詩・機械設計・森林蘇生・猫/POETRY/Machine design

杉山を自然林に戻したい。
黒っぽい杉山を見るたびに子供の頃見た青い自然林を想う。山のことのみならず生活ブログです。

妹に送る

2011年10月19日 00時33分32秒 | 
  何処かへ  


冬が終りに近づいたから
何処かへ行こうよ
南へ向かう汽車に乗って
線路の音を聞きながら
窓からは日光が暖かい
いねむりしながら
ゆめを見ながら

南の地方は もう
菜の花が満開だ
こんないい天気には
もんしろ蝶が飛んでいるにちがいないし
椿林にはメジロが群れて
花の蜜を食べているのだ
顔じゅう花粉だらけになって
健康なメジロは
花粉症には縁がなくて

汽車を降りて南の陽射しを受けつつ
海流のあわだつ音に耳をまかそう
子供の頃を思い出して
友達と一緒に居た頃を思い出しながら
海の音の懐かしさにひたって

元気かい
お母さんには
離婚は避けさせるよう伝えたのだけど
思うようにならないのは仕方ないね
世間にはよくある話だとしても
自分らはつらいもんね
こうなったら
自分を打ち立てるだけだから
気分転換だ
付き合いたまえ
出かけよう
菜の花や
椿の咲いているあたり
ふるさとに似た土地を探しつつ
水蒸気の青霞の中に
暖かさは再び訪れるから
ほどけた気分をぽけっとに入れて
うれしい地方に出っくわす
そすれば
君の気持も晴れるよ きっと

残り月水行き鳶の熊野川
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アンソロジーのために

2011年10月18日 10時06分32秒 | 
「たまゆら」


かわのべに
あかとんぼ
とびかうは
ふるさとの
しまんとの
ゆくなつの
ためしなり

おさなきひ
あそびしは
かわのべの
どてのみち
つきみそう
いまもなお
つきまつや

おおかぜは
おさまりて
たのおもの
いろづくを
よろこびて
はらからは
いなごおう

ひさかたの
ふそのやま
ほそみちを
たどりつつ
かたつむり
すみいて
しずかなり
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Anthologieのために

2011年10月17日 12時28分22秒 | 
アンソロジーのための原稿を準備する。
印刷代が思ったより安価らしいので、暇でもあるので
この際一冊にまとめておこう。
これはそのうちの一つだ。



  冬の舞 


九頭竜川を渡った巡礼姿の首
から下げた袋には過去が入っ
ている。
白足袋に草鞋で歩く行路はい
つも雪道。空は晴れたことが
ない。行きずりの河原で火を
起こし飯を食うておると、鳶
が舞う。
九頭竜の冬の空に鳶が舞う。

逃げることがなぜ卑怯である
のか、捨てねばならぬものを
うち捨てただけのこと。世俗
の批判は雑言に過ぎぬ。繁栄
する町の暮らしは文化繚乱豊
かにこころ満たされるものの
筈だったのに人々はやみくも
に忙しく生きる厳しさとはう
らはらの世智辛さだけが鼻に
ついた。不断の辛抱はさんじ
ゅうねんの垢となり肩に積も
り背柱の柔軟性を消した。
きっかけは病いだ。

命の時は一度きりだというこ
とを知らず生命力の勢いに任
せて仕事を己の命の方向と思
い込んで熱を発する永い日々
の連続が突然崩れると人々の
位置の遠さに気づいた人の在
りようは孤独であるとも
病む友の孤独を見過ごすしか
無かった情けなさ無念の後悔
毛皮を採るために生きたまま
皮を剥がれる動物たちのよう
に人もまた理不尽不条理とと
もに在るのだと
命の時の悲しみを、隠してし
まうことができず消してしま
うこともできないということ
にほぞを噛みながらも
うち捨てて
饒舌を避け
今は人の生業を悲しみつつ
存在の様を恨むことなく
勇猛の気のなごりは
鳶とともに
雪の野原で剣の舞を舞う。
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2011年06月20日 02時41分59秒 | 
 「ひいき筋」


「好ましい習慣とはいえません
 やめなさい」
と みゆきが言うので
風呂で歌を謡うのをやめたら
みゆきの洗濯機が動かなくなった

「悪い習慣です やめなさい」
と みゆきが言うので
煙草をやめたら
猫のタローが
みゆきに噛みつくようになった

滝ノ町二丁目の中華そば屋
大将が作ってくれるモヤシそば
みゆきよりも
僕の方が
モヤシが何本も多い

今里橋の下の
淀みに住んでいる亀は
僕と心安い
声をかけると
水の中から顔を出す
みゆきが呼んでも顔を出さない

人生ナカナカ捨てたモンじゃない
僕には
味方がかなり居る



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2011年06月16日 11時07分29秒 | 
  「タロー」



家の一人息子
三月二十六日
三才になった

やって来た日は
手のひらに乗る
あかんぼ子猫
高知の日曜市で
貰って下さい
と言われて
一緒に暮そう
という気になって
京都まで
車に乗って
途中 祖谷(いや)の谷
を歩いたり
剣山に登ったり
道草食い乍ら
渡った瀬戸大橋
七日間一諸に
肩に乗ったり
頭に乗ったり
爪をたてたり
旅をして

やたらと小便
を たれる子猫
家の玄関を入って
廊下を歩くと
その頼りない
よちよち歩きで
動物嫌いの
家の奥さんを
たちまち魅了
マダムキラーは
天性の才能
以来 奥さんは
すっかり夢中

トムとジェリー
外国でトムならば
日本では 由緒
正しきこの名前
タローならまし
日本びいきの
戸主の断定

名前はタロー
ケガしたり
チョット病気になったり
したけれど
おおむね元気で
おおあばれ
趣味か特技か
障子はボロボロ

そして一年
病気の戸主は
聴神経腫瘍
手術で入院
青春期を迎えて
意気盛んなタロー殿
いつものように
障子を破り
「家の中はオレの縄張り
隅からスミまで
まぁきんぐ」
退院した戸主は
致しかたなしと
武田動物病院へ
「キョセイ」
どこでもオシッコ
の特技をひとつ
失ってしまい
子猫のように
なってしまった
タローくん

尾っぽを立てて
向うに歩いて行く
手術前のうしろ姿
おおきな金タマ
白いからシロタマ
プリプリたのもしく
かっこよかった!
今はしぼんで
慎ましく

そしてまた一年
半規管を失った戸主は
平衡感覚が乱れて
歩くとなると
あっちへふらふら
こっちへゆらゆら
リハビリ疲れで
部屋にあぐら
つつましくなった
タローとふたり
二階の窓から
世間を眺める
タローはすっかり
開いたとみえる
悟り。
日がな窓辺で
居眠りしながら
時折薄目をあけて
眺めているのは
行雲飛鳥か
タローびいきの奥さんは
近所のスーパーへ
買い物にゆく







     二〇十一・五・二六










                



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2011年06月09日 16時02分52秒 | 
 「梅雨前線」


玄関を出ようと
ドアを開ける女主人の
雨靴に
タローがじゃれて跳びつく
ツバメが門柱にフンをして
湿度の中 線を飛ぶ
女主人は出かけた

風に桜の葉がゆれる
傘を買いに行く

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