福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

猪鹿蝶

2019-11-11 21:37:27 | 日記
 週末、地域のメッシュ点検作業に加わった。メッシュとは、イノシシやシカが山から農地に入ってこないように、格子状の柵で集落ごとぐるりと囲ったもの。ずぶの素人ながら、手習いで野菜を作っている身として、はり切って参加してみた。
 針金を巻くための用具を班長さん借りて、2班に分かれて山ぎわへ出発。高さ2メートル近いメッシュのつなぎ目の針金の緩みや、隙間の有無などをチェックする。といっても隊員は金魚のふんの地位を確立して、ついて行くだけ。百戦錬磨のおじいさん、おじさんたちが手早く針金を巻き直したり、メッシュとトタンを組み合わせて補修したりするのを、感心して見ている。
 「これを越えてくるシカもおる。たまに失敗して、突き刺さって死んどるのもおるで」。一緒に歩いていた男性が説明する。「まぁ、かわいそうに」と思うのはにわか山里住民の隊員だけ。鳥獣による農作物被害は、この一帯でも深刻だ。シカの鳴き声は朝夕関係なく、山の奥からわが家まで聞こえてくる。
 「万里の長城」のように張られたメッシュ沿いを、ひたすら歩く。作ったときはさぞ大変だったろう。
 80代の男性も藪をこぎながらハイスピードで斜面を歩き、資材をひょいと担いでくる。男性は昨年の西日本豪雨で土砂に埋まった畑も、人の手を借りながら復活させたという。「戦前生まれにゃ、わしらはどうやってもかなわんよ」。60代と思われるおじさんが大声で言う。
約2時間ほど山道、獣道を歩いてクモの巣まみれになったところで、もう一方の班と合流。なんと、合流地点は大規模ソーラーパネル設置のために山林が伐採され、メッシュも倒れていた。「なんやそれ。こんだけフリーで開いとりゃ、シカもイノシシも平気で入ってくるわ」。オチも付いた。
しかし、メッシュの設置も点検も、一人でできるものではない。やはり農業は、共同体を必要とするなぁとしみじみ実感した。隊員がにわかに謳歌している美しい田園風景、サルのように喜んでいる作物の収穫も、地元の人たちのこんな地道な作業に支えられているんだなぁ…。ほぼ戦力外だった隊員はいっちょ前に汗を拭い、差し入れのお茶をぐいっと飲み干した。


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