秋の桜花

　　常陸に吾国山（わがくにさん）とふ名の山あり
　　その南麓に寺のありて
　　月光山無量寿院善光寺といふ
　　この寺の楼門　我が国指定の重要文化財なり

　　けふ午後　八郷町（現石岡市）を通れば
　　庵へと向かふ道すがら善光寺に至る
　　車を停めて楼門を仰げば　
　　いにしへの木の香り我が身に降り来たる

　　門脇に桜樹二本ありて白き光放ちたる
　　よく見れば　ちらほらと花の咲き初めにけり

　　これ　春秋の二度咲きたる桜哉
　　「春秋桜」なる名かとおもへど
　　きけば「四季桜」なるといふ


　　楼門の茅にかかりし枝に咲く桜ちひさき秋善光寺　丹人


　　楼門をくぐりて勾配急なる階段を上れば本堂なり
　　楼門に比し古きままの建物にて屋根の茅に草が生え柱傾きてあり
　　かつてここを訪ねしときのことをふと思ひ出したる



　　　　善光寺本堂を一人訪ねて詠める

　　立つ位置に注文多き我なれば怒る君撮ることもなつかし　丹人




　＊画像：善光寺楼門と四季桜（2006.10.25撮影）