をはらむわけもない。
レースのカーテンが揺れるのは唯一、窓を開け放し、外からの風を受けてなびく時だけだ。
カーテンの裾だけ小さく膨らむこと自体がありえないことだ。
自分の見間違いかなと思って、その現象を目撃した時夫の方を見ると、偶然彼も目撃していた。
出窓には、私の片付け途中の箱などを重ねたまま、ごちゃっと現象付近に置いてあるので、元々カーテンがその箱に引っかかっていて、たまたま何かの拍子に引っかかりが外れただけだったのかとも考えた。それを夫に確認したが、違うという。
現象の起きた直ぐ左側にテレビが位置しており、真正面のパーソナルチェアから現象を一番はっきり見ていたのは夫だった。
「何あれ」と夫に聞いたが、夫も分からないという。
常識では考えられない現象であることは、二人の人間が同時に目撃したので間違いがない。
本当にあれは何だったのかだろうか…。
今日また、現象のあった周辺を再確認してみた。
一番近くにあったのは、父と母の写真だ。その写真は、確か父の勤続25周年記念でとったもので、父は制服、母は紫が地色の付下げだろうか、和装姿だ。
母とはしばらく連絡をとっていなかった。最近ずっと「電話をかけなければ」と思いながら後回しになっていた。
思い立ったが吉日だ。早速連絡してみると、元気そうな声が帰ってきて安心した。
珍しく長話となり、いつもはしない父の話を母が懐かしそうに話し続けた。
母が言うには、“これまでの人生で嫌いな男性”の第3位が父だとか。そんな事を言いながら、相反して話の内容は父に対する感謝の話。
愛情の裏返しと聞いておこう。
とりあえず、不可思議な現象は「何かの悪い知らせ」ではなかったので、ひとまず安心した。
しかし、あれは本当に一体何だったのか。気になってしょうが無い。
結局わからず仕舞いだが、害は無さそうだから、“座敷わらし”ということにでもしておこうか。