タイトルの「君」とは、重度の自閉症である東田直樹さん。「僕」とは、国際的作家のデイビッド・ミッチェルさんだ。
番組を観るまでは、東田直樹さんもデイビッド・ミッチェルさんも知らなかったけれど、東田直樹さんが「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」を書いた方だと知り、その本の題名については、かなり前に書評で知った本であることを思い出した。
デイビッド・ミッチェルさんは、自身も自閉症の息子さんを持ち、その関わり方に悩みを持っていたのだが、その本を読んで、まるで息子が自分に語りかけている様に感じたそうだ。
デイビッド・ミッチェルさんはこの本を翻訳し、現在では28か国30言語で翻訳され、世界的ベストセラーになっているそうだ。
番組ではその二人が初めて会うシーンがあった。
東田さんは会うことを楽しみにしていたはずなのだが、ミッチェルさんが訪れるやいなや、窓際に行ってしまい外を眺めだした。
ミッチェルさんは黙って待っていた。
やがて落ち着きを取り戻した東田さんは、椅子に座ると質問に対して、パソコンやアルファベットを記入した文字盤を指で辿りながら、丁寧に答えていた。
パソコンによって回答される文章は、大変わかりやすい文章だった。
通常の会話は出来ないそうだが、お母様手作りの文字盤を使って、パソコンでキーを押すように、文字盤を押すことによって言葉が出てくるのだ。
失礼を承知で言わせてもらうと、その声はやや高めで、イントネーションに違和感のある独特なものだった。
東田さんは、子供の頃から漢字に興味を持っていたそうで、それをきっかけに、親御さんと東田さんの長い時間をかけた努力のかいあって、筆談という方法でコミュニケーションを取ることが出来るようになったのだそうだ。
現在は作家として活躍されている。
番組を観終わって、私は直ぐに「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」を購入して読んだ。
番組以上に新たな驚きがあった。
本書は自閉症の人への短い質問と、その質問への丁寧な回答で構成されている。
読みながら、東田さんがいかに苦しみの中で生きているかということを知ったのだった。
話を聞いていないように見えても、実は内側ではしっかり相手の言葉を聞いて理解しているのだが、外面的な幼い行動から誤解され、幼児のように扱われ、悲しい思いをしている。
『年齢相応の態度で接して欲しいのです。
赤ちゃん扱いされるたびに、みじめな気持ちになり、僕たちには永遠に未来は訪れないような気がします。』(本書より抜粋)
時折奇声を発したり、飛び跳ねたり、子供のような振る舞いをしてしまうのだけれど、内側にはそれらをコントロール出来ずに悩み苦しむ東田さんがいる。
『僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて、じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、まるで不良品のロボットを運転しているようなものです』
(本書より抜粋)
失礼ながら、外面からは想像がつかないが、自閉症の方の内面では、色々な思いが駆け巡り、もどかしさと共に、苦しみ悩み悲しんでいる。
この本を読んで、初めて自閉症の方の内面を知り、より深く理解することができたのだった。
私が購入した本は、イラスト入りでルビが振ってあり、子供にも読みやすいものだ。
自閉症の方の事を理解するうえで、大変わかりやすく、大いに役立つものであると実感した。
巻末には東田さんの創作した短編小説「側にいるから」が収録されている。
多くの人に読んで欲しい一冊だ。
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