映画「男たちの大和」を鑑賞。これまた年末から観に行く話をしていたのだが、なかなか日程調整がつかず、違う相手と観に行くことに。
やっぱり戦争は辛いものですなぁ。個人個人では何ともならない大きな力で戦争という流れに飲み込まれていく、当時の人々の置かれていた状況を考えると、つくづく今の時代は自由で平和なんだと思ってしまう。
それぞれが、それぞれの人生を抱える中で、家族、恋人達との思いを断ち切り、日本の未来を信じて大和ともに散っていった。生き残った者も死んでいった仲間達のために行き続ける。戦後60年経った今、戦争の悲惨さを改めて痛感した作品だった。
話の軸は、15歳で戦艦大和に配属された仲代達也演じる神尾とその同僚たち、そしてその上官である内田(中村獅堂)、森脇(反町隆史)、唐木(山田純大)を中心に進んでいく。
神尾たち年少組は、ただただ盲目的にお国のために死んでいくことがいいことだと信じ、一方で森脇は戦争で死ぬことの無意味さを知っている。若い神尾たちには生きろと言い、自らは大和とともに死んでいった。
内田も大和とともに死ぬ覚悟で乗艦したが、いざ生き残ってからは、死んでいった仲間達のために懸命に生きた。たいした資産もない人間が11人もの孤児を養うなんて、よっぽどの覚悟がなければできることじゃない。
長島一茂が言っていた「死ぬ覚悟」と「生きる覚悟」。どちらも覚悟も過酷なものだ。その一茂は、なかなかいい役をやっていたな。下士官(?)たちが大和の水上特攻の無意味さを口論している際、「敗れて目覚める。それ以外に、どうして日本は救われるか。今、目覚めずしていつ救われるか。俺たちは、その先導になるのだ。日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃないか。」と諭したシーンは知的だったね。
内田の生き様を知り、初めて生き残った自分のすべきことが分かった神尾。これまでの60年間はさぞ辛いものだったのだろう。「生きる覚悟」を学んだ敦のラストシーンの表情も未来への期待を込めているようだ。
だが、何と言ってもこの映画の一番の見所は戦闘シーン。当時のフィルムを織り交ぜながらも、まるで本当に戦争が行われているかのような壮絶な戦い。日本海海戦の大勝利以降、海軍の増強による大艦巨砲主義に偏りすぎ、航空部隊を軽視して敗北した当時の海戦の様子がよく出ていたように思う。いかに最新鋭の戦艦であっても、空からの攻撃には弱いということは時代の流れだったところ、一茂の「進歩を軽んじすぎた」のセリフは的を射ている。
次から次へとやってくる米戦闘機に必死に応戦するも、その圧倒的な物量でどんどん兵員達がやられていく。辺りに飛び散る血しぶき、死体の山は壮絶そのもの。煙が立ち上る大和を海上から見下ろすアングルも良かった。
主人公神尾の恋人役の妙子は、蒼井優が好演。素朴な少女役を上手くこなしていた。これまで彼女のことはあまりいいと思わなかったが、あのさわやかな笑顔が○。なかなか良かった。
高畑淳子も戦争で我が子2人を失う母親役を演じ、別れ際の「死んじゃいかん」は我が子を思う愛情が伝わってきた。バラエティではおかしなキャラだが、さすが女優、ドラマになるとこういう悲しい役がよく似合う。
それに対して内田の恋人役の寺島しのぶは、いかんせんカツラがまったく似合わず。内田との年齢差もかなりあるような気がして。
白石加代子も出演。「義経」のお徳さんとは違い、台詞回しは普通だったな。やっぱり時代が違うからか。普通のお母さんにしては演技が重厚だった気がするが。
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それぞれが、それぞれの人生を抱える中で、家族、恋人達との思いを断ち切り、日本の未来を信じて大和ともに散っていった。生き残った者も死んでいった仲間達のために行き続ける。戦後60年経った今、戦争の悲惨さを改めて痛感した作品だった。
話の軸は、15歳で戦艦大和に配属された仲代達也演じる神尾とその同僚たち、そしてその上官である内田(中村獅堂)、森脇(反町隆史)、唐木(山田純大)を中心に進んでいく。
神尾たち年少組は、ただただ盲目的にお国のために死んでいくことがいいことだと信じ、一方で森脇は戦争で死ぬことの無意味さを知っている。若い神尾たちには生きろと言い、自らは大和とともに死んでいった。
内田も大和とともに死ぬ覚悟で乗艦したが、いざ生き残ってからは、死んでいった仲間達のために懸命に生きた。たいした資産もない人間が11人もの孤児を養うなんて、よっぽどの覚悟がなければできることじゃない。
長島一茂が言っていた「死ぬ覚悟」と「生きる覚悟」。どちらも覚悟も過酷なものだ。その一茂は、なかなかいい役をやっていたな。下士官(?)たちが大和の水上特攻の無意味さを口論している際、「敗れて目覚める。それ以外に、どうして日本は救われるか。今、目覚めずしていつ救われるか。俺たちは、その先導になるのだ。日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃないか。」と諭したシーンは知的だったね。
内田の生き様を知り、初めて生き残った自分のすべきことが分かった神尾。これまでの60年間はさぞ辛いものだったのだろう。「生きる覚悟」を学んだ敦のラストシーンの表情も未来への期待を込めているようだ。
だが、何と言ってもこの映画の一番の見所は戦闘シーン。当時のフィルムを織り交ぜながらも、まるで本当に戦争が行われているかのような壮絶な戦い。日本海海戦の大勝利以降、海軍の増強による大艦巨砲主義に偏りすぎ、航空部隊を軽視して敗北した当時の海戦の様子がよく出ていたように思う。いかに最新鋭の戦艦であっても、空からの攻撃には弱いということは時代の流れだったところ、一茂の「進歩を軽んじすぎた」のセリフは的を射ている。
次から次へとやってくる米戦闘機に必死に応戦するも、その圧倒的な物量でどんどん兵員達がやられていく。辺りに飛び散る血しぶき、死体の山は壮絶そのもの。煙が立ち上る大和を海上から見下ろすアングルも良かった。
主人公神尾の恋人役の妙子は、蒼井優が好演。素朴な少女役を上手くこなしていた。これまで彼女のことはあまりいいと思わなかったが、あのさわやかな笑顔が○。なかなか良かった。
高畑淳子も戦争で我が子2人を失う母親役を演じ、別れ際の「死んじゃいかん」は我が子を思う愛情が伝わってきた。バラエティではおかしなキャラだが、さすが女優、ドラマになるとこういう悲しい役がよく似合う。
それに対して内田の恋人役の寺島しのぶは、いかんせんカツラがまったく似合わず。内田との年齢差もかなりあるような気がして。
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