昨年の1月、およそ一年前に観た映画、
堤真一,岡村隆史 主演の時代劇コメディ、"決算!忠臣蔵"。
監督は、"殿、利息でござる!"の中村義洋氏。
原作は山本博文氏の著書、"「忠臣蔵」の決算書"。
キャッチコピーは、"討ち入り、やめとこか!"。
日本の冬(年末)の風物詩、忠臣蔵。
大石内蔵助(おおいしくらのすけ)を中心とした、赤穂の浪士47士が、
主君の無念を晴らすため、仇討を果たすという物語。
江戸時代に実際に起こった、元禄赤穂事件を元にした大人気の物語。
過去、幾度となくこの物語が映像化され放映されたが、
その最新作が、これまでとは異なる視点で忠臣蔵を描いて話題となった。
武器防具はもちろん、移動の交通費に宿泊費、
江戸に潜伏するにも、家賃に食費と日々の生活費も必要で、
討ち入りするには何かとお金がかかる!
忠臣蔵の物語、吉良邸討ち入りにかかる財政面にスポットを当て、
これまでフューチャーされることのなかった、
四十七士とは別の裏方の人物も取りあげられ、それを面白おかしく描いた作品。
個人的にも大好きな忠臣蔵のお話。
しかも好きな俳優、堤真一が主演ときた。
さらには、これまた大好きな芸人、ナイナイ岡村も主演ときた。
監督の過去作品、殿、利息でござる!もそこそこ楽しめたし、
この、決算!忠臣蔵、観に行かない理由なんてなかった。
忠臣蔵らしく、公開は年末前の11月だったのだが、観たのは年が明けてからだった。
赤穂藩、第三代藩主、浅野内匠頭(あさのたくみのかみ:阿部サダヲ)が、
江戸城 松ノ大廊下で起こした刀傷事件。
将軍、徳川綱吉の命により、内匠頭は即日切腹、赤穂藩はお取り潰しとなる。
赤穂藩では、大評定が開かれ、藩士たちの意見が割れて対立していた。
幕府の処分に素直に応じて、城を明け渡すと主張する者。
籠城して全員切腹して殉死し、抵抗の意を示すべきとする者。
内匠頭の無念を晴らすべく、江戸へ行き、なんの咎めもなかった、
仇である吉良上野介(きらこうずけのすけ)を討ち取るべき!と主張する者。
藩政を仕切るべき、筆頭家老の大石内蔵助(堤真一)。
真っ二つに割れた意見のなかで大きく悩むも、
お家再興の希望を持ち、とりあえずは幕府の処分に応じることに。
とはいえ、大勢の藩士たちが突如として路頭に迷うことになり、
厳しい藩の財政からその割賦金(退職金)を工面しなければならず、
貸付金の回収などして資金調達など、大量の残務整理に追われることに。
残務処理のさなか、お家再興は叶わず。
けっきょく内蔵助は討ち入りを決める。
藩の財政をあらためて見なおし、割賦金の調達が終わり、
討ち入りにかかる費用を工面する。
ここで大きな資金源となったのが、
内匠頭の正室、搖泉院(ようぜんいん:石原さとみ)の化粧料(嫁入り持参金)だった。
それを討ち入り資金として拝借し、どんどん浪費してゆく。
勘定方(財務担当)で内蔵助の幼馴染みだった矢頭長助(岡村隆史)が、
内蔵助を裏で支援すべく、僅かな資金をやり繰りしてやるものの、
内蔵助のみならず、他の藩士達の金の使い方も粗く、とうとう底をつき始める資金。
リストラのために討ち入り藩士を絞り込み、宿泊費や家賃を削るため討ち入りする日時を前倒し。
武器や装束も必要最低限に、そばに天ぷらはのっけないように・・・。
そうして、ようやっと討ち入りにこじ付けるのだが、討ち入りを妨害しようとする者が居り、
内蔵助の命が狙われる・・・!
