詩・機械設計・森林蘇生・猫/POETRY/Machine design

杉山を自然林に戻したい。
黒っぽい杉山を見るたびに子供の頃見た青い自然林を想う。山のことのみならず生活ブログです。

梅雨

2006年09月22日 15時14分08秒 | 文芸
 これも5年前の詩               

            梅 雨

         雨が降るからとて
         歩きながら雨の歌を
         唄わねばならんというものではなかろう
          と おふくろが言う

         それはそうじゃが
          と 儂が言う
         歌を好きじゃというからは
         歩きながら雨の歌を唄えば
         気が晴れるじゃろう
          と 儂が言う

         雨の歌を唄うたとて
         ずぶ濡れの雨の中で
         気が晴れるわけは無かろうが
          と おふくろが言う

         突然久しぶりの帰省で
         昨夜はいろいろ叱られて
         朝からジャジャ降りだというのに
         にわかの墓参りの道すがら
         次々と追い抜いて行く自動車の音を気にしながら
         危なげの無い足元の濡れを
         見ながら
         儂は歩く
         燕が飛ぶ

         親父は無口な八十歳
         雨足は大粒になるばかり
         うつむいているのではないが
         視線を落とし気味に
         雨の中を三人で歩く

                          2001年6月
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季節風の中の人

2006年09月22日 14時35分36秒 | 文芸
 5年前の詩です。

           季節風の中の人

      初夏の頃
      南からの高気圧は
      山の向こうから この地方に
      不意に 乾燥した熱風をもたらす

      だれもが忘れたころ
      虚空から乾いた鵺が襲いかかり
      留守の間に
      子を殺す
      誰も気付かぬうちに
      ある日突然途絶える命
      帰宅して初めて知った 子の不在

      子を殺された者の
      眼から出た水は
      涙にならず行き場も無い
      その水溜りは
      虚空の風に吸い取られる

      子を殺したあの風
      風は海に去り うそぶき
      かつて渦巻いたことなど
      見知らぬ汀でかってに消してしまう

        カタキヲウチタイ
        アノ子ノカタキヲ
        ヌエカ鬼カ
        悪魔カ知ラヌガ
        赦ルスカ!

        不眠ノ夜ゴト大脳ニ噛ミツク
        コノ悔シサ  コノ虚シサ
        ウツケタ法律ガ破壊シタもらる
        奴ヲ庇イオル虚構ノ人権ナゾ
        打チ倒ス!
        真ッ向空竹割リニ!
        打チ倒シタ後 俺ハ死ノウ

        シカシ わタくシハ 刀ヲ持タぬ
        ヒトハ理性ヲ ワタくシに説ク

      忘れようとして 忘れるべしとして
      秋風を待ち
      やがて秋風がやって来た 

      秋風が吹き 忘れられぬ子の顔を
      風の中に視線で探る無意識の頃
      ローソクの消えた過労の夜
      傍らに横たわる山椒の枝に
      殺された子の顔が
      結露する
      明日も仕事があるのだが

      助けてやれなかったことを
      再び詫びる
      暗闇の中で
      涙をながしながら

                         2001年6月

上の詩は大阪、池田市の小学校で起きた小学生8人殺し事件の犠牲者の、まだ若い父親の感懐によって醸された。犯人は既に死刑になってもう居ない。被害者の遺族の方々の癒されることを祈るばかり。










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