重陰
桜葉の重なる陰の風に揺れてアスファルト道に墨散らしゆく 丹人 さくらばの かさなるかげ...
鶺鴒
梅雨明けて真白き昼を鶺鴒のひょこひょこ歩くビルの前庭 丹人 つゆあけて ましろきひるを...
睡蓮
木の間よりこぼるる光に睡蓮の黄金の蕊のそよぎゆくかも 丹人 このまより こぼるるかげに...
韓藍
わが屋戸に赤紅の韓藍の見つめ合ひつつ咲き初めにけり 丹人 わがやどに あかくれないの ...
風鈴
涼やかな音の聞こへて振り向けば光の中に擬宝珠の花 丹人 すずやかな おとのきこへて ふ...
蛇目蝶 二
蛇目蝶は紫式部の葉の上に波をしずめて翅広げゆく 丹人 じやのめてふは むらさきしきぶの...
蛇目蝶 一
わが庵のけやきの上にさざ波を立てて蛇の目の蝶きたりけり 丹人 わがいをの けやきのうへ...
黒釉彩一輪差
土に近き彩なれば一輪の花の茎より根を出だすやも 丹人 つちにちかき いろどりなれば い...
海豹
海開く浜一斉にごみ拾ふ朝にも沖に群れる海豹 丹人 うみひらく はまいっせいに ごみひろ...
七昼
ビルの間に等辺三角あらはれて雲立ちのぼる七昼の空 丹人 びるのまに とうへんさんかく ...