面白かった。
だが、つまんなかった。
ひとつの時代劇コメディとして観ればまあまあ面白かったけれど、
これが忠臣蔵として観ると、まるでつまんなかった。
前置きが長くて冗長で、けっきょくだらだらとしたそのプロセスだけで、
最後まで物語の結びが描かれなかったみたいな。
忠臣蔵なんて誰もが知っているから、討ち入りシーンも切腹シーンもなくてもいい。
そもそもこの映画は、討ち入りにかかる費用と、
それをやり繰りするエピソードを主体にした物語であり、
ちゃんとした忠臣蔵を観たけりゃ、他の作品を観なさいってことなんだろう。
・・・が、紆余曲折してようやっと討ち入りにこじ付けて、
あそこまで引っ張っておきながら、討ち入りシーンがないのはやっぱり拍子抜けしてしまう。
登場人物が無駄に多い。
この監督の癖なのかもしれないが、個性豊かなキャラを無数に登場させる。
殿、利息でござる!でもそうだったが、メインキャラだけでも10数人を超える。
この決算!忠臣蔵はそれをはるかに超える人数が登場し、
それぞれが主演のふたりに何らかの形で絡んで、たびたび登場するもんだから、軽く混乱する。
観る側がスムーズに鑑賞でき、物語のテンポも良くするなら、
登場人物をもっと絞るべきだし、大半はチョイ役にしてもいいはず。
その登場人物が、吉本絡みなのも気になった。
俳優さんに混ざって、多くの吉本芸人が登場する。
主演の岡村隆史はいいとして、西川きよしや、,村上ショージ,板尾創路ら他数名も登場。
客ウケを狙ったキャスティングかもしれないが、どうしても吉本が大きく絡んでいるとしか思えない。
ここまでゴリゴリに参加させちゃうと、芸人好きでも辟易してしまうだろう。
俳優陣が豪華過ぎる。
笹野高史,西村まさ彦,大地康夫,近藤芳正,寺脇康文,滝藤賢一,
荒川良々,妻夫木聡に濱田岳、女優さんでは、石原さとみに、
そして、昨年惜しくも他界してしまった、竹内結子さん。
三谷幸喜監督作品並に豪華なキャスティング。
俳優群像劇が好きなひとならば、登場人物が雑多でも楽しめるかもしれない。
ただ、芸人のみならず、ジャニタレやアイドルなんかも含まれているので、そこは注意が必要。
それぞれ悪い演技ではなかったけれどね。
堤真一はおもしろい。
濱田岳とのやり取りは笑えるし、まず緊張感がまったくなくて、
本当に大石内蔵助なのかと、最後まで気になった。
まあ、周りを油断させるため、わざと酒と遊女遊びに耽っていたという逸話があるくらいなので、
実際、これくらいへらへらして頼りないくらいのキャラクターが合っているのかもしれない。
逆に、芸人である岡村隆史が、いっさい笑いのない、
堅物で真面目なキャラクターを演じていたのが意外だった。
へらへらした堤真一を厳しくあしらう、女房役といった感じだった。
岡村演じるこのキャラクターは最後までシリアスで、
コメディであるこの作品のなかじゃ違和感があったくらい。
石原さとみの豪華な和装姿は素敵だった。
このひと、CMなんかでよく観れど、実際、演技を観たのは初めてだったかもしれない。
ぷっくり唇が魅力的なきれいなひとだなあと、あらためて思ったが、
昨年、ついに結婚してしまったんだよなあ。
こうなると、あと残っているのが深キョンと長澤まさみ、ガッキーか。
大石内蔵助の正室、りく役に、故・竹内結子さん。
いつもながら、強気でしっかりとした女性を凛として演じておられた。
残念ながら、この決算!忠臣蔵が、彼女の遺作となってしまった。
20年ほど前に放送されたドラマ、ランチの女王のときに初めて認識した。
映画、なくもんか!の体当たり演技や、ステキな金縛りの一人二役など、本当に素敵な女優さんだった。
亡くなられたのが残念でならない。
それにしても忠臣蔵。
冒頭の文章で、"日本人なら知らないひとは居ない"と書くつもりだった。
だが、昨年末に観た情報番組でやっていたのだが、
最近の調査で、30代以下で忠臣蔵(元禄赤穂事件)を知っているひとはほとんどおらず、
小学生に至っては、兵庫県の子供をのぞき、ほぼ知らなかった。
教科書に取りあげられるような歴史事件でもなく、
自分が子どもの頃は年末恒例だった忠臣蔵のテレビ放送もなく、
なにより若者が時代劇を観なくなってしまったのも大きいようだ。
小学生の頃、水戸黄門や暴れん坊将軍、よく観てたけどなあ。
物語をよく理解できなくとも、なんとなく勧善懲悪でラストのチャンバラシーンは熱かった。
うっかり八兵衛のほおばる団子がいつも美味そうだった。
きょう12月14日は、47士が討ち入りした「忠臣蔵の日」です。
いろは歌を7文字づつに区切った最後の文字をつなげると「とが なくて しす」と読めると申します・・・❔
それにしても、浅野内匠頭はどうして上野介に斬りつけたのでしょうか❔
むかし、年の瀬になると決まって放送されていたのが、
時代劇の特番、忠臣蔵でしたね。
その風物詩も近年はめっきり失われてしまい寂しい限りです。
浅野内匠頭の動機は歴史ミステリーのひとつですね。
吉良に対して積年の恨みがあったとか、
役目の作法や料理を馬鹿にされたとか、
でもそれらものちに脚色された創作エピソードとされていますし、
元々キレやすい癇癪持ちだったとか、
乱心していたとか・・・説は様々。
実際のところは謎のままですね。
そのミステリーも含め、忠臣蔵は魅力的なのかもしれません。