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報道によれば、「西村大臣は、消費喚起策の『GoToトラベル』について、政府側が、東京発着の旅行は対象外にしたうえで予定どおり今月22日から始める(中略)。そのうえで『東京が目的となっている旅行については都内の旅行も含めて対象外とすることと、東京都に居住する人も同様に事業の対象外とすることで了解をいただいた』と述べ、提案に賛同が得られたことを明らかに」したそうです。
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つまり、政府は「東京都に居住する人」を「GoToトラベル」政策から排除したわけですね。
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「GoToトラベル」とは、国土交通省観光庁のHP(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001351403.pdf)によれば、
「○国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金の1/2相当額を支援。○支援額の内、①7割は旅行代金の割引に、②3割は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与。○一人一泊あたり2万円が上限(日帰り旅行については、1万円が上限)。○連泊制限や利用回数の制限なし。」だそうです。
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「旅行が大好き」という人には有り難い政策ですが、今回の政府発表では都民はこの恩恵を得られません。~~~
「不公平だ」という声が聞こえたので改めて愚考しました。
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愚考とはいえ、難しい理屈は不要です。
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日本国憲法第14条は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定しています。
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東京都民であることはこの規定の社会的身分に当たります。
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「『社会的身分』ではないだろう。」という声が聞こえそうですが、ご承知の通り、「憲法の番人」のてっぺんである最高裁判所大法廷は、有名な尊属殺人重罰違憲判決(昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁)で、尊属殺人を死刑または無期懲役に処すると規定した刑法200条を「憲法一四条一項の意味における差別的取扱いにあたる」と判示し違憲無効といたしました。
つまり、 直系卑属(子及び義理の子)が親を殺したとき、直系卑属であるという理由だけで格段に重く罰するのは直系卑属という社会的身分による差別であると判断したのですね。
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この理屈は今回の都民排除政策にも当てはまると思います。
都民であることはその人の属性です。子であることと同じです。
したがって、都民であるということだけでそうでない人ならば当然に受けられる利益を得られないというのは「憲法一四条一項の意味における差別的取扱いにあたる」と言ってよいでしょう。
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ちなみに、現実にも不都合がありますね。
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都民は、新型コロナ感染者がたくさん報告されている地域の住民ばかりでなく、伊豆七島の一部を除く島々や小笠原、そして島しょ部ではない檜原村や奥多摩町という7月17日現在で感染者0の地域の人々も含まれます。
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こうした地域の人々が、必要があって旅行をしたときも「GoToトラベル」の利益を得られないわけですね。
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利益を追求し感染の危険を顧慮すること無く経済活動を継続しその結果、感染を拡大した人々が原因で、そうした人々とは全く無関係な人々が「割を食う」都民排除の政策は「正直者が馬鹿をみる」ことになるのでjustice(正義)に反します。
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そもそも、元来、国の政策は先ずjusticeが満たされているか否かを勘案し、然る後、その他の観点を顧慮するのが本筋なのに日本政府は「あらかじめ決めた利益」を実現するために政策を決めて行くのでjusticeが後回しになり、「正直者が馬鹿をみる」結果になるのですね。
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結局、今回の都民排除も誰かが「具体的な不利益」を主張して訴えを提起しなければ裁判所は違憲の判断ができません。
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政府はそれを良いことにやりたい放題ですね。
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日本国憲法は第98条に「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定して裁判を提起しなくても「無効なものは無効だよ」って言っているのですが。
浅学非才愚考卑見乱文長文多謝