先日の休みに映画を観てきた。
ジェイコブ・サルヴァーティ主演のドラマ、"リトル・ボーイ 小さなボクと戦争"だ。
監督はメキシコ出身の若手クリエイター、アレハンドロ・モンテヴェルデ氏。
同氏が本作の脚本も手がける。
原題は"LITTLE BOY"。
キャッチコピーは、"パパは、ボクがきっと呼び戻すんだ――"
当初、まったくチェックしていなかった作品だが、
予告編を観ると、第二次世界大戦、太平洋戦争の末期、
日本と戦うアメリカの田舎町が舞台で、父親が戦争に行ってしまい、
その父の帰りを待ち続ける少年の物語。
ありふれた戦争モノのようだったが、主要人物に日本人が登場する。
当時、敵国の人間だと迫害されていた、アメリカに移住していた日系人。
少年とふれ合う日系人の老人との物語でもあった。
これは観たい!
ところが、この映画、公開期間がほんのわずか。
先日観た映画、フラワーショウ!も同じく、ほんのわずかな期間だけの上映だった。
仕事帰りに映画を観ることもできるが、この二作品とも昼間に一日一回きりの上映。
上映期間中の自分の休みはたった一日。
どちらかを観て、どちらかは諦めなければならなかった。
そうして天秤にかけて、フラワーショウ!の方を観たのだが、
そのときの記事にも書いたけれど、非常に残念な内容で後悔していた。
そんなとき、急遽病院へ行くために休む羽目になり、
怪我の功名、この映画を観に行く機会ができた!
そんなわけで、公開終了間際に鑑賞にこぎつけた。
第二次世界大戦中のアメリカ、カリフォルニア州にある小さな漁村、オヘア※。
そこに暮らす少年、ペッパー(ジェイコブ・サルヴァーティ)は、
同年代の他の子たちよりも背が低く、皆から"リトル・ボーイ"と呼ばれ、いじめられていた。
ペッパーのただ一人の理解者は、父親のジェイムズ(マイケル・ラパポート)。
ジェイムズはどんなときでも、ペッパーの味方でいつも励ましてくれる。
大好きな奇術師のショーも一緒に観に行き、冒険ごっこも一緒にやる。
ジェイムズは、ペッパーを"相棒”と呼び、父子の絆は深かった。
ペッパーの歳の離れた兄、ロンドン(デヴィッド・ヘンリー)が、
偏平足を理由に軍の入隊審査に落ちてしまう。
ロンドンの代わりに、ジェイムズが徴兵されることになってしまった。
大好きな相棒が戦争に行ってしまう・・・。
出征の日、ペッパーはジェイムズにすがり付いて離れない。
ジェイムズは「すぐに戻ってくるさ!」そう言って、軍のバスに乗り込む。
ジェイムズが欲しがっていたブーツを買い、
奇術師のショーのチケットを二枚買い、ペッパーは帰りを待つ。
ところが、家族の元に、ジェイムズがフィリピンで日本軍と交戦し、捕虜になったとの連絡が届く。
絶望の淵に立たされる、ジェイムズの妻、エマ(エミリー・ワトソン)。
自身が軍に入れなかったことを悔やむロンドン。
相棒はきっと帰ってくると信じて疑わないペッパー。
アメリカではこの頃、開戦から強制収容所へ入れられていた日系人たちが、
アメリカへの忠誠を誓う者限定で釈放されていた。
ペッパーの住んでいるオヘアにも、ひとりの日系人が居た。
海岸沿いの古い家にひとりで住んでいる老人、ハシモト(ケイリー=ヒロユキ・タガワ)だ。
「ジャップがこの町に居るよ!」
相棒を捕虜にした憎き日本人、許せないペッパーは兄のロンドンと共に、
ハシモトの家へ向かい、「ジャップはこの町から出て行け!」
そう叫びながら石を投げる。
ハシモトの家を襲撃した罪で、兄のロンドンは留置所へ入れられる。
ペッパーもまた、町の教会へ連れて行かれ、司祭から説教されることに。
日系人にも理解を示すオリバー司祭(トム・ウィルキンソン)は、
戦争から戻ってこない父親を想うペッパーの気持ちを汲んで、優しく説く。
「信仰の力が神様に届けば、願いは叶うかもしれない。」
そういって、古くから伝わるという善行のリストをペッパーに手渡す。
・飢えた人に食べ物を
・家なき人に屋根を
・囚人を励ませ
・裸者に衣服を
・病人を見舞え
・死者の埋葬を
オリバー司祭はこのリストに、手書きでひとつ項目を書き加える。
・ハシモトに親切を
「心に憎しみがあれば願いは叶わない。」
まずはハシモトに謝り、仲良くなりなさいというオリバー司祭。
相棒を捕虜にしたジャップと友達だなんて!?
