“ライフ~いのちをつなぐ物語~”を観に行った。
実はドキュメンタリー映画を観るのは今回が初めて。
「アース」「オーシャンズ」「ディープブルー」など、これまでも自然と野生動物をテーマにした、
ネイチャー・ドキュメンタリー映画はいくつか公開されているが、
その都度 観たいとは思ってはいたが、
「プラネットアース」や、「生き物地球紀行」など、
イギリスBBCがメイン制作する、普通にNHKなどで放映される、
ネイチャー番組の拡大版だろう?ぐらいにしか考えていなかった。
ウェッデルアザラシの親子
しかし、全然違った。
松本幸四郎・松たか子、父娘のナレーションで、
“いのちをつなぐ”をテーマに、世界中で最新の映像機器を用いて撮影された、
臨場感と躍動感溢れる野生動物の映像が、淡々とオムニバス形式で流される。
温泉に入ることが許されず、身を寄せ合って震える、下位の群れに属するニホンザル。
能書きが凄い。
「製作期間6年,総制作費35億円。
地球上の全大陸で撮影、陸・海・空すべての動物を捉えた、
BBC史上最大のネイチャードキュメンタリー」
「あなたの生き方を変えてしまうほどの、100%の真実」
「地球制覇」
実は“いのちをつなぐ”という意味を取り違えていて、
食物連鎖のことを挿しているのだと思っていた。
なので、生き物の捕食シーンがメインの映像だと思っていた。
実際には、種を保存するため生きるための、“食”,“性”,“愛”。
“いのちをつなぐ”とは、先祖から授かった自分の命を守り、
新たな命を生み育み、末代まで繋ぐという意味だった。
イチゴヤドクガエル
哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,魚類,昆虫(節足動物),軟体動物,植物・・・。
あらゆるジャンルの生物、メインに24種類※がピックアップされ、
新たに発見された生態、世界で初めて撮影に成功した貴重映像などもあり、
よく知られた動物の生態であっても、動物目線の斬新な撮影手法で、
とても見応えのある映像ばかりだった。
以下にいくつかピックアップして紹介する。
「掟破りのチームプレー」
チーター(Acinonyx jubatus)
言わずと知れた、地上最速のハンター、チーター。
停止状態からわずか3秒で走るスピードが100km/hに達し、その加速力はフェラーリに匹敵するという。
ただしスタミナがなく、そのスピードを維持して走行できるのは200mにも満たない。
ほんの刹那で仕留めないと、狩りは失敗に終わってしまう。
通常、単独で狩りを行うチーター。
そのため狙いを定めるのは、自分よりも体の小さなウサギやガゼル程度。
だが、今回カメラが捉えたチーターは三姉妹で協力して狩りをする光景。
成獣のチーターが複数で狩りをするのは極めて珍しいらしく、世界初の映像だそうだ。
チーターよりも数倍 体が大きいダチョウのつがいが、
チーター達の目の前を悠々と通り過ぎる。
襲われないことを知っていて油断していたダチョウ、
だが三姉妹チーターの掟破りのコンビネーションで、哀れ・・メスが餌食に。
オスはただただ甲高い鳴き声をあげながら、むさぼられるメスの周りを歩くだけ。
「代々受け継ぐ台所と石」
フサオマキザル(Cebus apella)
南米に生息する知能の高い小型のサル。
古くから道具を使用することが確認されており、
ナッツを割るために石と土台となる石台を用いたり、
棒で木の幹を叩き、反響音で中に潜む虫を探し出したりと、
チンパンジーに匹敵する高い知能が確認されている。
映画に登場する群れは、深い渓谷に住み、
大好きな硬いヤシの実を、先祖代々受け継ぐ石台に乗せ、
これまた先祖代々使用してきた石を両手で抱えあげ、
勢いをつけて振り落とし、ヤシの実を器用に割る。
石は長年のフサオマキザル達の指の脂で表面がスベスベし、
握る部分には錆まで出来ているという年期の入り具合。
ただし、ヤシの実を割れるようになるのに8年はかかるという。
若いサルは、石をうまくヤシの実に命中させられず苦戦している。
子ザル達は見よう見マネで、小石で大人達のマネをする。
それがぎこちなくて、指を挟みやしないか誤って後ろ足に落としやしないか、
観ていてハラハラしてしまった。
このフサオマキザルの石を持ち上げる動作、
古くから生物学者達から注目され、二足歩行に移行し道具を多様し、
急速に知能を発達させるきっかけではないかと、今も深く研究が進められているそうだ。
「愛の審査のシンクロダンス」
クラークカイツブリ (Aechmophorus clarkii)
ヘンテコな求愛ダンスで有名な、北米に生息するクラークカイツブリ。
繁殖時期になると、オスがメスの元へ近付いてくる。
映像に出た二羽は、昨年つがいだったペアが再会したもの。
メスはオスを審査する。
審査内容は、“ダンス”。
くちばしで水をすくう,羽毛をくわえて放す、
これらをメスの動きに合わせ、メスオス交互に行う。
そしてダンスのラストは、忍者もびっくり水上走り!
