和田寺だより 

住職のよもやま話し

<開宗記念法要>

2005年01月26日 | 和田寺だより
本日、1月26日は天台宗の開宗記念日として宗内各地で法要が営まれています。篠山市、三田市、社町の宗内寺院二十数ケ寺の組織を多紀叡山講といいますがその多紀叡山講と先日お伝えした叡山流ご詠歌の地元の組織を福聚教会丹波本部(篠山市、丹波市、京都府の一部)といいますが二つの組織の共催として開宗記念法要が寺院教師、並びに各寺院総代代表者、福聚教会支部代表者と共に毎年、各寺院持ち回りで営まれています。

本年度は篠山市坂本(旧多紀郡西紀町)の福徳貴寺にて厳修されました。福徳貴寺さんは用明天皇代(585年~)、かの有名な聖徳太子開基と伝えられています。正副両住職先生は叡山流ご詠歌の総本山元講師、総本山講師としてご活躍されておられます。私もご指導頂いております。

さて、開宗記念法要の内容について触れたいと思いますが出仕僧と参加者全員で般若心経、伝教大師開宗和讃・詠歌、宗祖御願文(しゅうそごがんもん)、山家学生式(さんげがくしょうしき)、伝教大師讃仰和讃、宗祖ご宝号(南無宗祖伝教大師福聚金剛(な-む-でんぎょうだいしふくじゅうこうんごう)と三遍となえます)、物故者精霊追善供養としてお念仏をおとなえし、福徳貴寺さんのご詠歌と共に出仕僧が退堂するという法要の流れになっています。出仕僧が独特の音律(節回し)で修す法要もまた素晴らしいと思いますが今日の法要のようにみんなで声をあわせてとなえさせていただく法要は一体感が感じられ改めていいもんだなと思いました。

少し硬い内容になりますが宗祖御願文(しゅうそごがんもん)は宗祖伝教大師最澄(しゅうそでんぎょうだいしさいちょう)が延暦4年(785年)、東大寺で授戒したあと、比叡山に登り、修行に入られるのですがその折に仏道修行者としていかに目的をすえて修行していくかを誓った決意をあらわすために記されたのが「願文」で「悠々たる三界は純ら(もっぱら)苦にして安きこと無く、擾々(じょうじょう)たる四生(ししょう)は唯患(ただうれい)にして楽しからざるなり。牟尼(むに)の日久しく隠れて慈尊の月未だ照らさず、三災(さんさい)の危きに近ずき五濁(ごじょく)の深きに沈む。云々・・・・・・・解脱(げだつ)の味獨り(あじわいひとり)飲まず、安楽の果、獨り證せず。法界の衆生と同じく妙覚(みょうかく)に登り法界の衆生と同じく妙味を服せん。云々・・・・・。」

簡単に言えば世の無常を感じ、憂い、比叡山に分け入り浄仏国土(じょうぶっこくど)と成就衆生(じょうじゅしゅじょう)を目指されました。浄仏国土とは仏道、法華経を基とした理想浄土の建設であり成就衆生とは理想人物の養成、即ち一隅を照らせる(能(よ)く言って能く行うことの出来る人、ポストにベストを尽くせる人)国宝的人材の養成といわれています。そして菩薩の道をめざし、人のために生きるという決意表明に他ならぬものでした。大師、弱冠十九歳の決意表明でした。成人式に暴れてぶち壊しにするような幼稚な若者とは大違いです。

注目したいのはすべての世界に生あるものは患い、苦しみ、一日として楽しまないと仰っていますが、平城京、南都仏教も相当堕落していたそうでそれらを憂い発願されたといわれていますがが全く今現在我々が住んでいるこの世界のことを言っているように思えてならないことです。イラク戦争ほか各国の紛争、北朝鮮の問題、台風、地震、津波等の災害、豊かさを求めすぎたゆえの地球温暖化現象等の環境破壊。世はまさに末法(まっぽう)というべきでしょう。

三災とは大小の二類があり小は生きものが滅びる(鳥インフルエンザ!?)、刀兵災(戦争)、疾病災(新種のウイルス!?)、飢饉災(紛争による難民!?)の三種。大は世間が破壊される火災、水災、風災といわれています。まさに今現在の様子というほかないでしょう。

延暦25年(806年)1月26日桓武天皇より毎年僧となることを国によって認められている一定数の者を年分度者(ねんぶんどしゃ)といいますが南都六宗に天台を加えて天台からは二名の割り当てを得ました。
まさに天台宗が公認された日というわけで今日を天台宗開宗の日としています。

来年、平成18年1月26日はちょうど1200年目にあたります。

(参考書)「願文」(天台宗教学部発行)、「伝教大師の生涯と思想」(木内尭央著、春秋社)、「わが家の宗教天台宗」(西郊良光、神谷亮秀著、大法輪閣)ほか 

合掌



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