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ロス、NY、パリ、ローマ、ヘルシンキ…..世界主要5都市の同一時刻(AM4:00~5:00)、タクシー・ドライバーとその乗客の間で交わされるたわいもない会話をオムニバス形式にまとめている。短編とはいいながらご当地色豊かなシナリオにはそれぞれ明解な落ちがあり、JJ監督作品の中にあっては最もポピュラーな1本と云えるだろう。
それぞれの短編にタイトルを付けるとしたらこんな感じになるのだろうか。
①ロス編『誘われない女』
②NY編『お金より大切なもの』
③パリ編『盲目のドライバー』
④ローマ編『カボチャと羊と司教さま』
⑤ヘルシンキ編『そして夜は明けた』
一見すると単純なコメディ短編集ではあるけれど、そこはJJけっこう深いメッセージをこっそり仕込んでいる気がする。
映画原題は『NIGHT ON EARTH』。地球の闇、言い換えるならば“人間を不幸にする目には見えない力”について言及した作品ではないだろうか。
①映画スターになれるという“甘言蜜語”
②冒頭とラストに登場する“お金”
③物事の本質を見極める“認識能力の欠如”
④宗教的な倫理・道徳観念
⑤解雇や娘の妊娠、離婚等の社会一般的な不幸
そんなこんなで無意識のうちに不幸の闇に落ちてしまった人々を描きながら、それらと対峙するキャラを登場させ、不幸の対処療法を示しているのが本作のテーマとは云えないだろうか。
①車の整備工という地道な生き方を選択する女性ドライバー。
②金勘定より人を笑わせる方が大切と語る東独出身の道化師。
③目は見えなくとも、映画や彼氏とのSEX を肌で感じることができるという盲目の乗客。
④性の衝動そのままに生きる陽気なタクシードライバー。
⑤自分の身にふりかかった不幸を語って、落ち込んでいる(爆睡中の)乗客を慰めるタクシー運転手。
インディーズ系映画監督としての自らの生き方を彼ら彼女らに投影させながら、JJは不幸にならないための生き方、ひいては、たとえ不幸に見舞われたとしてもそれをやり過ごす方法を観客に伝授してくれているのである。世界にはもっと不幸な目にあっている人々が五万といる、と。明けない夜はけっしてないのだ、と。
ナイト・オン・ザ・プラネット
監督 ジム・ジャームッシュ(1991年)
オススメ度[
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