メスと同じ速さ、同じ歩調、同じ首の角度と背筋・・・寸分違わず走る!
メスは突然、進行方向を変えることもあるらしく、オスもそれに即座に反応する。
ダンス審査に合格すれば、次のステップへ――。
この後も、魚のプレゼントから、巣作りにかかせないヨシの調達など、
メスの厳しい審査は続いていく・・・。
自分の子孫をより多く残すため、
少しでも強いオスの遺伝子を求めるメスの本能がそうさせるのだろう。
ここからは、先にこの映画をブログ記事にされた、れいなさんからのリクエスト。
「精密捕虫センサー」
ハエトリグサ(Dionaea muscipula)
食虫植物としてウツボカズラやモウセンゴケと並び有名な、
ハエトリグサ(ハエトリソウ/ハエジゴク)。
茎の先端に二枚貝のように、二枚の葉を付け、
その葉の縁には、パックンフラワーのように牙のような櫛がある。
葉の内側の表面に極小の感覚毛が三本備えられている。
葉の内側でハエを誘因する粘着性の甘い蜜を分泌し、
獲物である羽虫(主にハエ)が、この二枚葉の内部に侵入する。
夢中になって蜜を舐めていると、体が感覚毛に触れる。
1本目の感覚毛に触れ、次、2本目の感覚毛に触れた瞬間、
0.5秒という恐るべきスピードで、この葉を閉じて獲物を包み込む。
同時に縁にある牙のような櫛は内側に曲がり、
格子のように葉の隙間を塞ぎ、獲物が脱出できないようになる。
獲物を捕獲すると、分泌物が蜜から消化液に変わり、
ゆっくりと時間をかけて、獲物を消化し養分を吸収していく。
養分を吸収し終えると、再び葉を開き死骸を捨てて、次の獲物を待つ。
感覚毛に二回触れてトラップが発動するのは、水滴などでの誤作動を防ぐためだとか。
最初の感覚毛の感知から、約20秒経つとトラップシステムはリセットされる。
このメカニズムは未だ解明されていない。
「嫁姑も仲むつまじく子育て」
アフリカゾウ(Loxodonta africana)
陸上最大の生物、アフリカゾウ。
メスは群れで移動しながら生活し、
姑や姉妹従姉妹も一緒になって、群の子象の面倒をみる。
仲間意識が強く、子象が危機に陥ると、
我が子でなくても助けようと必死になる。
劇中では、生後間もない子象が水辺のぬかるみにはまってしまう。
母親が一生懸命助けようとするが、
うまくゆかず、子象はどんどん深みにはまっていってしまう。
見かねた姑にあたる、おばあちゃんゾウがやってきて母親の加勢をし、
子象は泥だらけになりながらも救出された。
同じく泥まみれになった母親ゾウが、助けられた我が子を愛おしむように鼻で撫でる。
水分補給を終えた群れは、また新たな餌場を探して移動する。
子象は母親達の後ろを小走りに追いかけてゆく。
「やるときゃやる!頼もしいお父さん」
ニシローランドゴリラ(Gorilla gorilla gorilla)
映画“キングコング”や、ゲーム“ドンキーコング”などでおなじみのゴリラ。
それらで描かれるものと異なり、実際のゴリラは極めて温厚で争いを嫌う。
胸を叩く威嚇行動(ドラミング)も、争いを極力避けるための行動。
これ、実は握り拳で胸を叩くのではなく、平手で叩いて音を出している。
島木穣二もビックリだ。
劇中では、やんちゃ盛りの子どもに、
腹に乗っかられ、頭をポカスカやられ、
どんなにちょっかい出されても、特にかまってやるわけでもなく、
ゴロリと寝そべって、まるでヒトの休日のオヤジ状態で、
子供の面倒をみている?お父さんゴリラ。
だが、ゴリラ父子に緊張が走る。
他の群れのオスが、この父子の縄張りへ近寄ってきているのだ。
即座に起き上がり、息を殺して辺りの気配をうかがうお父さんゴリラ。
次の瞬間、二本足で立ち上がって勢い良くドラミングする。
するとそれに反応して、相手のオスもドラミングを返してくる。
しばらくドラミングの応戦が続く。
不安そうに見守る子ども達。
やがて相手からのドラミングが途絶える。
お父さんゴリラは争うことなく、近寄ってきた群れを追い返し子供達を守ったのだ。
相手の気配がなくなり、すっかり安全になったのを確認すると、
お父さんはまたゴロンと横になる。
※写真のフィギュアはハキリアリ,アリタケとは異なります。
劇中のシーンを再現したイメージです。
「キノコ栽培プランテーション」
ハキリアリ(Atta cephalotes)
主に南米に生息するハキリアリ。
働きアリ達は、虫の死骸を探すわけではなく、落ちている粉砂糖を探すわけでもなく、
ただ一心不乱に、雑草の葉茎を噛み千切り巣穴まで運ぶ。
だが、ハキリアリはこれを食べることはできない。
モコモコとした蟻塚の奥底に、絶え間なく運び込まれる植物の葉。
