何故かその朝は「こんな風に死ねたらいいな」と思った。
子供の頃から「死」について考えていた。
幼い頃は両親が自分より確実に先に死ぬことを思い、布団の中で泣いた。少し大きくなってからは、自分もいずれ死ぬのだと思うと、恐ろしさに「絶対死にたく無い」と思い、不老不死に関心を持った。また、長寿の老人たちのドキュメンタリー等があると、彼らがどの様な食事をし、生活を送っているかに強く関心を寄せた。そして、100歳まで生きようと考えた時期もあった。
しかし65歳となった今、こんなにも長く生きたと既に思っているし、100歳まで生きなくて良いとも思う。
50代の頃は、老いていくことを受け入れられず、日々“朽ちていく”自分を感じていた。
公的に高齢者と呼ばれる年齢になってやっと、「私は真にお婆さんなのだ」と受け入れられるようになった。それでもまだ悪あがき中だが。
昨年9月から働き始めた場所は、いわゆるサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の厨房だ。配膳のたびにお会いするお年寄りたちは、心なしか弱々しく感じられる。歩行器を使っていらっしゃる方も多いし、みんな食が細い。皆さんお一人で8畳間位のお部屋で暮らされている。
先日、比較的いつも元気な、小さくて細くてスキンヘッドのお爺さんが、私とたった8歳しか違わないことに、衝撃を受けた。ちょっと認知がかったおとなしいお婆ちゃんとは、9歳差。9年後の自分を想像して、ちょっと悲しくなった。
最近では死ぬことよりも、老いる事の方が避けたい事かも知れない。不可避なことなのに。ただ、見かけだけは、生活の仕方によっては、まだ若そうに取り繕うことは出来ると思っているが。
バランスの良い食事を規則正しく取って、適度な運動をし、人とコミュニケーションを取り、知的活動もたまにする。小さいことでクヨクヨ悩まない。そんな風に生活していたら、そんなに老け込まずにいられると楽観してはいるけれど。
最近、元気付けられた一冊がある。
くぼしまりおさんの「魔法のクローゼット」だ。
くぼしまさんのお母さんは魔女の宅急便の原作者の角野栄子さん。
角野さんはテレビで見かけると、いつもとても素敵な装いで若々しい。おいくつなのだろうと調べてみて、ビックリ仰天した。私より、20歳以上も年上だったのだ。
更にあの素敵な装いは、娘のくぼしまさんのコーディネートだということを知り、この素敵な本を購入したのだった。
主に、コーディネートについて書かれた本だが、イラストレーターであるくぼしまさんの描くカラフルなイラストが楽しい。ページをめくるたび、基調のカラーに様々な色の組み合わせで、素敵なコーディネートになるマジックが展開する。
人は、明るい色でこんなにも気分が高揚するのかと、読みながら感じた。正に魔法のような本なのだ。
年を取れば取るほど、美しい色を効果的にまとうのが得策だ。この本はその点、大いに参考になるし、とにかく見るだけでハッピーになりました。