それでもペッパーは相棒に帰ってきて欲しいという願いを叶えるため、
嫌々ながらハシモトの家を訪ね、石を投げてガラスを割ったことを謝る。
だが、ハシモトはペッパーのことを相手にしない。
何度も何度もハシモトの家を訪ねるペッパー。
とうとうハシモトから家に入れてもらえる。
話を聞くと、ハシモトはとても親切で、いろんなことを教えてくれる。
それに、リストを埋めるのを手伝ってくれた。
だけど町中を一緒に歩いていると、周囲から「裏切り者!」と罵声を浴びせられる。
「戦争が終われば兵たちは帰還できる。」
ニュースでそう聞いたペッパーは、早く戦争を終わらせたいと願う。
ペッパーは奇術師のショーで、舞台で念じてビンを動かす(トリック)ことができた。
それと同じことをして、山も動かせた!(偶然地震が起きた)
きっと念じれば、戦争だって終わらせられるはず!
そうすれば捕虜になっている相棒も帰ってくる!
ハシモトに日本の方角を教えてもらい、毎日、日本に向けて念じ続けるペッパー。
以前、山を動かしたときから、町で有名人になっていたペッパー。
毎日太平洋に向かって念じる光景にも、ギャラリーが日に日に増えていた。
ある日、ペッパーが出かけると、町じゅうの人が歓喜でペッパーを迎える。
「リトル・ボーイ!やったぞ!!」「リトル・ボーイ、お手柄だ!!」
ペッパーは、いじめっ子のみならず、町じゅうの人から"リトル・ボーイ"と呼ばれていた。
ひとりのおばさんが、ペッパーに新聞を見せながら記事を読んでくれた。、
「日本の広島に未知の兵器、原子爆弾"リトル・ボーイ"が投下され、消滅させた!」
これで戦争が終わる!
ペッパーを取り囲んだ人々が喜んでいた。
ペッパーも喜び勇み、周りの人々に手を振りながら自転車をこぐ。
・・・だが、ハシモトと会ってペッパーは考え込む。
原子爆弾によって日本の都市ひとつが消滅し、多くの人々が一瞬にして亡くなった。
「ボクは悪いことをしたの?」
それでもハシモトは優しくペッパーを抱き寄せ否定する。
町の人から車に落書きされ、家を荒らされ、暴力を受けて一時は命も危なかったハシモト。
それでも彼は屈することなく、この町に住み続けた。
戦争が終われば、相棒はすぐに帰ってくる・・・。
ペッパーはそう思っていたのだが、原子爆弾のニュースを知ってエマとロンドンは深刻になる。
「捕虜となっているジェイムズの立場が悪くなるかもしれない・・・。」
喜んだのもつかの間。ペッパーも相棒が無事に帰って来れるのか不安になる。
はたして、ジェイムズ・・相棒は、無事に生還できるのか?
戦争が終わって、一家が元の生活に戻れるのか?
面白かった。
戦争モノだけど、戦地ではなく、その家族や周囲のひとの物語。
しかも、敵対する国の人間も身近に居るという複雑な環境。
そんななかで、純粋な少年が、健気に父親の帰りを待ち続け。
その願いを叶えるために、一心不乱に頑張る。
泣くほどのものではないが、涙ぐましいストーリーではある。
主要キャラとして日系人が登場し、
戦時中の情勢らしく、非難を浴び容赦のない暴力にさらされる。
「ジャップ」「イエロー」と物を投げつけられ、
店に入っても物は売ってもらえず、注文も聞いてもらえず、
この描写に苦言を並べているレビューを多数見かけるが、
自分は戦時下においてそれはそうなっちゃうだろうと観ていた。
現実はもっとひどかったに違いない。
バンクーバーの朝日とか、他にも戦時下の日系人を題材にした映画があったと思うが、
どれもやっぱりこんな感じだったのだろう。
フィリピンでの戦闘シーンも有り、数人の日本兵が登場する。
また、ハシモトがペッパーに話して聞かせる侍の話のなかで、
実際に侍が殺陣をするシーンもある。
それぞれ名前もないような端役達だけど、
ちゃんと日本人を使い、ちゃんとふつうに聞こえる日本語で喋っていたので感心した。
大抵、中国人や韓国人が充てられて、カタコトの日本語台詞を言わせてしまいがち。
ハシモトの家の日本の調度品も、どれもちゃんと日本のもので、
それ中国のだろ?インドのじゃね?とか、突っ込み入れなくて済んだし、
侍のシーンの刀や鎧兜なども、あっちの勘違いデザインじゃなく、
違和感なく、きちんとしており、日本のディテールはかなり丁寧に作り込まれていた。
もっと大々的に宣伝して、多くの日本人に見せるべき映画だと思う。
物語はフィクションだけど、健気な少年の信じる心と家族の愛情、
そして、敵国の人間との友情などが丁寧に描かれていて、
戦争映画なのに、ハートウォームな映画だ。
原爆投下で歓喜するアメリカ人の姿に、複雑な思いもよぎる。
これは、観ることができて本当によかった。
ただ個人的に、戦争の描写よりも、ハシモトが迫害される描写よりも、
ペッパーを執拗にいじめる、悪ガキのボスのデブ。
MOTHER2のポーキーを彷彿とさせる嫌なキャラクター。
あいつに殺意を抱いてしまった・・・。
※この映画オリジナルの架空の町
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