そこでは、腐敗した植物を菌床にキノコが栽培されているのだ。
アリタケ(蟻茸)と呼ばれるこのキノコ、ハキリアリの巣でしか見つからない。
ハキリアリはアリタケを直接、食べるのではなく、
胞子に含まれる糖分をいただく、それがハキリアリの主食となる。
アリタケは他の生物からの食害や菌類からの浸食をハキリアリに守ってもらう。
ハキリアリとアリタケは相互共存関係にある。
ハキリアリの働きアリには大中小と3サイズ3役あり、
葉を切り取って巣穴に運ぶのはミドルサイズ働きアリ。
巣を外敵から守るため、警護するのがラージサイズ働きアリ。
巣穴の奥で、運ばれてきた葉を更に細かく刻み、
キノコの栽培・世話をするのが、スモールサイズ働きアリ。
役割分担もきちんとされている、完璧な社会が築かれている。
「浅瀬に描かれる追い込み漁の跡」
バンドウイルカ (Tursiops truncatus)
人なつっこく、高い知能を持ち、
水族館のイルカショーなどでもおなじみの、バンドウイルカ。
アメリカでは軍用訓練されたイルカも居て、実戦にも使用されるほど知能が高い。
そんなイルカ、群れによって狩り(漁)の仕方も様々。
魚の群れを追いつめてから、四方八方からどんどんと補食するのが通常のスタイル。
だが、劇中に登場したフロリダ湾の群れはちょっと変わった方法で漁をする。
上空からみると、浅瀬の海底に無数の円が描かれていた。
イルカ達が、尻尾を海底にこすりながら円を描いて泳ぐ。
海底の泥が巻き上げられ土煙が生じる。
円の内部には魚の群れ、土煙から逃げるように泳ぐ。
描く円の直径をどんどん狭めて行くと、
土煙に囲まれてしまい、行き場を失った魚たちが水面にジャンプしてくる。
待ってましたとばかりに水面に顔を出して、大口を開けてダイブしてくる魚をキャッチする。
捕まえようとせずとも、魚の方からどんどん口の中へ入ってくる。
この海域のイルカの群れに、ずっと前から伝承されている漁方だという。
まだまだ他にも紹介したいのがたくさん居るが、この辺で。
れいなさんが紹介していたものと合わせると、半数も紹介している。
よほど生き物好きでない限り、途中で眠くなってしまうに違いない。
年配の人達は、その都度「へぇ~!」「ほぉ~!」とか、感心・感嘆のため息やうなり声を上げる。
うちの お母んも、こういうテレビ番組を観ると、
「ほぉ~・・見てん あれ!すごいばい!!」とか言うが、
いちいちうるせえ!一緒に見ようやんか!と怒鳴りたくなる。
つい買ってしまった、イチゴヤドクガエルのキーホルダー。
大きめのダイキャスト製でしっかり作られていて、かなり豪華。
値段もそれなりに高かったが。
映画館では既に予告編が見られるが、
来年春には、日本に限定したネイチャードキュメントが公開されるようだ。
タイトルは“日本列島 いきものたちの物語”。
ニホンザルをはじめ、ニホンカモシカ,キタキツネ,イノシシ,ゴマフアザラシなど、
日本で見られる野生動物ばかりを取り上げ、「家族愛」をテーマに撮影中だとか。
これもまた楽しみである。
ああ、しかし生き物はいい。
自然はいい。
パソコンのモニタに飛んでくる、名も知らない小さな虫にも、
今までずっと種を存続させてきたドラマがあり、
地球上で、全てのいのちは“つながっている”。
前売り特典でもらった、“アニマルバンド”。
動物の形した、輪ゴムのセットだ。
“つなぐ”とかけて、輪ゴムにしたのだろう。
“ハリウッドで大ブーム!”とか書かれているが、
どう考えても誇大表現し過ぎだろ。
アニマルバンドのなかに、どうしても何なのか判らないのがひとつ。
封入されていた紙切れには、“ハキリアリ”と書かれていた。
どう見りゃこれがハキリアリに・・・・?
通常、演じた俳優さん達の名前が連なるキャスト欄に、
この映画では登場した生き物たちが表示されていた。
主に登場した生き物は全部で36種類。
それ以外のも含めるとかなりの字数になりましたね\(°□°)/
そんな事まで言ってたかな?ってぐらい詳しくて驚きました。
ダチョウのオスの途方にくれた様な悲しげな目が印象的でした(TДT)
カエルのグッズやはり購入されたんですね(*´∀`*)
リクエストに応えるべく、フィギュアを集めていたらこんなに経ってしまいました。
“ハキリアリ”だけはどうしても見つけられず、フツーのイタズラおもちゃのアリを用いました。
記事のなかには、劇中で語られていないことを付け加えているのもあります。
特にハエトリグサは自分でも栽培していたことがあって、まだまだ書きたいことがあったのですが、
めちゃくちゃ長くなるので、あそこで留めました。
ヤドクガエルちゃんは、現在、冷蔵庫にぶら下がっております。