タローが死んで5年過ぎた。
あの頃体を壊して、自分で治そうと、四国山脈に入っていって10日間の断食をして、
高知の街に降りてくるとその日は日曜市で、大手前高校と土佐女子高校の間の交差点に
お母さんと女子小学生に連れられて、2匹の兄弟とともにタローが、段ボール箱に
入っていた。
まだ生まれて46日目だそうで、箱の中で無邪気だった。
一緒に暮らそうという気になってタローを選んだ。
それから13年と11か月一緒に暮らした。
猫と暮らすのは初めてのことで、
タローとの付き合いは付き合い方にいろいろ間違いがあったように思う。
タローごめんね。
今はミッコと一緒です。
*************************************************************************************
「タロー」
家の一人息子
今日三月二十六日
三才になった
やって来た日は
手のひらに乗る
あかんぼ子猫
高知の日曜市で
貰って下さい
と言われて
一緒に暮そう
という気になって
京都まで
車に乗って
途中 祖谷(いや)の谷
を歩いたり
剣山に登ったり
道草食い乍ら
渡った瀬戸大橋
七日間一諸に
肩に乗ったり
頭に乗ったり
爪をたてたり
旅をして
やたらと小便
を たれる子猫
家の玄関を入って
廊下を歩くと
その頼りない
よちよち歩きで
動物嫌いの
家の奥さんを
たちまち魅了
マダムキラーは
天性の才能
以来 奥さんは
すっかり夢中
トムとジェリー
外国でトムならば
日本では 由緒
正しきこの名前
タローならまし
日本びいきの
戸主の断定
名前はタロー
ケガしたり
チョット病気になったり
したけれど
おおむね元気で
おおあばれ
趣味か特技か
障子はボロボロ
そして一年
病気の戸主は
聴神経腫瘍
手術で入院
青春期を迎えて
意気盛んなタロー殿
いつものように
障子を破り
「家の中はオレの縄張り
隅からスミまで
まぁきんぐ」
退院した戸主は
致しかたなしと
武田動物病院へ
「キョセイ」
どこでもオシッコ
の特技をひとつ
失ってしまい
子猫のように
なってしまった
タローくん
尾っぽを立てて
向うに歩いて行く
手術前のうしろ姿
おおきな金タマ
白いからシロタマ
プリプリたのもしく
かっこよかった!
今はしぼんで
慎ましく
そしてまた一年
半規管を失った戸主は
平衡感覚が乱れて
歩くとなると
あっちへふらふら
こっちへゆらゆら
リハビリ疲れで
部屋にあぐら
つつましくなった
タローとふたり
二階の窓から
世間を眺める
タローはすっかり
開いたとみえる
悟り。
日がな窓辺で
居眠りしながら
時折薄目をあけて
眺めているのは
行雲飛鳥か
タローびいきの奥さんは
近所のスーパーへ
買い物にゆく